第6話 炎と拠点
「ボォォォォッ!!」
朝起きたらなんか燃えてる魔物が生まれてた。
「さて、何でだ?」
俺は薪を確認する。
うん、勢いは減っているがしっかり燃えているな。
というか寝ている間に誰かが薪を追加してくれていたっぽい。ありがたい事だ。
「でも火を埋めた覚えは無いんだよな」
というかそんなモンどうやって埋めるんだ」
念のため俺は薪とその周辺を核にする。
「ん? 燃えた魔物が出て来たところに小さな穴が……」
小さな穴は魔物がはい出してきたあなと繋がっている。
という事はこの穴に火が入って埋めた判定になった? でもいつこんな穴が……
「寝る前に地面に刺した枝か!」
アレが根っこまで火が届いて埋めた判定になったんだな!
「うーん、何ていうザル判定」
いやそのおかげでサラマンダーの代わりの火の魔物が手に入ったんだから良かったというべきか。
「んじゃ名前つけるか。火の魔物か~、何かいい名前ないかな」
ダンテ、ゲイル、ムラサメ、ホウシ、フィトン……うん、我ながら統一性ないな。
言語とかモチーフとか統一しておけばよかったわ。
「あーでも和風モチーフの名前がムラサメだけだからコイツはそっちからとるか」
和風の名前で火か……鬼火、陽炎、(グー……)炭火焼ハンバーグ……いかん、雑念入った。
コイツの見た目はサラマンダーの火から生まれたのかトカゲっぽいな。
でもサラマンダーは火を吐く蜥蜴だったのに対し、コイツは純粋な火の体だ。
「火の妖怪だと火車とかしか思い浮かばないな。神様モチーフとしても仏教に火を使う神様っていうか仏様なんて居たっけ? あーでも日本神話に確かいたよな」
確か日本神話の火の神様の名前は……ヒノカグツチだっけ?
「カグツチはどうだ?」
「ボゥ?」
炎の魔物はえ? 何の話と首を傾げる。
「お前の名前だよ。カグツチ」
「……ボウ!」
火の魔物は自分の名前を気に入ったらしく尻尾をブンブンと振って喜びを示す。
「ミー!?」
その際に火の粉が舞って慌ててダンテが逃げ出す。
「ミーッ!」
「ボゥ……」
ダンテに怒られシュンと尻尾が下がるカグツチ。
どうやら魔物達の間でも相性関係なく上下関係? 姉弟ヒエラルキーのようなものがあるっぽい。
「まぁまぁ、そう怒るなよダンテ」
念願の日を使える魔物が生まれた事もあって、俺は気分良くダンテを宥める。
「ボウッ!!」
不服そうなダンテだったが、俺が言うのならと言った感じでカグツチに一声鳴くと離れた場所に退避する。どうやら和解したようだ。
「ミ~~」
許して貰って安堵したのか、カグツチはホッとしたような鳴き声をあげると俺に飛びついて来た。
ってやばっ!
「おわぁぁぁぁっ!?」
全身が燃え盛るカグツチに飛びつかれ俺の体が燃え……
「燃え……っ! ってあれ? 熱くない」
燃える、と思ったんだが、何故か不思議とカグツチの火が俺に燃え移る事はなかった。
「何でだ?」
肌に触れるカグツチの体は暖かいが暑いというほどでもなく、肌が焼ける匂いなどもしてこない。
「これがカグツチの能力って事か?」
よくわからんが、触っても大丈夫って事か。
うん、正直助かる。万が一って事もあるもんな。っていうか今あった。
「よーし、それじゃあさっそく焼肉、いや魔物を狩りに行くぞー!」
「ボゥッ!!」
「ミッ」
けれどダンテはカグツチの近くにいるのが嫌なのかついてこようとせず、ホウシ達の所にへ行ってしまう。
「ん~まぁ良いか。カグツチの能力もよくわかんないから巻き添え喰らったらヤバいもんな」
肉が食えるとあって俺は深く考えずに狩りに向かう事を優先する。
「ガォォォッ!!」
はい、出ました熊の魔物。
もうなんか新しいメンバーが入ると出てくるチュートリアルみたいな扱いになってるけど。
「よし、カグツチ、お前の力を見せてくれ!」
「ボウ! ボォォォォッ!」
カグツチが口から火炎放射を放つと熊の魔物が驚いて回避する。
「さっそく中距離攻撃か!」
ウチは基本接近戦ばかりだから、離れた位置から攻撃できるのはありがたいな。
「ガウッ!」
そこにすかさずゲイルの追撃が入る。
ゲイルは他のメンバーに比べて特殊能力が無いけど、相手の隙をついて追加ダメージを与えてくれるのでありがたい。
「カードゲームのデッキに入れておくと地味に良い働きをする隙間埋めカードみたいな奴だよな」
「ジャリ!!」
そしてムラサメが止めとばかりに大ダメージを与える。
「ガァァァァッ!!」
が、そこで不利を悟ったのか熊の魔物が逃走を図る。
「やばい! 逃がすな!」
ここで逃したら飯が無くなる!
「ボォォォォッ!」
するとカグツチが火を噴いて熊の魔物の正面に炎の壁を産み出す。
「ガァ!?」
「おお! こんな事も出来るのか!」
本来は防御用だろう技を敵の逃亡阻止に使うカグツチ。
「ウォォォォウ!」
突然現れた火の壁に驚いた熊の魔物の首元に噛み付くゲイル。
「ガァァァァァッ!!」
熊の魔物が断末魔の悲鳴を上げて倒れる。
「やった! 熊肉ゲットだぜ! ムラサメ、さっそく解体だ! 肉は薄切りな!」
「ジャリ!」
ムラサメは任せろとばかりに熊の魔物をスパパッと切ってゆく。
「よし、後はこれでいいか。カグツチ、この石を熱してくれ!」
「ボウ!」
そこそこ大きくて平らな石を服の袖で拭いてからカグツチに火を吹きかけて貰う。
そして手ごろな木の枝を折ると、ムラサメに樹皮を削って貰って箸を作る。
「よし、焼くぞ!」
十分に熱した石に薄切りされた肉を置くとジュウゥと肉の焼ける音が聞こえてくる。
「おお、焼き肉の匂い! だが慌てるな! 寄生虫とか怖いしじっくり焼くぞ!」
そうしてしっかり焼けたのを確認してから、俺は恐る恐る肉を口に入れる。
「モグモグ……肉っ!」
それはまさに肉の味! 塩味とかついてないかホントに肉の味だけだけど、それでも数数日振りのまともな飯だ!」
「美味い、とはいえないがそれでも美味ぇ! もっと焼くぞ! これじゃ足りない。もっと大きな岩で焼くぞ!」
「ボウ!」
久しぶりのまともな食事を俺は心往くまで堪能したのだった。
◆
「ミーッ!」
「おおっ!? どうした!?」
拠点に帰ってくると、ダンテが飛びついて来た。
何だ何だ? 俺が居なくて寂しかったのか?
「ノココ」
「ジュジュ」
するとホウシとフィトンが俺の腕を掴んでどこかに連れてゆく。
「どうしたんだお前達?」
そうして朽ちた大樹の前まで連れてこられる。
「んん? これは!?」
なんと朽ちた大樹が装飾されているじゃないか。
「これはもしかして……家か?」
そう、朽ちた大樹は蔦や葉っぱ、それにカットされた若木を組み合わせて雨宿りできるようになっていたんだ。
「お前達が作ってくれたのか?」
「ミッ!」
「ノココ!」
「ジュジュ!」
ダンテ達は誇らしげに胸を張る。
「それに組まれた柱は綺麗にカットされてるこれはムラサメか?」
「ジャリ」
ムラサメがそうだよと頷く。
「ワウ!」
ゲイルが自分もと言いたげにスリスリと頭をこすりつけてくる。
「お前も手伝ってくれたんだな」
「ワウ!」
いや、こりゃホントにありがたい。毎回雨に濡れたらいつか風邪を引いちまうもんな。
そしたら医者も薬も無いこの状況だと詰んでしまう。
「ありがとうなお前達」
「ミッ!!」
俺が礼を言うと魔物達は誇らしげに声を上げた。
「それじゃあさっそく入ってみようか」
といっても簡単な住居なのでドアや沢山の部屋がある訳じゃない。
あくまでも雨風を凌げる程度だ。
だがそれが何よりありがたい。
「ミッ!」
「ワウ!」
「ジャリ!」
「ノココ!」
「ジュジュ!」
とそこに集まってくる魔物達。
「おおう、全員集まると一気に狭くなるな」
まぁでも、それはそれで暖かくていいか。
「ボウ……」
だがそんな中、一匹だけ寂しそうな声を上げるカグツチ。
「あっ」
そうか、カグツチは体が燃えているから入ってこれないのか。
俺はカグツチの火で火傷はしないけど、皆やこの家はどうなるか分からない。
「……ミッ!」
するとダンテが家から出てカグツチを横に呼ぶ。
「ボウ?」
するとそこには岩を組んで作られた小屋のようなものがあった。
「ボウ!?」
「これは、カグツチ用の家か!」
「ミッ!」
その通りとダンテが頷く。
そうか、石の家ならカグツチが入っても燃えないもんな!
「流石だぞダンテ!」
「ミッ!」
まぁねとばかりにダンテが胸を張る。
相性が悪いから距離を取っていたと思ったんだが、ちゃんとカグツチの事を考えてくれていたんだな。
よく考えれば体が炎で出来ているカグツチこそ雨宿りする場所が必要だもんな。
「ボウゥゥゥウッ!」
感激したカグツチが天に炎を吹いてダンテに飛び込んでゆく。
「ミーーーーーッ!!」
それを見て慌てて逃げ出すダンテ。間一髪。
「ミミミミミッ!!」
「ボゥゥ……」
流石に怒ったダンテに猛烈な勢いで叱られてションボリするカグツチ。
うん、今のは肝が冷えたぜ……
「ともあれ、拠点をゲットだぜ!」




