多民族王国の選択
二話目です。
異世界転生134日目の昼過ぎ。
俺は塔型迷宮85階層にいる。
イリン達が再攻略をしているからだ。
俺はアインが操るベットの上で書類仕事をしている。
多民族王国が勇者を収監したというのは、
簒奪を狙う反勇者派への牽制だろうが、
収監とは名ばかりの謹慎状態だろう。
本当に収監してしまえば、
勇者側の反発は避けられない。
かといって勢いづいている簒奪者を、
放置する事も出来なかったのだろう。
遂に兵を挙げるとの情報もあり、
多民族王国の内戦も、
本格的な武力衝突に発展するようだ。
だが、勇者一行が北方連合へ向かう時期は、
確実に遅れるはずだ。
今日明日にでも向かうと思っていたんだがな。
戦費の貸付で、
エスパルト王国に借りを作るのはいいんだが、
このままだとフーリゲの代で払い終わりそうに無い。
塔型迷宮に都市を造っていた連中の技術だが、
一番の発見は魔法を保持する、
所謂、魔法石、魔導石、魔石、
と呼称される物体の生成方法だろう。
魔道具の原料になる石として、
小説などに登場する事が多いだろうか。
謎の白い金属、耐熱温度が固体の限界を、
越えているように感じていたが、
魔法が常に発動していたようだ。
浮いた車の原理も、迷宮の浸食を防いでいたのも、
常に魔法を発動していたかららしい。
魔法自体を消したり、魔力の効力を失わせるには、
神力による干渉が必要だから、
気付かなかったのも仕方ないのかもしれないが、
今後は神力の練習も、
怠らないようにすべきかもしれない。
あの事件、ネプを消し去ってしまった、
忌まわしき記憶があるから、
そこまで積極的になれないんだよな。
兎も角、魔道具の開発が出来るようになった事は、
喜ばしい事だ。
まぁ、既に電気によって、
現代の水準近くまで発展しているんだけどな。
ここにどのように魔道具を当てはめるかを考えないと。
候補は時間や場所を取る場所だろうな。
浄水処理、汚水処理、発電所、
考え出すと色々と使い道があるかもしれない。
異世界転生134日目の夜。
俺は塔型迷宮86階層にいる。
夕食のピザを食べているところだ。
マイが生地を造り、皆が具を並べていた。
大量のチーズをこれでもかと乗せているのは、
俺の好みを知っているからだろうか。
迷宮の攻略速度が落ちているのは、
ララが前線から少し引いたからだろう。
幾らドライが補助していると言っても、
それを頼りに無茶をする事を、
イリンが許さなかったからな。
体調が万全では無い時の戦い方も、
身に着ける必要があるとか。
まぁ、本人も詭弁を言っている自覚はあるのだろう。
アヤさんのように、そんな事俺が許さないからな。
「我が神よ。
これの一読をお願い致します。」
アインからメモを受け取った。
今し方、本国から受信した情報だろう。
そこには、
勇者が北方連合に現れたと記載されている。
うん、書類仕事の続きかな?
勇者一行が収監されたとの報告を受けていたが、
実際は北方連合へ向かっていたらしい。
まぁ、衛星映像からな。
帰還式典を派手にやっているらしい。
何処も知らない情報だ。
多民族王国は収監と広報して、
実際は北方連合に向かわせる。
意図が分からないな。
多民族王国の国王にとって、
勇者は簒奪者への有効な手札だったはずだ。
それを失えば、王位が脅かされる事は明白だろう。
つまり、簒奪者への対抗手段を得たという事か。
或いはフーリゲか。
そういえば、先日急かすような手紙を送ったような。
兎も角、勇者が離れたのなら、
確認の為に帝都に行くべきだろう。
ありがとうございました。
夜に更新するかもしれませんが、それまで更新はありません。
あまねぇにご飯を作って欲しいです。




