塔型迷宮の復旧
連続更新一日目。
二話目です。
異世界転生130日目の昼。
俺は塔型迷宮90階層で書類仕事をしている。
寝たばかりのイリンだけは起きてきて、
向かい合う形で奉仕してくれた後、
皆の昼食にラーメンを作っている。
もちろん、アヤさんには違う物を用意する。
最近、つわりがぶり返しているらしい。
細身なアヤさんは、
余計に消化器官を圧迫されているのかもしれない。
多民族王国が抱える問題は経済問題、
外交問題だけではない。
更に、政治問題が勇者御一行の立場を悪くしている。
多民族王国では最近の危機に際して、
王位の簒奪を狙う内戦が勃発している。
形勢は不利だったが、そこは科学技術省の不手際、
要は良質な武具の横流しという援助が功を奏している。
剣の素材を手に入れる事すら難しい、
多民族王国側に取っては相当堪えているようだ。
勇者御一行も鎮圧に手を貸しているようだが、
多数決を重視する勇者に、
多民族王国国王は不満を抱いているようだ。
現状を打破できない国王に対する評価は、
簡単に想像出来るからな。
しかも、簒奪者は反勇者派だ。
総ての原因は勇者に有り!と、
声高に宣伝してくれているらしい。
好都合過ぎて笑えてくるな。
まぁ、魔人を人間として扱うよう求める勇者は、
簡単には認められないだろう。
特に魔人と関わる事が少なかった、
多民族王国の連中にはな。
エスパルト王国とルーメン公国だって、
眷属による根回しと貴族の意思表示がなかったら、
反感が大きくなっていた事だろう。
兎も角、数日中に勇者御一行の立場は、
決定付けられるだろう。
多民族帝国の衰退に合わせて、
フーリゲの役割が重要になっている。
公国は勇者と直接やり合うつもりはないから、
多民族王国の国境はフーリゲに担当して貰っている。
まぁ、なぜか既に一割程侵攻しているようだが。
引くに引けない戦闘があったと思っておこう。
多民族帝国の領地がほぼ公国の物となった以上、
フーリゲの戦線は伸びきっている。
大陸北部に東西方向の線が引いてあるような状態だ。
頻繁に戦費の貸付を依頼してくるから、
財政面での負担も凄い事になっているはずだ。
フーリゲが職務に一層励めるように、
叱咤激励の手紙を送ってやろう。
どのように受け取るかはフーリゲ次第だが。
異世界転生130日目の昼過ぎ。
俺たちは塔型迷宮77階層にいる。
無くなっていた78階層から、
90階層までの塔型迷宮を再生する為にな。
塔型迷宮77階層の外周を複製して、
継ぎ手の要領で組み上げていく。
一層高さ100メートル分の外周の重量によって、
90階層まで積み上げても安定している。
次に、塔型迷宮77階層の地面を複製して、
各階層の天井として填め込んでいく。
無理矢理なので、
所々ひび割れているが問題ないだろう。
迷宮とは不思議な物で、
こんないい加減な建築方法でも、
再生が始まっていく。
複製物同士の違いが分からなくなり、
更に階層ごとの特徴が出現していく。
まぁ、その修正速度はゆっくりだがな。
ありがとうございました。




