破片(かけら) その参
「鬼水晶が割れたぞ」
最初、葛の木様にそう言われた時、意味が解らなかった。
オニスイショウガワレタ・・・。
割れた?鬼水晶が?
「え?それって、どういう意味?」
もう一度、聞き返す。状況が理解できないのは、彪も一緒のようだ。
「鬼水晶が割れて、砕け散ってしまったんじゃ」
葛の木様は、まだ慌てている。
クダケタ・・・。
「どうして?」
本当に、理解できない。
「良いか?落ち着いてきけよ?ほたるが撃った矢が、水晶に当った。そしてそのまま・・・」
ほたるも彪も、あの時の様子を繰り返し、思い出す。
カッと光って・・・。
「砕けたって、チリジリに散ってしまったってこと?」
ほたるの心臓は、ドクン、と鳴った。
「ああ」
葛の木様は、うなずく。
「どれくらいに、散ったんだ?」
彪の顔が強張る。
「さあな」
葛の木様が、淡々と答えた。ようやく、落ち着いてきたようだ。
鬼水晶が割れた。ほたるの矢で、チリジリに散って、どれくらいに散ったか分からない。
「え・・・・・・。エーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
きちんと解った瞬間、驚きが、ほたると彪の体を突き抜けた。
「お、落ち着け」
葛の木様が、まあまあという感じで、手を出す。
「ど、どうすればいいの?」
ほたるが聞いてみる。しかし、明確な解答が得られることは無かった。当然だ。これは、前代未聞の事態なのだから。
「まずいことになったな・・・」
彪は、顔を顰めている。