欠片を狙う妖 壱
私が割ってしまった。鬼水晶を・・・。
学校からの帰り道。ほたるは、考え込んでいた。
一昨日。葛の木様が、それを知らせに来た。
「まずいことになったぞ」
彪も言っていた。
「砕け散れば、それを狙う妖が出てくる」
ほたるは、必死に想像した。鬼水晶がどれほどのものか価値が解らなくても、これだけは解った。欠片を奪い合うために、恐ろしいことが起きてしまう。戦争だ。地獄絵図だ。
「た、ただいま・・・」
ようやく家に着き、玄関の引き戸をそっとあける。
「お帰り、ほたるちゃん」
今、ほたるがお世話になっている家の奥さん、芙美子さんが、出迎えた。
「ただいま、芙美子さん」
少しだけ笑顔で、ほたるは返す。とてもヤバイ状況だけど、すべて秘密だ。見えることも、割ってしまったことも。そしてもちろん、彪のことも。
「ただいま・・・」
部屋の引き戸を開け、ため息をつく。部屋は、酒の匂いでいっぱいだ。原因は・・・。
「おお、ほたる。帰ったか。・・・やけにグッタリしているな」
「やっとか」
葛の木様と彪が、酒を飲んでいた。
「部屋で、飲み会しないでよ」
ほたるがため息混じりに言う。
「硬いこと言うな。お前が帰ってくるのを、待っていたのだ」
彪は、結構酔っていた。ほたるはため息をつき、鞄を置いて、彪と葛の木様のそばに座った。
「さて、始めるか」
葛の木様は、そこまで酔ってもいないらしい。今日は、砕けた鬼水晶について、今後どうするかを話し合うのだ。
「私が生きている限り、こんなことは無かったからな・・・」
葛の木様は、腕を組む。
「割ってしまったのは、私。大変なことになる前に、破片を集めた方がいいと思う。でも、どこに富んだか分からない」
ほたるは、少なからず、責任感を感じている。
「そうらぞ。ヒッ・・・。おい、ほたる、おれあらろうするんら。さらすのか?ヒック・・・。めんろくせえ・・・」
彪がなんて言っているかは、葛の木様と、ほたるには、解らなかった。
彪は、
「そうだぞ。おい、ほたる、これからどうするんだ。探すのか?めんどくせえ・・・」
と言おうとしたのだ。
そんな彪を無視して、葛の木様とほたるは、話し合う。
「もう既に、どこかの妖が、持っているかもしれん。集めるには、妖怪たちと戦わなければならない」
ほたるは、かなりの間、悩んでいた。
「ハッキリりろよ。ウリウリしよって・・・ヒック・・・。ライライ、おまーには関係の無いおろばありだ。ヒッ・・・ウイー・・・。おおっといても、いいおらろ」
訳「ハッキリしろよ。ウジウジしおって。だいたい、お前には関係の無いことばかりだ。ほおっといても、良いのだぞ」
彪が言っているけど、ほたるは、ガン無視だ。
関わったことで、芙美子さん達に危険が及んだら?もし途中で、命を落としたら?
考えれば考えるほど、すぐには、決断できない。
「少しだけ、考えさせてよ」
今は、そう言う事しかできない。
こんなふうにモタモタしている間にも、危険が近付いているかもしれないけど、でも・・・!!
ほたるは、手を握り締めた。
結局、良い結論が出せないまま、話し合いは終わった。
この晩、ほたるは、あまり眠れなかった。
こんにちは。
12部で、破片も終わり、いよいよ大変なことになりました。
酒飲みで、あまり頼りにならないような、彪。
しっかり者の、葛の木様。
両親が亡くなっていて、引き取られたばかりの土地で、大変なことに巻き込まれてしまった、ほたる。
今後、一人と2匹はどうなるのでしょうか。
それぞれが、いい方向に向かうと良いですね。
特別編 ほたるの部屋
2階にあります。
田畑、森林、山と、色々見渡せる。
部屋の中は、比較的にスッキリしている。
(というか、ほとんど何も無い)
押し入れがあって、下には両親の形見などが。上には、布団が入っている。
以上です。
どうでもいいですけど。
読んでくださった方、ありがとうございました(笑)