新たな支配地
連続更新二日目です。
2016/07/28 言い回し等を修正しました。
異世界転生128日目の夜。
俺たちは塔型迷宮90階層にいる。
階層全体が宮殿と言える雰囲気だ。
床、天井だけではなく、
迷宮の壁までも白い金属に覆われている。
中央には白亜の城、周囲には森が広がり、
その外周を石造りの塔が囲んでいる。
森というか、庭なのかもしれないが。
更に外側には草原が広がり、農作地が広がっているが、
収穫を目的とした設備ではないようだ。
視界を確保する為、
雷魔法を用いて浮いて進んでいると、
左腕に違和感を感じる。
見た目がやや、膨張している気がする。
<我が神よ。敵の位置が特定出来ません。>
スキルを発動している者が、
量子魔法を用いても探せないようだ。
俺の腕に効果を発揮しているスキルとは別に、
阻害もしくは妨害系のスキルが使われている。
魔法を用いて高温プラズマを作り出す。
地面と挟み込むわけではないので、
ペッタンではない。
<補助が上手くいきません。>
アインによる微細な制御が出来ず、
プラズマが揺らいでいる。
それでも生成を続けて、塔に向けて無差別に放つ。
頂上から脱出する人影が見える。女だ。
量子魔法を用いて足元を固め、
それを蹴る事で急行する。
接近に気付かれるが、右腕に違和感を感じるだけだ。
勢いを殺さず頭部を蹴る。
堅いっ!これもスキルか。
しかし、意識は失ったようで落下していく。
頭部が下になるので、赤い下着が見える。
女が地面と到達する前に、
空間から滲み出るように、新たな魔人が現れる。
この瞬間まで気配を感じなかったので、
隠蔽系のスキルの影響下にあるはずだ。
だが、こんな近距離に現れるとは。
必死に名前を叫んでいるので、
この魔人の知り合いだろう。
「戻るんだ!」
次に染み出てきたのは魔人ではなく人類だ。
<アイン、奴隷にしろ。>
<仰せのままに。>
魔力から属性を感付かれたようで、
かの人類が自身の頭部に刃を突き立てる。
その位ならアインが治せると思ったが、
短剣ごと脳が爆散した。
量子魔法に制限が掛かっており、
時空を正確に認識できていないので、
破壊されてしまえば元通りに再生できない。
特に、繊細な物程な。
魔人が気を失っている女を連れて逃げようとするが、
空間に溶け込むような事はなかった。
隠蔽系スキルの保有者は、
先程の人類だったのかもしれない。
二人を呆気なく、奴隷化する。
隠蔽系スキルの効果はまだ続いている。
いや、新たに隠れる事は出来ないようだが。
しかし、何度も出現する瞬間を捕らえており、
アインによって解析する事が出来た。
アインが城の右側の尖塔に、
スキルによって隠れている者を感知する。
その窓に向かって、雷魔法を用いて真空を作り出し、
石魔法を用いて反物質を生成して放つ。
到達する前に、
城の左側から放たれたスキルによって消失させられる。
まぁ、左側からかき消えていっただけだが。
反物質の量を多くして、再度放つ。
なんらかのスキルによって無効化されているが、
これだけ連打すれば放っている人間の場所も分かる。
そこへ雷魔法を用いて真空を作り出すが、
探知した事を気付かれたらしい。
俺たちの周囲に反物質が生成され、
対消滅を起こしていく。
量子魔法によって防いでいるが、
魔法の効果が弱まっていく。
量子魔法の影響下においても、直ぐに奪われる。
量子への優先権を持たれているようだ。
反物質の打ち消し合いが続く。
魔力などのステータスによるごり押し状態だが、
間もなく量子魔法が無効化される。
<アイン、奴隷に出来るか?>
<……無効化されました。>
アインより、
魔法を無効化した魔人の位置が伝わってくる。
最初に見つけた、右側の塔にいる奴だ。
先程奴隷化した爆裂スキルを持つ魔人に、
塔を攻撃させる。
別の魔人に防がれたが、予想外の攻撃だったらしい。
混乱により、量子への影響力が低下した。
量子系スキルを持つ魔人、精神系スキルを持つ魔人、
二人の居場所へ高温プラズマを送りつける。
反物質を無効化されているので、最初から大量にだ。
周囲の反物質の生成速度が更に落ちた。
量子魔法の効果を失う前に、
精神系スキルを持つ魔人には反物質を放つ。
総ての反物質を消滅させられる事無く、塔に到達する。
質量エネルギーが解き放たれ、尖塔が消滅する。
もう一人の魔人は、
発生したエネルギーを無効化して、
周囲への被害を抑えているようだ。
愚策だな。
<アイン!>
<奴隷にできました。>
量子系スキル保有者は魔人ではなく人類だった。
量子魔法への制限がなくなった事で、
この階層にいる総ての魔人を奴隷化する。
隠蔽系スキルによって隠れていた物も、余す事無くな。
ありがとうございました。
本日はこの一話で更新は終わりです。




