義勇軍募集所(二回目)
連続更新一日目。
一話目です。
異世界転生137日目の夜。
俺は王都義勇軍、その募集所に戻って来ている。
青組の連中に囲まれながらな。
日も落ちて薄暗いが、中の松明に火が付いている。
ソルトさん以外の老兵はいないようだ。
「遅くに失礼します。
ソルトさん、お時間よろしいでしょうか?」
青組組長が浅い睡眠に入っていた、
ソルトさんに声を掛けるが、
組長もソルトさんには敬語で話すんだな。
「……なんじゃ組長、お主が来るとは問題かの?」
さて、ソルトさんはいつも遅くまで残っているのか、
こうなる事を予見して残っていたのか、
どっちだろうな。
「ソルトさん!ジンの事です。
二番隊隊長○○○が殺られました。
なぜ青組に入れたんですか!?」
割と落ち着いた人間だと思っていたが、
周りの目を気にしていただけらしい。
というか、まだ組員の証らしい紐貰ってないぞ?
「……ジン、説明して貰って良いかの?」
相変わらずソルトさんは夢現に見えるが、
先程と同じ説明で良いだろう。
「二番隊隊長に体力がないと決めつけられて、
そこに反論したら殺ってみろと言われて剣を抜かれました。」
「○○○はジンの前職が何だったのか、
聞かなかったのかの?」
「見た目で判断されたんだと思います。」
「自覚があるのなら言ってやれば良かっただろう?
Aランクの力があれば、
無傷で済ますことも出来るじゃろうて?」
「嘘だろ、こんなのが。」
こんなのって言ったのはお前か。
今はそっとしておいてやるが、
侵攻軍の攻撃から守ってやらないぞ。
「殺意を向けられれば遠慮はしません。
暗殺は防げませんからね。」
あくまで一般論としてだが。
毒ならアインが即座に無効化するだろう。
あ、スキルによる暗殺は対応が面倒そうだ。
「……高ランク冒険者らしい答えじゃの。
暗殺と来たか。経験があるのかの?」
「答えられません。」
アヤさんと出会った件とか、
冒険者ギルドから狙われたしな。
「すまんね。
さて、青組組長の意見を聞こうかの。」
「○○○にも落ち度はあるでしょうが、
殺しを野放しに出来ません。
罰を与えるべきです。」
「儂らに与えられる罰があるかの?
ジンが本気になれば、
誰も止められないと思うがの。」
「……ソルトさんは手伝ってくれないと?
先程からジンを庇っているように思えます。」
「庇っているのじゃよ。
Aランク?そんな事は聞かずとも分かるの。
儂から言わせればSランクが束にならねば、
留めおくことも出来まい。」
「そこまで強いとは思えません!
○○○を奪った代償を払わせるべきです!!」
「困ったの。青組組長としては、
処分がなければ納得する気はないんじゃな?」
「……そうです。」
いやいや、そんな事言われても困る。
しかも罰の内容はソルトさんに投げているし。
「ジンには食事を提供しないというのはどうじゃ?」
義勇軍は食事が出てくるのか?
配給もあるから二食食べられるという事か。
夕食目当てで入って来る若者もいるんだろうな。
「そ、そんな事の何が罰ですか!?
鞭打ちはしないんですか!!」
「……不満なら自分達でやってみるのはどうじゃ?
ジンがやらせてくれるとは思えんぞ?
儂はやりたくない。」
「分かりました!
ジン!裏にいくぞ!!」
何こいつ。
付いてきて当然だと思っているのか?
行ったら鞭打ちされると分かっていて、
行く奴はいないだろう。
「お断りします。」
「義勇軍にいられなくしてやるぞ!!」
「……貴方が義勇軍からいなくなればいいのでは?」
お、剣に手が乗ったな。
今は扉の周りにいる、
俺を囲んでいた連中も殺気立っている。
「そういう事は裏でやって貰って良いかの?」
「抜かないんですか?
貴方では殺されるのが落ちでしょうが。」
さあさあ、今すぐ抜け。
殺気を向けてこい。
「青組組長、その辺りで止めておくのじゃ。
ジンも楽しんでおるのかの?悪趣味じゃぞ。」
先程までの好々爺という雰囲気ではなくなっている。
歴戦の老兵だな。
組長さんは悔しがっているらしい。
「ジンは他の組みに移す。それ以上は無理じゃ。
もうじき王都は戦場になるからの。
貴重な戦力を失うわけにはいかぬ。
それ位分かるじゃろう?
これが儂の決定じゃ。
双方良いな?」
組長は何も答えず出て行ってしまった。
もちろん、青組の連中も一緒にだが。
「お手を煩わせて申し訳ありません。」
「いいんじゃよ。
こうなるような気がしておったしの。
何処でも食べていけるのに、
態々こんな所に来る冒険者は、
死に場所を求めているような者位じゃからの。
別にジンがそうとは限らんが。」
「ところで、その話し方は方言ですか?」
「混戦になっても誰の指示か分かるように、
特徴を付けて話すことは多いんじゃよ?」
そうなのか?初めて聞く話だ。
声で分かりそうな物だが……喉が潰れるのか。
「明日からは黄組に行けばいいんでしょか?」
「今度は上手くやって欲しいものじゃ。」
「それでは黄組の場所を教えて貰えますか?」
最初は謙虚に弱腰に、忘れないようにしよう。
ありがとうございました。
グリザイアの楽園のBOXが出ますね。




