第二王子
俺は今、悩んでいた。
騎士が守る扉を、どのように突破するのか。
もし、扉が開いていたなら素通りすればいい。
しかし、閉じた扉を開けて、騎士に気付かれずに通るなんて器用なこと、
俺にはまだできない。
扉を壊してしまい、騎士に気付かれるだけだ。
問題は、扉が閉じていることなんだ。
開いていたらいくつもの方法があるのに。
うん、廊下からのこれ以上の侵入は諦めよう。
心躍る展開だからと、贅沢しすぎた気がする。
暗殺者気分は止めよう、俺は俺だ。
窓のある通路まで戻り、俺は外壁を登ることにした。
この窓の戸締まり、忘れないようにしないとな。
「た、高い…」
そう、俺は高いところがやや苦手だ。
下腹部がキュンキュンしてしまう。
城壁から王城までの氷の通路は、上下左右全てを氷で囲った。
だから、怖くはなかったんだが…ここでも、氷の通路を作成することにしよう。
うん、凄く簡単に王様を見つけることが出来た。
今は職務中だけどな、子作りという。
…お相手は幼女なんだけど、子供出来るのか?
さて、第一王子、もしくは継承権を持ってる王族は誰だろうか。
ここまで来て、俺は王族の区別がつかないことに気付いた。
もっと考えろ俺!!
あ、そうか。部屋から考えればいいんだな。
最も立派な部屋に王がいるならば、この次に立派な部屋にいるはず。
「動くな。」
俺は第一王子らしき偉丈夫の首に、剣をそっと当てている。
とても病気とは思えないが。
「だ、誰だ?」
「第一王子か?」
「エルフか…もう国は滅んだのだ。今更我を殺しても何も帰ってはこない!」
「アムステグルの秘宝を買い取ってくれるというのは本当か?」
「なっ。だ、誰がそんな事を言っている!?」
「国王だよ。」
「あのクソじじいぃ!!」
あまりの怒りのためか、王子はベットから起き上がった。
いやいや、俺が剣を引かなきゃ首なくなってたよ?
その時、終始無言で状況を見つめていた王子のお相手が、短剣で斬りかかってくる。
それに合わせるように、隣室にいたであろうメイド達も水差しや椅子を投げてくる。
教育が行き届いていることで。
「貴様、何者だ?それほどの腕、王国に幾人もいまい。」
俺は再び、王子の首に剣をそっと当てている。
王子以外を一瞬で切り伏せて、王子が手にした立派な剣を叩き折ってな。
侵入した痕跡が残ってしまうが、王の真意を確かめたい。
「それで、アムステグルの秘宝とはなんだ?」
「実子の命を代償にした、若返りの秘宝、だそうだ。」
「ほう。お前の命も危ないというわけか?」
「当然だ。我はエスパルト王国第二王子ケイ・エスパルトだ。」
……外れだった。第一王子、どこにいるんだ。
まぁ、この際どうでもいいんだが。
「いくら払える?」
「…秘宝をおやじが使用する前に、我に届けたならばいくらでも払おう。」
うまい手だな。
金額を確定させず、俺に約束が違うと言わせないつもりだ。
「領地がほしい。」
「欲深いやつだ。我が王になった暁には、貴様に領地をくれてやる。」
欲深いのはどっちだよ。
「それでいいだろう。また来る。」
「待て、明日この時間にもう一度来い。詳細な資料が必要だろう?」
俺は返事をせず、部屋を後にした。
ありがとうございました。




