多民族帝国の分裂
先々日から更新させて頂きました。
三話目です。
異世界転生125日目の夕方。
俺たちは塔型迷宮72階層にいる。
妖精という名を持つ、魔獣と対峙している。
まぁ、妖精が魔獣に分類されるのもどうかと思うが。
怒り狂った妖精が、
人類を抹殺しているようにしか見えないから、
仕方の無い事かもしれない。
「なぁ、リルエル。
あれがこの階層の主でいいんだよな?
妖精って魔獣なのか?」
「魔獣の一種ではありますが、
あれほど凶暴そうな者は初めて見ます。
普段は魔獣とは、区別されますから。」
やっぱりこいつは、
迷宮の妖精だって事なんだろう。
ある程度の知能があるのか、
こっちを威嚇こそするが攻撃はしてこない。
……いや、手勢を待っていたようだ。
周囲から氷型の魔獣が現れる。
氷柱のように尖っていたり、結晶を模していたり、
様々な形態を取っているが、鋭さは伝わってくる。
何か合図があった訳ではないが、
リルエル達は乱れずに戦闘に突入する。
ヨエルが妖精を抑え込んで、
マイとララが魔獣を狩っていく。
リルエルの範囲魔法で一気に数を減らしたが、
ぽこぽこその辺りから、
新たに生まれているようだ。
リルエルも気付いたようで、
魔法を妖精に向けて放つ。
炎魔法だが、到達せずに邀撃される。
ヨエルを巻き込む程の氷魔法だった。
「ご主人様、心配ありませんよ。」
イリンも参加した方がいいかと思っていたら、
顔に出ていたらしい。
「苦戦しているように見えるが。」
「リルエル達はご主人様程、強くはないのです。
何度も挑戦する中で、打開策を見つけて行きます。」
まぁ、勝てそうならいいんだけどね。
その間は、イリンと触れ合っていよう。
因みに、アヤさんはお昼寝中です。
異世界転生125日目の夜。
俺たちは塔型迷宮73階層にいる。
入口から暫く進んだ場所にある丘の上に、
石魔法を用いて高床建築の土台を作らせている。
吹雪いていて見晴らしが悪く、
更に室内であれば心地良いだろうが、
外気温は随分とマイナスになっているからな。
地面と床の間で、
焚き火でもすれば小屋も暖まるだろう。
小屋を出したら、
イリン達が夕食の支度をしてくれる。
アインがルーメンから入手した情報によると、
明朝、公国に領土が接する多民族帝国の貴族、
辺境伯二つと伯爵一つ、
小王国一つが公国の属国になるらしい。
今晩中には防衛線にいる他領の指揮官と、
撤退についての話し合いが纏まるようだ。
他領の兵としても、ここで逆らえば侵攻軍と、
裏切り者に挟撃されるからな。
蛮行を働かずに、引き上げるかは分からないが。
ありがとうございました。




