戦支度
02/27にも更新しております。
二話目です。
異世界転生115日目の夜。
俺は東ルーメンの迎賓館の玉座に座っている。
舞踏会とは言っても、俺達とフーリゲは座って見ているだけだ。
曲の合間を縫って挨拶に来る者もいるが、アインが適当にあしらっている。
謁見の間は使用しないので、聖堂に上位貴族、広場に中位貴族が陣取っている。
予想より多く集まったので、下位貴族は迎賓館の外の広場で踊っている。
もちろん、聖堂と広場、外広場の間の門は開いている。
下位貴族が上位者から中位貴族に挨拶に行けるようにな。
その際に四肢を失った貴族達は、
何を西ルーメンに献上するのか問い詰められているだろう。
アヤさんは主賓なので、聖堂の中央よりやや東側に陣取っている。
フュンフが補佐しているので問題はないだろうが、宰相が近くに待機している。
粛正を目撃した貴族達が、公国に刃向かうとは思えないがな。
「ジン、魔人国を見に行きたいという意見が多いんだけど、
手配は出来るかな?」
絶えることなく貴族がやって来ていたフーリゲが言うには、
魔人国の趨勢を見極める必要性を訴えてくる家臣が多いらしい。
「旅客機でよければ、明日の朝にでも出発できる。」
魔人国が石油から蒸留していたケロシンを主燃料としたことで、
航空機のエンジン性能は飛躍的に上がっている。
「旅客機ってなんだい?」
「空を飛ぶ馬車のことさ。
鉄で出来た馬車は見ただろう?」
「……ドラゴンみたいな物かな。
とりあえず、参加者を集めておくよ。」
「アイン、準備を。」
「仰せのままに。」
魔人国の首都は、東ルーメン並の街並みだからな。
明日の夜には、王国内の反対意見は消えているだろう。
異世界転生116日目の朝。
俺は東ルーメンの屋敷で起きた。
明け方まで楽しんでいたので、皆まだ寝ている。
「ご主人様、ご朝食は如何されますか?」
もちろん、イリンは起きている。
彼女のステータスはおかしくなっているからな。
「軽く頼むよ。」
「ご準備させて頂きます。」
俺は執務室に来ている。
早ければ今日中に、勇者同盟と多民族帝国に魔人国の事が伝わるだろう。
即座に開戦とはならないだろうが、準備を始めることにする。
まずは、巫女天狗の処遇だ。
各地でルーメンの制度を指導していたり、様々な任務に就いている。
この内、偽造した白金貨を扱う面々以外は、東ルーメンと山間部に隠してある研究所、
及び宇宙空間に待避させる。
勇者の動向を調査しているドライは任を解き、
ツヴァイをネプに、ドライをリルエル達に就ける。
決戦時に、俺たちは姿を見せない予定だからな。
臣下の公爵達と獣帝国に、徴兵して国境を守るように書状を送る。
書状とは言っても、巫女天狗によって瞬時に渡されるが。
現代兵器を装備した奴隷兵も国境に展開させるが、
こちらは飽くまでも侵攻軍だからな。
出番はあまりないだろうが、境界を防衛する兵も必要だ。
公国は多民族帝国のほぼ総てを相手にすることになる。
勇者同盟は北に位置するので、領地を接していないからな。
まぁ、王国と敵との領土の間には大山脈があるんだが。
魔人達にも集まるように伝えないとな。
勇者同盟と多民族帝国において、
白金貨の流通量を激増させてから二週間が経っている。
物価上昇率は空前絶後だが、その対応は上手くいっていない。
まぁ、通貨量の制御を国とギルド間の取り決めに依存していたからな。
冒険者ギルドを手中に収めている以上、協調して通貨を回収する事も不可能だ。
それにより、俺が望むような美少女奴隷が売りに出されている。
貴族や豪族なども、やっと絶えきれなくなったようだ。
それらを必要以上に高額で買取り、更に白金貨を蔓延させる。
これからは奴隷だけでなく、ありとあらゆる物を買い占めて、
白金貨だらけにしてやろう。
開戦後は、巫女天狗ではなく奴隷に担当させることになるが。
ありがとうございました。




