迎賓館
三話目です。
異世界転生113日目の夕方。
俺は帝都の執務室に来ている。
フーリゲが使う執務室の次に厳重な部屋だ。
「ジン、久しぶりだね。
元気にしていたかい?」
「フーリゲこそ、多民族帝国との関係に苦労しているだろう?」
「まぁ、ね。
ジンが配下を増やしてくれた御陰で、暗礁に乗り上げているよ。」
北方連合国と多民族王国の同盟が成立し、
多民族帝国がどう出るかに注目されている。
「こっちも準備が忙しいから、暫くは穏便に頼みたい。」
「王国としても準備はしているけど、勝てるかはジン次第かな。」
「まぁ、暫くすればハッキリする。
それで用件だけど、近々叙勲式を行うから貴族達に声を掛けて欲しいんだ。」
「貴族を避けてきたのに珍しいね。
呼び出すのは構わないけど、誰を何に叙勲するんだい?
君は権力を譲るような人間には見えないけど。」
「アヤさんが妊娠してね。
西ルーメンの男爵に処すつもりだ。」
「おめでとう!これで公国は安泰だね。
でも、折角だから子爵にすればいいと思うよ?
東ルーメンとその農地以外を任せれば、区別しやすいなぁ?」
「フーリゲの都合か。
まぁ、子爵でも困ることはないが。」
「貴族には、早急にルーメン入りするように伝えておくけど、
日次は決まっているのかい?」
「最短だといつになる?」
「……ドラゴンを使わせて貰えれば、明後日の朝には集まると思うよ?」
「それで頼む。
明日の昼には、別の用件があるから腹心だけを集めておいて貰えるかな?」
「君がそう丁寧だと悪い予感しかしないけど、分かったよ。
ところで、妊娠の秘訣はあるのかな?」
そういえば、フーリゲは子供を作るのに苦労しているという報告があったな。
領土が一気に増えたので、作らなければならない数も相当だろう。
「月の物と月の物の間より、数日前が秘訣かな?」
「一子相伝の秘密にしよう!」
そこまでかっ!
いや、まぁ、うん。
排卵日なんて概念ないかもな。
異世界転生114日目の朝。
俺は東ルーメンの屋敷で起きた。
今朝は、イリンが楽しませてくれるらしい。
リルエル達は、火山地帯までの制圧に疲れて爆睡だ。
俺は東ルーメンの巫女天狗が使っているビルに来ている。
叙勲式には、アヤさんのお披露目に相応しい建物が必要だろう。
フーリゲを盾に、一切の貴族関係を持っていなかったしな。
反発はドラゴンやフーリゲが抑えているので問題にはなっていないが。
迎賓館を作るために、これらのビルを宇宙に転移させる。
巫女天狗しかいないので、適当に軌道ステーションにでもするだろう。
化学の知識がついて、地上で行うには危険な研究も増えているしな。
銀河の果てにある実験用ステーションだけじゃ足りないだろう。
既に実験に失敗して、いくつも消滅しているしな。
叙勲式のついでに、東ルーメンを見学させてもいいかもしれない。
貴族達から勇者同盟や多民族帝国に話は伝わるだろう。
巫女天狗のビルは屋敷北に位置していたので、
北側を入り口にして、スペインのエル・エスコリアル修道院を真似よう。
聖堂と手前の広場は、舞踏会を開催できるように装飾する。
聖堂は高位貴族、広場はその他用として使い分ければ良い。
装飾には魔法金属、いや、オリハルコンを主原料に使うのが良いかな。
その他も贅を尽くして作らせよう。
もちろん、装飾は俺が地球で見た物を再現させれば良い。
広場では雨が心配だが、そこは巫女天狗の出番だ。
氷魔法を用いて、雨が入らないようにすればいい。
宮殿部分は謁見の間として整備する。
一応、フーリゲも座れるように玉座は二つ用意する。
過度な装飾に変わりは無いが、魔人とドラゴンも参加できるように改良する。
巨人種用の場所や、最寄りの本体から根を伸ばせるように樹木種用の地下道を作る。
ドラゴンには周囲の屋根に停まって貰い、
頭を天井部分から入れられるように、穴を開けておこう。
もちろん、普段は閉まるような仕掛けが必要だな。
向かって左側、修道院部分は全て控え室にしようか。
周囲に宿泊施設を設けたところで、一時的な場所は必要だからな。
一応、フーリゲらを呼ぶ部屋として和式の部屋も作っておくか。
掘り炬燵にすれば椅子と同じだしな。
向かって右側、博物館部分は巫女天狗に使わせよう。
場所は問わないとはいえ、他部門との調整に色々必要だろうしな。
更に、ルーメンの第一城壁門に二頭、
その外側の門には一頭ずつドラゴンを配置する。
言語を習得させるのに効果的だから、アイスドラゴンもストーンドラゴンも協力的だしな。
迎賓館に辿り着くまでに、刃向かう意思をなくしてやろう。
ありがとうございました。




