第5話 希望の火を手に入れろ!
「さて、それじゃあ今日は食料を捜しに行くぞ!」
「ミー!」
ダンテの実を食べて食事を終えた俺達は食料集めに行くことにした。
というかダンテの実は小さいからマジで腹減ってんのよ。
「ホウシとフィトンは拠点の防衛を頼む」
「ノココー!」
「ジュジュ!」
つっても何もないんだけどね。
あるのはダンテ達の入る穴とあとは朽ちた大木くらいだ。
そもそも何でここを拠点にしてるんだろ。
ああ、ダンテが帰巣本能で戻ってくるからか。
「食料を捜すついでに拠点として使えそうな場所も探してみるかな」
そんな訳で俺達は食料を捜して進む。
「できれば木の実があると良いんだけど」
ドングリ……は加工が必要か。
となるとやっぱり果物だよな。
「果物しか食べてないなぁ。ああ、肉が食いたい」
「ガウ?」
食べる? と倒した魔物の肉を差し出してくるゲイル。
「いや生は食えないから」
やはり火、火が欲しい! なんて切実に願っていたら……
「シャァァァッ!」
ボォォォォォッ!!
「火だぁぁぁぁぁ!」
火を噴くトカゲと遭遇した。
「あれか、サラマンダーとかそういう奴か!? なんでもいい! 火を噴く魔物だ! 確実に倒すぞ!」
ボォォォォォッ!!」
「ミーッ!?」
炎を吹かれたダンテが慌てて逃げ出す。
「ダンテ!?」
ってそうか、アイツ綿毛の魔物だから火が天敵なのか!
「ならゲイルとムラサメ頼む!」
「ガウ!」
「ギュリ!」
ホウシとフィトンを置いてきたのは正解だったな。
アイツ等も茸と木で火が苦手だろうし。
「ワォォォン!」
ゲイルが推定サラマンダーを翻弄し、ムラサメが切りかかる。
「ギュイ!」
「ジャアッ!?」
「いいぞ! そのまま逃がすな!」
「ジャア!」
ボォォォッ!!
サラマンダーが炎を吐き、周囲の木や草が燃える。
「あっち、これじゃ近づけないぞ」
「ギュイ!」
ズシャッ!
「ジャアッ!?」
けれど体が鉄で出来ているムラサメは炎に臆する事なく攻撃する。
「ワォォォン!」
そしてムラサメの攻撃を受けて炎から出てきたサラマンダーをゲイルが追撃する。
「よし、これならいけるぞ!」
魔物達の攻撃は確実にサラマンダーを追い詰めている。
よしよし、これで念願の炎の魔物をゲットできるぞ!
勝利を確信したその時だった。
ポツ……
「ん?」
ポツ、ポツ……
冷たい感触が肌に触れる。
「雨か?」
ポツ、ポツ、ポツ……サァァァァ。
少しずつ肌に当たる雨粒が増えきたと思った途端、一気に降って来た。
「ジャアッ!?」
それに対して慌てだしたのはサラマンダーだ。
サラマンダーは雨に驚いたのか、凄い勢いで逃げ出してゆく。
「って、やばっ! ゲイル逃すな!」
「ワウッ!」
速度で優るゲイルがサラマンダーを追いかけるが、サラマンダーは岩場の狭く奥まった場所に逃げ込んでしまった。
「なにーっ!?」
念願の火がーっ!!
ザァァァァッ。
更に雨が本格的に降ってくる。
「ミッ!!」
ダンテが俺達も雨宿りをした方が良いと声を上げる。
「くっそー! せっかくの火がー!」
俺達はかろうじて雨宿りを出来る場所を見つけると、そこに集まって飴を凌ぐ。
ギュウギュウ……
「狭い、けど濡れた体にはちょっとありがたい」
魔物達の体温で冷えた体を温めつつ、俺達は雨が止むのを待った。
そうして数十分後、ようやく雨が止んだ事で俺達はサラマンダーが逃げ込んだ岩場に戻って来た。
が、サラマンダーは濡れた外が嫌なようで、全然出てくる気配がない。
「くっ、今日は駄目か」
ガッカリしながら俺達は帰路に就く。
その途中先ほどサラマンダーと戦闘した場所に通りがかる。
「あーこの辺もすっかり火が消えてるな」
サラマンダーとの戦いで火が燃え広がらなかった事が幸いと言えるかもな。
「って、しまった! ここで燃えてる木の枝を確保すりゃ火が手に入ったじゃん!」
しまったー! サラマンダーにばかり気を取られてて燃えてるの事を忘れてた!
「いや、もしかしたら燃え残ってる火種があるかもしれない! 皆、火を捜すんだ!」
「ワウ!」
「ギュリ!」
ゲイルとムラサメが火種を捜しに駆け出す。
「ミ~」
ただ火が苦手なダンテはやる気が出ないらしく、探索に消極的だ。
まぁそれはしゃーない綿毛だからな。
俺達は燃え残ってる火を捜す。
「屋根になる者がある場所を重点的に探すんだ!」
「ワウ!」
「ギュリ!」
けれど都合よく雨から守ってくれるような場所はなく、見つかるのは雨に濡れてすっかり火の消えた枝や草ばかりだった。
「無いなぁ……」
「クゥーン」
「ギュリィ」
ゲイル達も見つからなくて申し訳ないとばかりに尻尾を下げている。
「しゃーない、帰るか。おーい、ダンテ」
「ミッ!?」
遊んでいるダンテを呼んで帰ろうとした俺だったが、何やらダンテの様子がおかしい。
いつもならミ~! とか鳴いて喜んでやって来るのに、珍しく驚きの声を上げる。
「どうかしたのか?」
「ミッミッ、ミ~ミミ~」
わざとらしく視線を逸らして口笛っぽい音を鳴らすダンテ。器用だなお前。
明らかに何かを隠している。
「何か見つけたのか?」
「ミーミ」
知らないとばかりに首をブンブン横に振るダンテ。
いやお前、それで何も隠してないってのは無理があるだろ。
「……ダンテ」
「ミ?」
なんですか? と言いたげに平静な顔で反応を返すダンテ。
「尻が燃えてるぞお前」
「ミーーーッ!?」
あっさり引っかかったダンテが慌てて飛び退くとそこには赤々と輝く木の枝があった。
「成程、木の洞か!」
どうやら戦闘の余波で吹き飛ばされた火の付いた枝が運よく木の洞に入り込んだようだ。
「ミー!」
騙されたと気づいたダンテが抗議の鳴き声を上げるが、そっちも隠していたんだからお互い様だ。
「よし、これで火を確保できたぞ!」
こうして俺達は念願の火を手に入れる事が出来た……が、戻ってきて早々困った事に気付いてしまう。
「ヤバい、燃やすものがない」
細い枝な所為でどんどん燃えてきてるから、早く別の薪に火を移したいのに燃やせるものがなかったんだ。
「雨の所為で薪になるものまで濡れちまってる!!」
ガッツリ濡れてるからとてもじゃないが乾くまで待ってる余裕もない。
せっかく火を手に入れたってのに、このままじゃ無駄になっちまう!
「皆、乾いてる薪を捜すんだ! 細くても構わないから!」
俺は枝を地面に突き刺して濡れた地面に倒れないようにすると、急ぎ乾いた薪を捜しに行く。
しかしどこも雨で濡れていて燃やせそうなものは無かった。
「くっ全然だめだ」
少しでもマシな枝を持ってくるが、しっかり水を吸っているらしくまるで燃える気配がない。
ヤバイヤバイ! 早く見つけないと火が消える!
「そうだ! 薄い葉っぱを炙って水分を飛ばせば燃やせる筈!!」
俺は葉っぱを拾ってくると服で水滴を拭ってから火で炙る。
「よし乾いた! これで……って駄目だ―!」
乾いた葉っぱはよく燃えたけど、よく燃え過ぎた。
あっという間に燃えてしまったんだ、そりゃそうだよな!
「他に何か燃やせそうなものは……駄目だ無い!」
ああ、もう燃え尽きてしまう!
と、その時だった。フィトンが濡れた枝を持ってやってきたんだ。
「それは濡れてるから駄目なんだよ」
「ジュジュ」
しかしフィトンは枝をゆっくり横に振ると濡れた枝を宙に放る。
「ジュッ!」
そして地面から飛び出した木の根で枝を突き刺す。
「ええ!? 一体何をするつもりなんだお前?」
「ジュジュ!!」
そして少しするとフィトンは根っこに刺さっていた枝を引き抜いて俺に差し出してきた。
「え? いやだから濡れた枝は……ってあれ?」
フィトンから濡れた枝を受け取った俺は、ある違和感に気付く。
「濡れてない?」
そう、フィトンのくれた枝は乾いていたのだ。
でも一体どうして……いやもしかして。
「お前、枝の水分を吸い取ったのか!?」
「ジュッ!」
その通りと枝を縦に振るフィトン。
そうか! フィトンは根っこで敵を突き刺してそこからいろんなものを吸い取って栄養にしてしまう能力がある。
それを応用して水分をあっという間に吸い取ったのか!
「でかした! これで薪を追加できる!
俺は薪を枝に近づけて火を移す。
だが、火は上手く燃え移らない。
「くっ、早く燃え移ってくれぇ」
「ギュリ」
と、今度はムラクモがやってくる。
ムラクモは俺から薪をひったくると何度も刃を突き立てた。
「は!? 何するんだお前!?」
「ギュリ」
一体何事かと思ったのだが、ムラクモはすぐに満足したのか薪を返してきた。
まったく意味が分からん。何だったんだ今のは。
ともあれ気を取り直して薪を火に近づけると、何故かあっさりと火が付いた。
「ええ!?」
しかも火は広がっていきしっかりと薪を燃やし始める。
「どういうことだ? さっきまで全然燃えなかったのに」
とそこで俺は薪の表面がおかしい事に気付いた。
「切れ込みが入って表面が反り返ってる?」
切れ込み……ムラクモか!
「これは、切れ込みを入れて薄く反り返った面を作る事でそこから燃えやすくなってるのか!」
「ギュリ!」
ムラクモはその通りと誇らしげに胸を張る。
おお、思った以上に役に立ってくれるじゃないか!
「ジュジュ」
そうこうしているとムラクモが追加の薪を用意してくれる。
更に地面に枝を向けてそこに薪を並べてゆく。
「お、おい、せっかく乾かした薪を……ってあれ。 この土濡れてない?」
もしかして濡れた土からも水分を吸い取ってくれたのか?
フィトン、気の利く奴! 木だけに!
「よし、これだけ薪があれば寝ている間に火が消える事もないぞ!」
俺は地面に燃えている枝を突き刺し、周囲に薪を追加するとようやく一心地つく。
「はぁ、暖かい……」
温かさと緊張が解けて気が緩んだ所為か、一気に眠気が襲ってくる。
「ん、まぁ少しくらいならいいか……」
そうして目を瞑り暖かな眠りに落ちる。
◆
翌日、俺が目を覚ますと、
「ボォォォォッ!!」
なんか全身が燃えている生き物が居た。
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