黄組練兵場
連続更新一日目。
二話目です。
異世界転生138日目の朝。
俺は義勇軍募集所の裏手で起きた。
ソルトさんから許可は貰っている。
もっと大きな鞄を持ってくれば良かったんだが、
邪魔になるからな。
小さな体積に、
入っていそうな厚みの毛布を敷いて寝ていた。
俺は王都義勇軍、その黄組の練兵場に来ている。
土むき出しのだだっ広い広場だ。
腕に黄色い紐を付けている奴らが、
黄組の連中だろう。青組と同じだな。
取り敢えず、
「おはようございます。
新人さんですか?歓迎します!
アスカルさーん!お願いしまーす!!」
入っても誰にも何も言われないと思っていたが、
今回はちゃんとお手伝いらしき少女に尋ねられた。
「すいません。
すぐに来ると思うので待ってて貰えますか?」
「はい、ありがとうございます。」
少女は給仕に戻ってしまった。
義勇軍以外の配給の手伝いもしているのだろう。
「ジンさんかな?」
「そうですが、何処かでお目にかかりましたか?」
「初対面ですよ。私は黄組組長のアスカルです。
昨日は大変な事があったようで。」
革鎧の軽装、大柄な体。
獲物は剣の二刀流か。
体が大きいので短剣にしか見えないが、
それぞれ一般的な長さの剣だな。
開店休業中の東ルーメンの冒険者ギルト所属の、
マリンと同じ熊獣人だ。
最近、マリンと遊んでないな。
ネプ達の所に戻る前に寄れると良いんだが。
「あぁ、それでご存じだったのですか。
別に敬語を使って頂かなくても構いませんよ?」
「ん、では普通に。
ここで問題を起こすと街に居られなくなるから、
気をつけて欲しい。
隊長殺害なんて以ての外だ。
……嘘だよ!嘘!ちゃんと話は聞いたさ。
冒険者なんて血気盛んなもんだろ?
バカだよなー高ランク冒険者に喧嘩売るなんて。
ジンさんもそう思うだろ?」
アスカルさんは率直な人らしい。
最初から組長が対応するっていうのも好感が持てる。
どんな人間か分からなければ、
作戦行動なんて出来ないからな。
「そう思います。
ソルトさんは見た目でも、
私の強さが分かるような事を言っていましたが、
アスカルさんも分かるのでしょうか?」
「ん?全然分からないが、
青組の○○○はかなりの剣士だったからな。
ソルトさんは例外だよ。」
「……ソルトさんって何者なんですか?」
老兵って事は分かるが今でも強そうだし、
ギフト:誤認をかけているのに、
強く見えるだろうか?
「知らないのも無理はないが、近衛隊の前隊長さ。
最強の騎士だった、いや今もそうかもしれない。
今の隊長は王子の推薦って話だからな。」
「そんな方が義勇軍にいるんですか?」
騎士だったのなら、
普通は騎士団の手伝いをするんじゃないだろうか?
騎士団ではなくても正規軍の仕事とか。
「あーほら、それは政治の話だな。
噂話しか知らないが王子に疎まれているらしい。
王が不在の今は他に行く所がないんじゃないか?」
王が不在なのは国が滅ぶまでずっとだと思うが。
国王は多民族帝国の帝都で皇帝と一緒に居るからな。
こっちに戻って来る事は出来ないだろう。
「最後まで生き残る為ですか?」
戦争に敗れれば騎士団や正規軍は、
真っ先に制裁対象になるからな。
義勇軍ならば統治の関係で見逃されるかも知れない。
「そんな事はないと思うぞ?
素性が素性だからな。
俺達の為に義勇軍を纏めてくれている。
俺はそう信じている!
さて、まずは○○○を破った腕を見せて貰おう。
相手は黄組二番隊隊長のポアブルだ。」
「青組に対する当てつけですか?」
奴も二番隊隊長だったし。
ポアブルさんは剣と盾を使うらしいが。
「まぁそう言うな。
ここだけの話、
青組からジンさんの事で色々ちょっかいがな。」
「ご迷惑お掛けして申し訳ありません。」
彼奴らソルトさんの裁定が気に入らないらしい。
「おいおい!気にするなって。
元々あんま仲良くねーしな。
衛兵に一番捕まっているのは青組の連中だから、
ほら、察しろよ?」
余所者なのに混じるつもりがない奴が多いって事か?
それとも、犯罪に手を染める奴が多いって事か?
まぁ、どっちにしても。
「義勇軍に泥を塗ってませんか?
束ねるなら他の名目でも良いような。」
「高ランク冒険者って割には頭良いよな、
ジンさんは。
他の奴は魔獣退治にしか、
興味なさそうな奴が多かったが。」
露骨に話を逸らされたが。
捨て石要員なんだろうか?
まぁ、野放しにするより纏めておいた方が、
色々と対処はし易いだろうが。
「他にも高ランク冒険者を知っているんですか?」
「ここは王都だからな。
色んな奴が訪れていたんだよ。
どう見ても他国の貴族とかな。
お忍びならもっとちゃんと隠して欲しいぜ。」
貴族だと身の回りの水準を落とせないだろうな。
俺だって着心地の悪い服なんて着たくないし。
ありがとうございました。
所属していた研究室の論文に、私が書いた奴が頻繁に引用されています。
嬉しいような恥ずかしいような、微妙な気分です。
研究が引き継がれている事は嬉しいんですがね。




