実力の証明(一回戦)
連続更新二日目
二話目です。
異世界転生103日目の朝。
俺は魔人国最西端の都市、中心部にある闘技場に来ている。
コロシアムという言葉がぴったりの、観客席から戦いがよく見える施設だ。
連戦連勝が求められるとのことで、俺はイリンやリルエル作の普段着ではなく、
迷宮最深部の蛇の鱗と、魔法金属合金を使った専用防具を身に着けている。
これならば、極超音速でも壊れることはない。
……全裸になるのは恥ずかしいからな。
露出して興奮する可能性もなきにしもあらずだが。
「よう。昨日はしっかり休めたか?
試合はもう始まるから、中央で待ってな。」
闘技場の近くに昨日の魔人がいた。
専用の入り口から中に入ると、観客席がよく見える。
数は少ないが、異様な雰囲気を作り出している。
「何回位、戦うんですか?」
「まぁ、お前さんの実力次第ってことだ。」
実力次第ってことは、強ければ途中を省いてくれるってことかな。
決まった回数がないってことは、無駄に戦わされることもあるってことだが。
「殺しても構いませんか?」
「なるべく、なるべく殺すな!
……ここの頂点に立つんだろ?
手駒が少ないと苦労するぜ?」
「それは実感してるので、極力殺さないようにします。」
手駒が機能しているのは全て巫女天狗達の働きだからな。
彼女達がいなかったら、信頼出来る手駒を探すことさえ莫大な時間が必要だったはずだ。
「そうしてくれるとありがたい。
そういえば、まだ名前を聞いていなかったな?」
確かに名乗った覚えはないが、最初に聞く物じゃないのか?
まぁ、先払いだからいらないのかもしれないが。
いや、やっぱりお金を払った時点で確認する物だと思う。
「ジンです。
人類の国では有名ですよ?」
「吸血種が有名になってどうするんだよ!」
まぁ、本当は人類(?)だからな。
「争奪戦、始め!」
闘技場は試合をする中央部と、それを囲む観客数で成り立っている。
観客席の一部に、司会進行を行う者達がいる。
相手は翼を持った魔族だ。
初めの合図と同時に、空に舞い上がっている。
初戦の相手とは思えないほど、熟達した雰囲気を感じる。
あれか、俺の力量を測る役割があるってことかな?
面倒なので、なるべく試合数は少なくしたい。
つまり、圧倒すればいいんだよな?
量子魔法を用いて、曇天に向けて射線を確保する。
もちろん、相手には当たらないようにだ。
ただし、八方を囲むようにだが。
手元に雷魔法を用いて真空を作り出し、
その中に陽子と反陽子を作って対消滅させる。
一撃で雲は晴れ、相手や司会が呆然としている間に衝撃波がやってくる。
窓ガラスなら割れてもおかしくない程の威力だな。
「まだやるかい?」
「……無理だ。」
相手はその一言を言ってから、司会席に飛んでいく。
暫く話していたが、俺は何も言われていないんだが。
「ジンさん、少し休憩です。
何か食べますか?」
観客の好機の目に晒されていたら、今朝の魔人が現れた。
なぜに敬語。
「貴方の名前を知らないんだが?」
「ん?私はムスンドです。
それで、何か食べますか?」
「血はいらないから、焼いた肉が食べたい。」
「持ってこさせますので、待合室で待って貰えますか?」
直接、聞いた方が早いよな?
「なんで敬語?」
「もちろん、ジンさんの強さを目の当たりにしたからです!
先程までは、すいませんでした!!
これほど、お強いとは思いもせず。」
とても頭を下げられるんだが、まだ観客から丸見えだよ。
気まずいよ!
「いや、いいんだ。
待合室に行こう。」
そもそも吸血種じゃないからな。
まぁ、見た目なら10代に見えるかもしれない。
日本人は幼く見えるって言うしな。
ありがとうございました。




