第一王子
異世界転生19日目の昼。
俺は王都の宿屋で起きた。
起きたらすぐに、嬉しそうな顔でイリンが一つになってきた。
昨日は頑張ったもんな、可愛い奴だ。
昨日は、短絡的な行動が多かったように思う。
ちょっとばかり、浮かれてたかな?
ここは命がけの異世界だ、注意しないと。
俺が殺されるとは考えにくいが、奴隷達が標的にされることだってあるんだ。
少なくとも、変装していて良かった。
昨夜使用した変装道具と剣は、早めに処分しよう。
エスパルト王国について分かったことは、
1.国王が実子を犠牲にして若返りを画策。
2.第二王子は、第一王子を蹴落とすつもり。
うん、どう考えてもこの国が心配だ。
そもそも、第一王子は王城にいるのか?
窓がない部屋を、第一王子が選んだとか?
第一王子が軟禁されているというパターンかもしれない。
それならば、俺がちょっと調べただけで、第一王子の病が本当らしいと思わせることも出来る。
相手をするのは疲れるのだが、筆頭魔法士ネブザガルに聞いてみよう。
モシエトン氏に、魔金貨1枚払えば会わせてくれるしな。
流石に、昨日の今日でモシエトン氏も一緒に会うとは思えないし。
「ジン様。本日は、どういったご用件でしょうか?」
モシエトン氏に、ネブザガルと商売の話はしない、と約束することになったが、
無事にネブザガルと二人で会うことに成功した。
流石商人、あれだけ怖い思いをしても手数料が魅力に思えるらしい。
「実はな、風の噂で第一王子の病が深刻だと聞いたのだが。
国王もかなりの歳だ、国の未来が心配になってしまったんだよ。」
「…ジン様、私にも忠義という物がございます。この件、私は聞かなかったということにして頂けませんでしょうか?」
この件には表に出せない何らかの理由があるということか。
つまり、ネブザガルは知っているんだな。
王が秘宝を求め、若返りの為に実子を犠牲にしようとしていることを。
犠牲には、第一王子が選ばれるだろう事を。
「……最後に、第一王子は離宮にいるのか?」
「西の外れにある離宮に。」
「そうか、無理を言って悪かったな。このことは聞かなかったことにしよう。」
今夜は西の外れにある離宮に侵入するか。
異世界転生19日目の夜。
俺は西の離宮に来ていた。
まだ暗くなっただけなので、人通りは多い。
暗殺者気分は止めたので、今回は一人だ。
念のため、変装道具は新しくしておいたが。
王城とは違い、見回りの兵士も少ないし、さっさと第一王子を探そう。
「こんばんは。」
第一王子らしき人物はすぐに見つかった。
テラスで読書をしていたからな。
「こんばんは。お茶でも飲んでいくかい?」
「頂こう。」
メイドでも呼ぶかと思ったが、第一王子らしき人物が自分でやるらしい。
見た目は、第二王子と対象的な優男だ。
王により似ているのは、こちらの人物だろう。
「さて、僕にどういったご用件かな?」
「風の噂では、第一王子の病は深刻化していると聞いていたが?」
「噂は噂。事実と異なることも多々あるのさ。」
ふむ。第一王子で間違いなさそうだが。
「第二王子が王位を継ぐという噂も?」
「…そうだね。僕もケイが王位を継ぐのが妥当だと思うよ。」
確定だ。この人物が第一王子、幽閉されし第一王位継承者。
ありがとうございました。




