悪霊退治 その参
「おい、メシはまだか」
「まだだよ。っていうか、何で、彪と葛の木様が家にいるのよ」
そう。悪霊退治をすると決めてから、彪と葛の木様はほたるの家に泊まっている。
「人間の手伝いをしてやるんだ。これくらい、当然だろ」
彪は恩着せがましそうに言った。
「すまんなぁ。私まで泊めてもらって・・・」
葛の木様の言葉に、ほたるはドキッとした。
「そんな・・・ことは・・・」
だって、神様だもの。断れない。
寝る時間になった。
「もう寝るから、静かにしてよ」
ほたるは、「静かに」というところに力を入れて言った。
「おやすみ~」
布団に入った途端。
「さあ、飲むぞ」
「おう。酒だ、酒」
葛の木様と彪が、騒ぎだした。ドタバタと布団の上を走りまわる。
「やんや、やんや」
「ちゃんちき、ちゃんちき」
「うるさい!!!」
ほたるは怒鳴った。今日だけならまだしも、昨日も、一昨日も・・・。
「もう、ちゃんちきするなら、外でやってよ」
「何だよ。かたいこと言うな」
彪は、デレンデレンに酔っている。
「当り前よ。毎晩毎晩、寝不足で・・・」
「すまんなあ、ほたる」
葛の木様が謝っているけど、今日は言わしてもらおう。ほたるは息を吸った。
「とにかくね。静かにして。それが出来ないなら、出て行って」
「すみませーーん」
彪と葛の木様が、声を揃えて言った。ほたるは布団にもぐった。最初こそは、静かだったけど段々と・・・。
「ギャハハハハ」
「やんや、やんや」
うるさくなった。ほたるはイライラした。
「出て行け。この酔いどれ」
と、1人と1匹を、窓からポイ捨てした。
次の日。この日は、土曜日で学校は休みだった。ほたると、彪は葛の木様と一緒に、若菜さんを待っていた。そして、この日も若菜さんは花を持って現れた。悪霊は、相変わらずだ。若菜さんも、具合悪そう。花をお供えすると、さっさと帰っていった。
「あの女、今日が山場だな」
「山場!?死んじゃうの?」
「よし、あれを実行しよう」
彪は意識を集中する。彪は、相手の妖力を少しだけ、コントロールすることが出来るらしい。
「チカラガホシイ」
悪霊が、すごい勢いでこちらに来た。
「走れ」
彪の言葉に、ほたるも走りだす。葛の木はほたるの肩に、乗っかている。
「いいか。ある程度まで、悪霊を引きつける。そこで、お前が弓を撃つんだ。鬼水晶めがけて」
「うん。・・・撃った事ないから、成功するか微妙だけど・・・」
「水晶持っていたって、低級は低級。ま、外したら、私が鬼水晶を取りに行くさ」
彪もほたるもかなり息が上がっている。
絶対に、悪霊を退治しなくては。