多民族王国の変化
連続更新一日目。
一話目です。
異世界転生130日目の朝。
俺たちは塔型迷宮90階層にいる。
天井に吊り下げた小屋の中にな。
リルエル達は寝ている。
塔型迷宮は78階層から90階層まで、
破壊してしまったので只の空中が広がっている。
今は90階層より上を、アイン達が支えている。
一昼夜、必死に索敵したが奴らの痕跡は無かった。
奴らに無限の時間を体験させられた理由は、
奴らの時間停止スキルの効果より、
俺の時間加速の方が強力だったという事だろう。
また、果てしなく延びた時間の中で、
発動済の大抵のスキル効果は切れていたはずだ。
まぁ、時空ごと壊したのであまり関係ないんだけど。
唯一、神の御業と言える復活のスキルだけ、
時空が消えても有効だったと考える事にする。
少なくとも、他に作動したスキルはなかったからな。
それでも例外があるかもしれないと考え、
アイン達と探してみたが反応無し。
うん、俺はチート達の倒し方を習得したっ!
「ご主人様、そろそろいいですか?」
考え事をしている間、
口で奉仕をしてくれていたイリンと、
共に高みへ登っていく。
異世界転生130日目の昼前。
俺は塔型迷宮90階層の小屋で書類仕事をしている。
徹夜だったから、リルエル達はまだ起きないだろう。
イリンには一通り楽しんだ後、
少し寝るように伝えてある。
最も重要な情報は多民族王国内での、
勇者御一行の立場が危うくなっているという物だ。
まず、経済問題だ。
多民族王国の主導により、
新冒険者ギルドは設立された。
参戦を強要されたくない冒険者は移っていく事だろう。
しかし、通貨量の制御という、
もう一つの目的は阻む事が出来た。
硬貨の製造権を握る主要ギルドの一つ、
商業ギルドに反対されているからだ。
巫女天狗を引き上げさせて以降、
公国は深刻な人手不足に陥っている。
それを補う為に、科学技術省と農林水産省から、
商業ギルドに過大な手数料を支払っている。
商業ギルドのトップ、エグゼクティブマスターは、
こちらが意図を伝えなくても、正確に動いてくれた。
まぁ、時期の一致は偶然なんだけどな。
これにより、多民族王国の貨幣経済は崩壊した。
物々交換は行われているようだが、
物価上昇率に敵う訳も無く、
早々に経済活動自体が停止するだろう。
次に、外交問題だ。
勇者同盟と歩調を揃えていた多民族帝国は、
残りが帝都周辺と、
現皇帝を輩出した王国のみとなった。
一度起きた貴族の鞍替えは際限なく広がり、
その他の領主は総て鞍替え済だ。
侵攻軍の進軍速度に匹敵した速さで広がったから、
彼ら貴族の本気度が伺える。
これにより、人類が治める大陸の8割が、
勇者同盟の敵になり、
大陸南部を支配する魔人国も加えれば、
大陸の9割が北方連合と多民族王国の敵になる。
まぁ、魔領域や蛮族の治める土地もあるので、
実際の割合はやや低下するがな。
それでも、チートスキルを駆使しなければ、
武力によって訴えなければ、絶望的な数字だろう。
ありがとうございました。




