彼女の手紙
「……ふぅ」
今日は仕事が休み。
久々に部屋の整理をしようと思い、始めてみたものの。
「麻昼くーん、これで段ボール何箱目ー?」
「悪い。だいぶ溜め込んでたみたいだな」
夕方から始めたのに、気付けばもう22時だ。
「だ、だからってこんなに……。ってもう、七箱目!?」
家賃8万ほどのマンションで、かれこれ半年は同棲している彼女、夕陽のすっとんきょうな声が聞こえる。
心の中で反省はしつつも、誰の影響か一度気になったことは自分の納得がいくまで追及しなければ気が済まない俺は、いっさい手を止めずに次の箱に代物を詰めていく。
そうして押入れに眠っている物を順に詰めていると。
「……うん?」
ほこりっぽい押入れの奥に、塵を被って白くなった布に覆われた何かを見つけた。
気になった俺は一旦手を止め、それを引っ張り出して布を剥いだ。
「げほっ、げほっ……こ、こりゃすげぇ」
その時に舞った塵を吸い込み、しばらくむせこんでしまった。
何とか凌いで、布が剥がれてむき出しになった代物を見つめた。
「うわ、懐かしい。……文通か、昔はやってたなぁ」
それは、古びたレターボックス。
昔はよく使っていたが、いまじゃケータイ一個で、溜めるも送るも自由自在だからもう使っていない。
そのあまりの懐かしさに、俺はつい、レターボックスの錠を解いた。
「あれ、なんだこれ?」
開いたところで何もない。
そう思っていたのだが、そこには一通の茶封筒があった。
「送り名は…………あっ」
封筒の裏に、申し訳程度の小さな文字。
そこに記された名はーー“入間 沙夜”。
これは……俺の、親友“だった”子の名だ。
「何でこんなものが……。あいつは、もうとっくに……」
昔の記憶が、断片的に甦ってくる。
でも、彼女の声や容姿は、何故か思い出せない。
「……11年前の、今日……?」
なぜかさらに気になり、切手に書かれた日付を確認。
11年前の、ちょうど今日だった。
「ちょっとだけ」
どうせ大したものではない。さっと見て、作業に戻ろう。
……そう思っていた。
「……え」
手紙の内容に、俺は驚愕した。
「麻昼くん、何してるの?」
「……悪い、ちょっと行ってくる」
「え、ちょっと!」
俺は一目散に、ある場所へ向かっていった。