黄組練兵場への道中
連続更新五日目です。
異世界転生139日目の夕方過ぎ。
俺は王都義勇軍、
その黄組の練兵場に向かっている。
もちろん、リルエルは塔型迷宮に帰した。
その道半ばでポアブルさんに出会う。
まぁ、待ち伏せされていた感じだが。
「ジンさん。
奴隷は手に入りましたか?」
「いえ、奴隷はもう持っていませんでした。
ですが収穫はありましたので、
アスカルさんにはお礼を伝えたいです。」
「よく分かりませんが、
行った甲斐があって良かったです。
この後は練兵場に?」
「はい、私兵を残しておりますので、
このまま戻ろうかと思います。」
「食事でもどうですか?
ピネーに郷土料理を作らせるそうですが、
この辺りの摘まみも美味しいですから、
飲みにでも行きませんか?」
「……この状況でですか?」
真面な食糧がない状況でお摘まみ?
無理があるだろう。
土着の料理なら自分が食べる為に、
残している者もいるとは思うが。
「……やっぱり、
私には荷が重かったようですね。
端的に言うならば、練兵場に戻るのは、
もう少し待って下さい。」
「私は私の財産を守るだけです。」
「お見通しですか。困りましたね。
アスカルから、
死んでも来させるなと言われまして。」
苦労人だな。
真剣に全身鎧、練習試合とは異なり、
本気のようだ。
だが、まぁ、剣を向けたからと、
殺す事もないだろう。
「意識をもぎ取りますが、いいですか?」
俺が支配した後は、
貴重な戦力になるだろうしな。
「……行きますっ!」
雷魔法を用いて、
ポアブルさんの肺から酸素を無くす。
試合とは随分速度が違うがこちらに届く前に、
氷魔法を用いて血液中から酸素を取り除く。
卒倒するポアブルさんを、
石魔法を用いて適度な粘性を持つ土で受け止める。
氷魔法を用いて血液中に酸素を戻し、
雷魔法を用いて心筋を再起動する。
うん、生きているな。
意識も戻りそうだがその前に練兵場に向かう。
異世界転生139日目の夕方過ぎ。
俺は王都義勇軍、
その黄組の練兵場の近くに居る。
アスカルさんと言い争う複数人の声が聞こえる。
入口の側にはピネーちゃんが待っている。
まぁ、俯いているから、
こちらには気付いていないが。
「ピネーちゃん、どうかした?」
「あ、ジンさん。
……ポアブルさんは時間を稼げたんでしょうか?」
「いや全く。
分かっているだろ?」
「はぁ、なんでそんなに強くなったんですか?
尋常じゃないっていうか、アスカルさんより、
剣が強い魔法使いって、
何か壊れている気がします。」
「よく分かったな。
壊れているんだよ、俺は。」
ネプに依代の役目を負担して貰わなければ、
精神を保てない不完全な神だ。
「やっぱり、私なんかじゃ、
相手に相応しくないですか?
ジンさんを思う気持ちは、
処女じゃなくても変わりませんよ?
ただ、抱き締めてくれるだけでいいんです。
膝枕だってします。
腕枕だって、辛いけど朝まで出来ます。
いえ、触れなくてもいいんです。
ジンさんの愚痴を延々聞けます。
料理だって出来ますし、服を洗う事も出来ます。
ジンさんの側に、居る事が出来ます!
な、な、なな、
なんで通り過ぎようとするんですか!?」
数人は同時に通れる練兵場の入口を跨ぐと、
ピネーちゃんが通せんぼをして来た。
「だって、時間稼ぎでしょ?」
「そ、そ、そそ、そんな事無いですよ?
本当にジンさんの事が心配になっていますよ?」
まぁ、心配してくれたのは本当だろうが。
これだけ言い争う声が五月蠅いとな。
「時と場合を考えた方が良い。
そこの女を渡せと、
俺の奴隷に言われている状況だよ?」
アスカルさんと揉めている内容を推測すると、
俺の私兵を誰かが欲しているらしい。
しかも罰を与えるとか、
腕を切り落とすとかなんとか。
「だって、だってジンさんが入ったら、
悪い結果にしかなりません。
アスカルさんが頑張っていますから、
待って貰えませんか?」
「……練兵場、見える場所ある?」
「っはい!あります!!
あっちの家の三階の、
えっと、その、寝室から見えます?」
「期待するなよ。
怖がっていたんじゃないのか?」
「あんな綺麗で可愛い奴隷を見せられたら、
どんな女だってジンさんに興味持ちますよ?」
あれか。
彼女が出来ると途端にモテるというアレか。
都市伝説か。
「その奴隷と比べてピネーちゃんはどうなんだよ?」
「ジンさんは口が悪い所、
直した方がいいと思います。」
そんな彼女に連れられて、
練兵場を見渡せる場所に向かっている。
ありがとうございました。
今回の連続更新はこれで終わりです。
夏休みだからか中高生のカップルが多いですね。
シネば……いえ、お裾分けして下さい。女の子を。




