異国のエクソシスト
戦闘描写は苦手だなぁ……
そして安定のグダリ具合。
エレベーターを降りるとそこには外装からのイメージ通り、豪華なフロアだった。
危険因子がどうたらこうたら言ってたからてっきり牢獄みたいなもんかと思ってたけど……。
フロアを歩き、自室を探す。だがここで恐ろしいことに気づいてしまった。
「番号わからねぇ……」
そう。部屋番号がどこにもないのだ。
おかげさまでどこが指定された部屋なのかがわからない。なんて不親切な寮だ。
と、どうすればいいかわからず突っ立っていると前にあったドアが開いた。
「わぁ!ビックリした……。こんなところでどうしたの?」
出てきたのは少し長めの白い髪の少女。
「いや… 今日からここのフロアに住むことになったんだが……部屋がわからなくてな……」
「あはは…。確かにわからないよね。僕も最初迷ったもん」
女の子でも僕っていうのか……?
まぁそんなことはどうでもいい。なかなか親しみそうなやつで良かった。
「あ、僕はカリン・D・ゲッコー。カリンって呼んで。君は?」
「アレン・レグナード。アレンでいい。よろしくなカリン」
「うん!よろしくねアレン!」
そう言って満面の笑みで返してくれた。
あぁ… 癒されるわこの笑顔……。
「それで、アレンの部屋の番号は?」
「………ハッ⁉︎ えっと…606だ」
危ない危ない。マジで昇天するところだった……。
「606は…… あそこだね。このフロアはあの部屋を601に、時計周りに602、603…ってなってるんだ。あ、僕は604だからね。いつでも来てよ!」
「そうだったのか… ありがとな。って言っても今から出かけるんだろ?」
その為にわざわざ出てきたんだろうしな。
「それなんだけど……良かったらアレンも来ない?」
「え?」
☆
どうやらこの学院には依頼が届き、高難易度順にS,A,B,C,D,E,Fと7つに分けられていて、達成した依頼の難易度が高ければ高いほど単位とやらがもらえるらしい。そして1年で一定以上の単位を取らなければ自動的に退学になってしまうとか。
ちなみに今からカリンと遂行する依頼はDランク。低級悪魔のお掃除。
「でも許可が出て良かったね。正式にはまだ入学してないんでしょ?」
「らしいな。でもまぁ、そこはさすがベルミナのオッサンだ」
まだ俺はベルミナ学院の生徒ではないので依頼には同行できない、と教員に言われたが偶々近くに居たベルミナの進言により、その時に正式な生徒になった。
「もしかしてアレンも学院長直々の推薦?」
「ああ。……カリンもか?」
「うん。……というより、あの6層の住人達は皆学院長の推薦で入学したんだ。……中には無理やり入学させられた人もいるけど」
なるほど。
各地の危険だと思ったやつを連れてきて監禁。引いては働かそうって訳か。
あのオッサンやることがエグいな。
「でも僕は学院長のおかげでこうやって生きて来れたから…… 学院長には感謝してる」
「何かあったのか?」
「うん… ちょっといろいろとね」
「そうか」
あまり突っ込んでいい話題ではなさそうだったのでこれ以上は詮索しないでおこう。
と、言いながら歩いていると教会のような洋館が見えてきた。
「あ、着いたよ」
「ここか? 随分と古ぼけた洋館だな」
至るところにある窓ガラスは割れ、建物にはツタが纏わり付いている。
確かに悪魔が住まうにはいい場所かもな。
「じゃあ……入るよ…」
扉がギィィと音をたてながら開く。
中へ入るとそこにはすでに無数の銃剣が突き刺さっていた。
「これは……?」
「先客がいるってことだろ。一応気をつけろよ」
警戒しつつ中を歩く。
しばらく歩いたがただの1匹もいない。
「これだけ探しても少しの魔力も感じないし……。もういないんじゃないかな」
「みたいだな。この銃剣が誰のかは知らないが、こいつが殲滅したのかもな」
一通り洋館を調べつくしたが、何もいない。
「諦めて帰るか……」
その瞬間、大量の銃剣が飛んできた。
瞬時にそれを察知し、持っていた刀で全てはじく。
「ほう……そこいらの雑魚とは違うらしい」
「その制服…… バルテュス教国のエクソシストか…」
バルテュス教国、かつて何度か戦ったことがある。
確か神を絶対とする国家で異教徒、悪魔には一切の容赦がない。
俺も半魔ということで殺されかけた。断言しよう、あの国のエクソシストは人間じゃない。
「もの知りな悪魔だな。……お前が以前、我が国に侵入したという魔人か」
「たしかそっちからの依頼だったんだけどな」
とにかく今はこの場をどう切り抜けるかだ。
見ろよ、俺の後ろでずっと震えてるこの可愛らしいカリンを。
「アレン……!」
「大丈夫だ。なんとかする。とりあえずお前は下がっててくれ」
カリンを後ろにやり、前のエクソシストに向き直る。
「ご親切に待っててくれるなんて、お優しいことだな」
「最近は雑魚ばかりだったからな……。それでお前が本気を出せるなら待ってやろう」
言葉を終えた瞬間、エクソシストに突撃し斬撃を放つ。
が、その攻撃は防がれた。カウンターを喰らわないように後ろへ飛ぶ。
だが一瞬で詰められた。銃剣の攻撃をなんとか防ぎ、再び距離をとる。
「どうした化け物。もう終わりか?」
「想定外のことに驚いただけだ」
一瞬その場から消え、敵の背後へと回り込む。
かなり不意をついた攻撃だがそれも回避された。
だが続けて攻撃し続ける。このまま押し切ろうと思ったが、エクソシストの一撃に吹っ飛ばされてしまった。あわてて態勢を整えるが、その瞬間目の前にエクソシストが迫って来ていた。
刀で防いだものの、このままでは押し切られてしまう。
「クッソ……」
「お前ら……揃いも揃って弱すぎる…」
マズい……このままじゃ…!
とその時、どこかの柱だったであろうものが飛んできてエクソシストに直撃した。
「アレン! 今の内に!」
今のは…カリンが投げたのか?
あまりのことに驚いたが今はそれどころではない。最優先はあのエクソシストだ。
「見た目によらんとはこのことか……。鬼の子、お前を先に殺した方がよさそうだ」
「なんで知って……」
「目を見ればわかる。鬼の遺伝子…お前にはしっかりとそれがある」
「随分と余裕だな」
話の途中だろうがなんだろうが容赦なく斬りかかる。
が、やはり防がれた。
「アモンの子に鬼の遺伝子か……殺しきるには装備が足りないな…」
聖書を取り出し、転送術を発動する。
「させるかよ…!」
斬ろうとしたが結界のようなものが邪魔をして斬るに斬れない。
「また会おう……。次に会う時は皆殺しだ…」
そして、光と共に消えてしまった。
残されたのは無数の銃剣。刀を鞘にしまい、カリンの方へ行く。
「アレン……」
「帰ろう。ちょっと疲れた」
できるだけ笑ってみせたがその笑顔はどうも暗かった。
☆
「結局、バルテュス教国とは連絡がついてない。連絡ついたとしても知らないの一点張りだろうけどな」
「そう……なんだ…」
帰ってからカリンはずっとこんな感じで元気がない。
「カリン? どうしたんだよ」
「………アレンは引かない?僕が嫌われ者、忌み子だとしても」
……ああ。なんだそのことか。
どうやら自分が嫌われたんじゃないかと思ってるらしい。
「気にしねぇよそんなこと。それにカリンが鬼の子だったから、今こうして俺が無事なんじゃねぇか」
「アレン……」
「まぁ、なんだ。お前に鬼の遺伝子があろうとなかろうとお前はお前だろ。自信もてよ」
「うん……。ありがとうアレン」
なんか勢いとはいえ、すっごい恥ずかしいこと言ったな…。
まぁでも、やっとカリンが笑ってくれたし……別にいいか。やっぱり女の子は笑ってなくちゃな。
と、思ってると突然カリンがこちらに笑顔を向けて言った。
「それとねアレン。僕……男の子だよ?」
「……………え?」
作者は男の娘大好きです。