第4話 騎士と木とキノコ
「騎士団が居ない⁉︎」
聖域の入り口に戻ってきた俺達だったが、そこで待っている筈の騎士団の姿はどこにも無かった。
「もしかして場所を間違えたのか?」
「ミッ!」
「何か見つけたのかダンテ⁉︎」
ダンテが跳ねている場所に行くと、いくつもの馬の蹄の跡が見つかる。
「蹄の跡! それに馬車の轍もある! 土が乾き切ってないって事は最近出来たものだ!」
やっぱり騎士達はここに居たんだ。
「でもそれなら何で居ないんだ?」
騎士団では対応出来ないほどの魔物に襲われたからとか? けど周囲に戦ったような痕跡もないしなぁ。
何かほかに理由があるのか?
「儀式の完遂も確認せずに帰る理由で考えられるのは……生贄くらいだけど」
でもなぁ、道中俺を襲ってきたのは普通の魔物ばかりで、魔物達を従えられそうなボスの姿はどこにもなかった。
「仮にボスへの生贄にするとして、ボスに逢うまで聖域を彷徨っていたら俺みたいに他の魔物に襲われる。となるとボスに生贄を捧げる場所……場所!?」
そこまで考えついて俺は嫌な予想をしてしまう。
「祭壇が、生贄を捧げる場所?」
じゃああの儀式は何なんだ? 生贄なら儀式なんていらない筈。
ただ俺があそこに行くだけでいい筈だ。
俺は儀式の手順を思い出す。
儀式の文言を唱え、舞を踊る。文言の内容は……
―聖域におわす大いなる主よ、盟約の下に我等が願いを聞き届けたまえ―
―我が御霊は大いなる主の御霊に、ハラ ミタシ マモ リタマエ―
「ん?」
そこで俺はふと文言に違和感を覚える。
ハラ ミタシ マモ リタマエ
ハラミタシマモリタマエ
「まさかこれ……」
はらみたしまもりたまえ
「腹満たし守りたまえだったのかーっ!?」
って事は我が御霊は大いなる主の御霊にって部分は、食われて体の一部になるって意味か!?
「まさかホントに生贄だったーーーーっ!?」
いやいや落ち着け。
それなら俺はとっくにボス魔物に喰われて……
「瓦礫になった祭壇。誰かの血、その中に刺さっていた錆びた剣……」
嫌な予想が高速で組みあがってゆく。
「祭壇で儀式を行うのはボスを呼ぶ為? 例えば祭壇に魔法がかけてあって、儀式を行う事でスピーカーで喋るみたいにボスを呼んでいたとか? けど過去の誰かが儀式を行った際に祭壇ごと生贄が殺された事で俺が儀式を行った時はボスを呼べなかった?」
……滅茶苦茶ありそう。
「って事は祭壇が壊れて以降の儀式ってなんの意味も無かったって事じゃね!?」
いや俺みたいな魔力無しが生まれるのも珍しいらしいし、儀式の頻度はそんなに多くないのかもしれない。
あくまで推測だが騎士団が居なくなった理由は予測できた。
出来たんだがそうなると問題は……
「俺はどうすればいいんだ!?」
だってそうだろ。推測が正しければ俺は生贄になって殺される予定だったって事だ。
そんな奴が戻って来たらどうなる?
ワンチャン祭壇が壊れていたから戻って来たと信じて貰えても、結局解決策が建てられた後で俺は生贄にされる。
「ならどこかの町に旅人の振りをして逃げ込むか?」
いや、魔力無しの俺が外の世界で暮らせるとも思えない。
この世界は魔法が使えるのが当たり前だから俺じゃ就職先を見つける事も出来ない。
長年屋敷から出して貰えなかった事も今になって考えると生贄にする為だけじゃなく、俺が真相に気付いて逃げたりしない為だったのかもな。
「でも聖域に戻っても魔物に襲われるだけだし……」
「ミ?」
「ワウ?」
「ギュイ」
ちらりと見ると、ダンテ達がどうしたと俺を見てくる。
「……いやコイツ等が居ればなんとかなるかも」
ハッキリ言ってダンテ達は強い。
一匹で倒せなくても三匹で熊の魔物を倒した。
更にダンテは食料を提供してくれ、ムラサメは刃物として使える。ゲイルはまぁ速いし偵察とか?
「なら他の魔物や使えそうなものを土に埋めれば新しい力を持った魔物が生まれる可能性が高い」
そうなれば危険な魔物が闊歩する聖域であっても安全で快適な生活が出来るかもしれない。
「っ! そうだ! 戦力を増やして俺達でボスを倒せば生贄になってなくても大手を振って帰る事が出来る!!」
いやまぁ、生贄にされた事をスルー出来ればだけど。
「でも生贄はあくまで予想だからな」
ここで少し考えを纏める。
今すぐ家に帰りたいが本当に生贄だった場合、どうされるか分からないので迂闊に帰るのも危険。
魔物のボスがいるならそいつを倒して生贄にされる危険を無くしたい、その為にもボスを倒した実績を手土産にしたい。
その場合ボスの強さが分からないので戦力を増やしたい。
「よし、決まった! 実家に帰るにしろ魔物のボスと戦うにしろ戦力の増強が最優先。次にボスの実在の調査。で、いたら戦って勝つ!」
「ミ!」
「ガウ!」
「ギュイ!」
「よし、さっそく帰って仲間を作るぞ!」
「ミーッ!!」
今後の方針も決まったし、さっそく素材集めだー!
◆
「ノココ」
「ジュジュー」
翌朝、俺達の前には新しい仲間の姿があった。
結局帰りは埋める為の魔物に遭遇しなかったので、代わりに拾ったキノコと木の枝を実験を兼ねて埋めてみた。
「やっぱり地面に埋めると魔物が生まれるんだな」
埋めるのが魔物でなくても新しい魔物が生まれる事はこれで確定だな。
「んじゃ恒例の名づけといくか」
俺は新しい魔物達の名前を考える。
「キノコ型の魔物のお前の名前はホウシ!」
「ノココ!」
ホウシと名付けたキノコの魔物がボフンと胞子を噴き出して返事をする。
「木の魔物のお前はフィトンだ!」
「ジュジュー!」
フィトンと名付けた魔物も枝を動かしてガッツポーズをとる。
「よろしく頼むぞ、お前達!」
「ノココ!」
「ジュジュー!」
名前も付けたのでさっそく新しい仲間の能力を確認すべく狩りに向かう。
「ノココ」
「ジュジュー」
うーん二人共遅いな。
まぁキノコと木だからそもそも歩くだけでも凄いというべきか。
「おっ、丁度良く熊の魔物だ!」
幸い、魔物の方からやってきてくれた。
「ゴァァァァ!」
相手もやる気満々のようだ。
さぁ、二人の実力を見せて貰おうか。
「ノココ!!」
襲い掛かって来た熊の魔物に対しホウシの動きはゆっくりだ。
やっぱゲイルに援護くらいさせるべきかと思ったその時、ホウシが口?から胞子を拭きだした。
「ノコッ!」
それがどうしたとばかりに突っ込む熊の魔物。
が、直後熊の魔物がふらつく。
「グ、グマァ……」
「おお!? もしかしてデバフ効果のある胞子を使えるのか!?」
「ノココ!」
思った以上にヤバイ攻撃のホウシに続いてフィトンが動く。
フィトンも木の魔物だからか動きが鈍い。
一体どう戦うのか。
ドスドスドス!
「ゴァァァァ!?」
「根っこで突き刺したぁ!?」
なんとフィトンは地面から根っこを針山の様に突き出して熊の魔物を串刺しにしてしまった。
「ジュジュゥ」
「ゴァ……ァァ」
「ひぇっ!?」
更に恐ろしいことに熊の魔物があっという間に干からびていったんだ。
「もしかして根っこから栄養を奪い取ってるのか!?」
「ジュジュー」
フィトンの葉が心なしかツヤツヤとしているように見える。
「ノココ!」
「ジュジュ!」
熊の魔物を倒したホウシとフィトンはどうだと自慢げに胸を張る。
「うん、凄いね君達」
絡め手のホウシと死角から串刺しにしてミイラにしてしまうフィトン。
恐ろしい変化球コンビだぜ……
「ただ二匹共動きが遅いから、実戦は難しいな」
「ジュジュ~」
「ノココ~」
ダメ出しを受けてフィトンとノココが肩を落とす。肩ないけど。
けどホウシの麻痺攻撃で動きを遅くすればイケからこの二匹はセットで運用するのがいいかもだ。
「ただ相変わらず火を使える魔物が居ないから食料がなぁ……」
「ノココ?」
ホウシが食べる?とばかりに自分のカサを千切って差し出してくる。
「いや、遠慮しておく」
流石にデバフ効果のあるキノコを食べるのはちょっと……
「暫くはダンテの果実が頼みかぁ」
「「……」」
◆
「なんだこりゃー!?」
翌朝、俺が目を覚ますと周囲は凄いことになっていた。
何匹もの魔物が血まみれになって倒れていたんだ。
「何があったんだ一体!?」
「ノココ!」
と、ホウシが倒れている魔物達の足元を指差す。
「何だこれ、キノコがたくさん生えてる?」
「ジュジュ」
そしてフィトンが血まみれの根っこを見せびらかしてくる。
これはもしかして……
「デバフ胞子を撒くキノコをトラップとして設置して、夜に襲ってきた魔物を動けなくしてからフィトンが纏めて串刺しにしたのか?」
「ノココ!」
「ジュジュ!!」
マジかよ。って事はこいつ等は自分から戦いに行くよりも待ち伏せの方が得意なのか。
「お前達は探索に連れていくよりも拠点を守って貰った方が良さそうだな」
「ノココ!」
「ジュジュ!」
こうして、新たに拠点防衛に優れた魔物が仲間になったのだった。




