多民族帝国の王女との対面
数日間に合いませんでした。
申し訳ありません。
異世界転生141日目の夕方前。
俺は最後の多民族帝国王都の王城、
その謁見の間にいる。
実質的に、
多民族帝国の後継になっている男に会う為だ。
まぁ、本人も他の王都の人間も知らないだろうが。
古い教会の様な地味な石造りの内装に、
一段高い場所に玉座、
権威は感じるかもしれないが、古臭い。
天井裏には兵が槍を持って警戒中だ。
長い挨拶は省くが。
要は、よく働いたなこれからも死ぬつもりで戦え、
って事だ。
ソルトさんが嫌みを散々言われているが、
実際に生き残ったのは黄組だけである以上、
今後の王都防衛の要として働けって事らしい。
人数が少な過ぎて、
これで王都を守れとか無茶ぶりにも程がある。
俺は功績者として呼ばれた訳だが、
只の冒険者には見向きもされなかった。
まぁ、苛つく事を言われないだけ、
平和だったかもしれない。
「ジン、よく我慢したの。」
謁見を終え先にソルトブート卿と、
簡素な控え室で待っていると、
ソルトさんが帰って来た。
「えぇ、自分でも驚きです。」
本当にな。
あそこで首を撥ねても何の問題もない所だったのに。
まぁ、最初は謙虚に弱腰に、
を忘れないようにしているからだろう。
その方が面白くなりそうだし。
「さて、お楽しみの王女へのご挨拶だが、
私室でとのご希望じゃ。
我らは同席出来ぬ故、失礼の無い様にな。」
「それはあまりに危険です!」
ソルトブート卿がソルトさんに食ってかかっている。
暫し、意見のすれ違いを見守っていたが、
結局は王女が俺に会いたいらしい。
「……本当にそれを許可して良いのですか?
今後の、この国の未来に関わるかもしれません。」
「ソルトブート卿、もう未来など無きに等しいのじゃよ。
我が国に残された武力は義勇軍の黄組だけ。
優秀だとしても、余りに数が少な過ぎるのじゃ。」
「しかし、まだ近衛兵と臣民が居ります!」
「止めるのじゃ、ソルトブート卿。
我は近衛隊の誇りを忘れてはいまいぞ?」
近衛隊は王族を守る物では?
いや、国によって誇りの形は違うかもしれないが。
「兎に角、私は会うつもりですので。」
「……ジンがこう言って居るのじゃ。
連れて行くぞ?」
ソルトブート卿は返事もしないから、
この親子の確執はそこそこ大きいのかもしれない。
異世界転生141日目の夕方。
俺は最後の多民族帝国王都の王城、
その私室にいる。
持ち主はこの国の王女だ。
女の子らしい細々した装飾に香り、
普段からお茶を楽しんでいる様な場所だ。
深い長椅子が向かい合って一組、
中央に有る机は低めで、
カップを取りやすい高さになっている。
燭台も宝石で飾られており、
壁の装飾が金銀である事から考えるに、
これは王女自身の趣味なのであろう。
「よくぞ参った。」
扉側の椅子に座り暫し待つと、
肩を出したドレスを纏った少女が二人、
入室して来る。
これがこの国の王女らしい。
姉は中学に入ったばかりだろうか。
少し小さい妹は小学校高学年、
いや、中学入学直前位かもしれない。
殆ど同じ顔立ちをしているが、
姉はやや緊張している様だ。
特徴的なのは二重の深さと、
零れそうな眼を支える涙袋だろうか。
丸顔が相まってより幼さを強調している。
ふわふわな長い髪は、姉が右、妹が左に結んでいる。
鳥があしらわれた髪飾りには、宝石が随所に見て取れるな。
確かに、これは自慢出来る王女だ。
ありがとうございました。




