時空破壊
三話目です。
異世界転生122日目の夜。
俺たちは塔型迷宮55層の野営地にいる。
野営地といっても10層毎の村にある野営地とは違い、
周囲を囲む柵すらない。
ただ、見晴らしが良く水源が近くにあるだけだ。
なぜか、他の冒険者はいない。
35層でも45層でも、それなりに泊まっている姿を見たんだがな。
本日は小屋を出さずに、毛布に包まって寝る。
毛布の下には、寝台用の敷き布団を忘れないようにする。
これがあるかないかで、暖かさが段違いだからな。
風よけに周囲に盛り土をして、中央に焚き火を作れば完成だ。
上空から火が丸見えだが、天井まで100メートルしかないからな。
……見られている、そんな気がする。
アインが特定出来れば、問題は簡単に解決するんだが。
姿形を感じさせないという事は、スキルを使って監視されているんだろう。
眷属達とイリンは気付いているが、リルエル達は勘付いていない。
情報を渡さないように、数日過ごせるだろうか。
取り敢えず、必要最小限の会話に留める。
リルエル達は怪訝な顔をしながらも、何も聞かずに従ってくれている。
いい子達だ。
だが、アヤさんを守っているフェンフの魔力を、確実に観測されたはずだ。
異世界転生122日目の夜半。
俺たちは塔型迷宮55層の野営地で睡眠を取っている。
眷属達が交代で見張りをしているので、
いつものようにイリン達は熟睡中だ。
監視者の視線は消えていない。
寧ろ、近付いて来ている。
生易しかった感触が鋭さを増しているからな。
このまま夜の間に、奇襲でもされそうだ。
……段々、苛々が募ってきている。
俺の女達を舐め回す視線があると思うとな。
相手はスキルによって姿形を隠している。
それは分子レベルから魔力すらも一切感じさせない。
昼間に会ったBランクの冒険者の仕業かどうかも分からないが。
ただ、この階層にいる事を確信させる程度には気配を感じる。
気配だなんて、いい加減な感覚の話だがな。
俺はアインに目配せをすると、空間を殴る。
ただ宙に向かって、強く拳を突き出すだけだが。
アインは即座に俺とイリン達を量子魔法を用いて固定する。
ツヴァイが56階層に転移して、55階層の周囲を固定する。
それにより、衝撃波が空間内を駆け巡る。
衝撃波、時空を消し飛ばす程の力の奔流だ。
断絶し消滅し無となった時空には、周囲の時空が押し寄せてくる。
宇宙としては些細な修正なんだろうが、
こんな間近でされると違和感を感じる事になる。
54層の上は56層になるし、この場所だけ外気圏と地表面の距離が縮んでしまう。
アインとツヴァイが量子魔法を用いて対抗している間に、
ドライが新たな時空を無に上書きしていく。
俺の肺の中を参考にしたらしい。
一応、酸素濃度と湿度は調整しているようだ。
僅かな時間で新たな時空が生まれ、量子魔法が解除される。
……うん、気配は感じないな!
ありがとうございました。




