魔人国の内戦
二話目です。
異世界転生114日目の夜。
俺は魔人国の首相官邸に来ている。
東ルーメンに帰ったら、皆イリンを手伝いに行っていていなかったからな。
一通り楽しんだ後、臨時指揮所から内戦の鎮圧を見学している。
「臨時」と着いているのは、司令所の大改造が終わっていないだけだが。
防衛省の奴隷達が発案した鎮圧計画は、
毒ガス、砲撃、狙撃、強襲の四段階に分かれている。
偵察機の赤外線写真によると、相手の進軍は始まっているらしい。
まぁ、解像度が低いから「多分」としか言い様がないが。
イリンの部下から夜襲が反乱の合図だと、
そう情報が入って来ているので間違いは無いだろう。
この数日、首都区近郊の都市に反乱分子が大挙して押し寄せ、
機会を探っていたようだな。
まぁ、急行した疲れを癒やしていただけだと思うが。
それぞれが群れをなして、首都へ進んでいる。
現在は第一段階だ。
魔人国が開発していた毒ガスを装填したガス弾を、爆撃機で散布中だ。
散布地点周辺は全滅しているが、少し離れただけで効果は無くなっている。
いや、効果自体はあるが魔法によって対応されている。
相手も首都で、どんな武器が開発されていたかは知っているよな。
さて、続いて第二段階に移るようだ。
榴弾砲を中心とした砲撃を開始した。
現在も貨物機を使って、榴弾砲の運搬は続いている。
なんでも、連絡の行き違いらしいが。
巫女天狗を見たら、奴隷を一人連れて部屋からいなくなった。
降格か死かは知らないが、彼には地獄が訪れただろう。
榴弾は毒ガスとは無縁でいた地点を中心に、反乱兵を薙ぎ払っていく。
魔法による対抗も、衝撃波や爆風なので難しいようだ。
欠点は五月蠅いことだな。
攻撃地点を正確に把握されて、回避行動に移られている。
あ、そっちは毒ガスの影響下……うん、まだ効果はあるらしい。
暫く砲撃していたが、それでも生き残る奴は多い。
計画は第三段階に移り、狙撃銃での個人攻撃を開始した。
マッハ3前後の弾速なんだが、それでも強者は生き残っている。
まぁ、先日対戦した称号持ちの吸血種なんて、
本体を幾ら攻撃しても無駄だったしな。
同様の理由で生き残っている奴が多いのかもしれない。
異世界転生114日目の深夜。
俺は魔人国の指揮所にいる。
首都周辺は騒然とした夜を迎えているが。
反乱鎮圧計画は第四段階には移らず、
爆撃と砲撃、狙撃を合わせて攻撃中だ。
それでも、脱落する敵兵の数は減っている。
残っているのは称号持ちの魔人が中心だろう。
勇者同盟及び多民族帝国との決戦時には、
Sランクの冒険者などが、同様に生き残るのだろう。
なんて面倒な!
反乱分子が首都近くまで進軍してきたので、
計画は第四段階に強制的に移行となる。
称号持ちの吸血種や巨人種を中心とした強襲部隊が、
生き残った敵兵に挑んでいく。
……うん、全滅する部隊が多いんだが。
奴隷達は真っ青になりながら指示を出している。
イリンも部下を向かわせているが、進軍を止める程の活躍は出来ない。
……首相官邸にまで、敵が現れるようになった。
まぁ、イリンに瞬殺されているんだが、
フィーアが攻撃の影響を抑えなければ、首都の半分は無くなったな。
「イリン様、首都を壊さないようにして下さい。」
「申し訳ありません。
次はもっと上手くやります!」
うん、宇宙に向けて攻撃すれば壊れないな。
巫女天狗が守っているから、衛星に直撃したけど大丈夫だ。
「イリン様、空にも我が神の物があるのをお忘れですか?」
「う、五月蠅い!
ご主人様は私の味方よ!!」
「イリン様」
うわー。フィーアが姑っぽい。
まぁ、嫁をいびる身内ってのは間違ってないんだが。
それにしても、鎮圧は失敗しているな。
俺の目に止まった者は、量子魔法を用いて、
周囲を俺との相対位置に固定してから殴っておいた。
空間自体が壊れているが、倒したからいいとしよう。
……砕けた空間は、アインに直して貰うが。
ありがとうございました。




