塔型迷宮攻略(10層目)
02/27にも更新しております。
五話目です。
異世界転生117日目の夕方。
俺たちは塔型迷宮の10階層にある村に辿り着いた。
迷宮の中でも生存できるように、
周囲には堀や柵などの防衛設備が整っている。
当然、門番もな。
「何者だ!?
その馬車は冒険者ギルドの物だぞ!!」
案内役の冒険者が全滅したので、不審者にしか思われていない。
先程、ギルドカードも提示してみたが暗くて見えないと一喝された。
まぁ、馬車を引いていたウルフは従順だったからな。
炎魔法を用いて明かりを作ると、警戒態勢が迎撃態勢に完全移行だ。
見えないって言ったからじゃん。
「何者だ!?
その馬車は冒険者ギルドの物だぞ!!」
何度同じ事を聞かれようと、答えは一緒なんだけどな。
Aランクの冒険者ですと。
「よーい!」
彼らは、小火器を撃つつもりらしい。
流石にマイやララ、ヨエルの眼球に当たると怪我をしそうだ。
リルエルは能力値が違うので大丈夫だと思うが。
ヨエルの闇魔法が発動して、門番達の動きが止まった。
「取り敢えず、落ち着いて話し合おうじゃありませんか。」
動けないから返事も出来ない事を忘れていた。
門を無理矢理開けて中に入り、門番から小火器を取り上げて縛り上げよう。
「見えます?ギルドカードですよ?
松明の光なら、警戒しませんよね?」
「……」
だから闇魔法が掛かっていて動けないんだって。
縛っているから、突然攻撃されたりもしないだろう。
「ヨエル、魔法を解いてくれ。」
「主様、解きます。」
「……申し訳ありません。
私」
うん、名前や言い訳はいいから野営地を教えて欲しい。
異世界転生117日目の夜。
俺たちは塔型迷宮10階層の村にいる。
建物と言える物は各ギルドの支部や、
門番などの仕事で小銭を稼ぐ者達用の宿舎だけだ。
まぁ、色々とギルドがあるので物不足と言うことはないだろうが。
「我が神よ。
こちらに小屋を出します。」
アインが出したのは火山地帯の北側で使用した家だ。
野営地では毛布に包まったり、焚き火で我慢したりするものみたいだが、
俺たちには関係ない。
「ご主人様、ご夕食は如何されますか?」
「魚を食べておこう。
暫く、肉ばかり見ることになりそうだからな。」
今のところ塔の中には湖しかなく、小魚以外は期待できない。
アイテムボックスの中なら悪くはならないが、
量が増える訳ではないからな。
「ご準備させて頂きます。」
この家は狭いので、調理風景がよく見える。
もちろん、ヨエルに相手をして貰いながらだが。
イリンが伸ばした爪を包丁代わりに、刺身を作っているようだ。
リルエルは炎魔法を用いて竈に火を入れて、あら汁の準備をしている。
アヤさんは短剣で野菜を切り刻んでいる。
ララは水飴を作っているので、食後に出てくるのだろう。
釜を使って白米を炊くのはマイの役割だった。
確かに、抱かれる事も無いから、
毎回必要な調理には打って付けなのかもしれない。
ありがとうございました。




