多民族帝国のさる王都
異世界転生137日目の朝。
俺たちは塔型迷宮87階層で起きた。
イリンやリルエルに説得されて、
多民族帝国に行く予定にはしている。
だがその前にギフト:誤認の効果を確認している。
隷属魔法、所謂闇魔法を、
何処まで欺けるのかが知りたいからな。
ララにだけ誤認をかけ、別人と思い込んでいる俺に、
イリンが袈裟切りを命じる。
……出来たな。
次にフーリゲのメイドに指示書を作らせ、転移魔法で取り寄せる。
内容は袈裟切りをしろって事だが。
……これは出来ない。
俺がイリンに命じた事で、その命を受けたララも、
俺自身の許可の元、斬りかかったと見なされたのだろう。
つまり、多民族帝国に展開中の奴隷兵達は、
俺を攻撃できないと言うことだ。
もっと強力に誤認させたいんだが。
具体的には誤認中は俺の奴隷でも俺を攻撃できるようにな。
「アヤさん、ギフトを強化する事って出来ますか?」
アインに聞いたりはしない。
眷属は優秀だからな。
「効果を上げるって事?」
「そうです。
効果時間が延びたり、範囲が広くなったりとか。」
「あーそういう事ね。使いこなす以上のことは、
専用のスキルを持たないと出来ないわよ。」
「ギフトは無理そうですか?」
「少なくとも聞いたことはないわ。
そもそもギフトは強力だから、
強化しようなんて思わないんじゃないかしら?」
イリンやリルエルを見ても、
答えは持ち合わせていないようだ。
スキルやギフトでダメなら次は万能の力、
神力を試してみる。
えーと、どうやってギフトを指定すれば良いんだ。
あぁ、そうか。
本来はなくなってしまったステータスを表示する時と同じく、
コマンドを実行する感じでやればいいらしい。
神力を注ぎながら、効果を具体的に想像する。
フーリゲのメイドに指示書を作らせ、転移魔法で取り寄せる。
ララにだけ誤認をかけ、別人と思い込んでいる俺を、
袈裟切りにしろって指示だ。
……出来たな。
神って奴は凄い。
異世界転生137日目の昼。
俺は多民族帝国に来ている。
ネプ達は塔型迷宮の再攻略に励むらしい。
剣以外は下級貴族が身に着ける程度の服装だ。
もちろん、見た目だけだが。
現在多民族帝国が治めているのは、
帝都と皇帝を輩出した王家の王都、
あとはそれらの周辺だけだ。
その他の貴族は寝返って来たり、屈服させたりして、
公国の支配下にある。
俺は包囲網を敷いている王都へ向かう街道にいる。
何処にだって、抜け穴はあるものだからな。
王都周辺は、王都に向かう街道が三方に有り、
それぞれの街道に要塞を中心とした城塞都市がある。
要は王都を守る都市が三つ、三方にあるという事だ。
今はまだ降伏勧告をしている段階らしい。
侵攻軍は前から城塞都市が見える場所にいるらしいが、
事務作業が滞っており攻撃には移れていないようだ。
俺は王都外壁の外に出来ている街に入る。
まぁ、入ると言っても明確な壁がある訳ではないが。
壁の中には入りきらなかった王都の一部とも言える。
今は他の街から逃げてきた避難民も多いらしい。
一日一食程度の配給があるらしく、
経済が崩壊しかかっている多民族帝国では、
稀な政策だと思う。
木や布で簡単に作られた家が多く、
元々あった家の部材をバラして、
数を揃えたらしい。
もちろん、元から住んでいたであろう、
住民の家は立派に見えるが。
探していたのはここだ。
義勇軍募集中と看板が立っている。
さてと、我が侵攻軍のお手並み拝見と洒落込もう。
ありがとうございました。




