第3話 名付けと連携
「ワォン!」
「ギィン!」
獣の魔物を埋めたら、何故か二匹魔物が生えました。
片方は埋めた魔物と同じ獣型。
もう片方は全身が鉄みたいにガチガチの魔物。
「ってなんでだよ!?」
獣型はともかくこっちの固そうな魔物はどこから生えてきたんだよマジで!
「キュゥン」
「ギュィィ」
そしてどうじに懐いてくる二匹の魔物。
ファサ、スリスリ。
ゴツ、ゴリゴリ。
うわぁフワフワで冷たくて硬い。
うん、固い方これ金属の感触だわ。
「マジ分からん。どういうことだ?」
幸いだったのはどっちの魔物も俺に対して好意的という事か。
けど魔物は人に懐かないのが常識。
一匹や二匹だったら例外が居てもおかしくないけど三匹は流石に偶然で済ませる事は出来ない。
「もしかして儀式って魔物を味方にする事なのか?」
いや、それだと儀式をする前に仲間になった綿毛の魔物の説明がつかないか。
「ミー?」
「キュウン?」
「ギュイン?」
フワフワ、モフモフ、ゴリゴリ。
俺が悩んでいるのを察したのか、魔物達がすり寄ってくる。
「近い近い」
「ミッ」
そして綿毛の魔物は今日も頭の果実を食えと差し出してくる。
うん、ちょっと酸っぱいけど美味い。
「はー、悩んでも分かんないよな」
この件については騎士団と合流して事情を説明した方が良さそうだ。
そもそも儀式をしたらどうなるのかを俺はよくわかっていなかった訳だし。
家庭教師の話だと魔物の脅威を何とか出来るくらいのふんわりした説明だったもんなぁ。
「もっと詳しく聞いておくんだったな」
うん、騎士団と合流して祭壇が壊れていた事、一応儀式を行ったが何も起きなかった事を説明して、その後どうするかを決める為に家に戻ろう。
「よし、そんじゃ騎士団を探しに行くか」
俺が立ち上がると魔物達も出かけるのかと立ち上がる。
「一応アレも持っていくか。無いよりはマシだろうし」
俺はスコップ代わりに使った錆びた剣を手に……あれ?
「剣が無い」
昨日獣の魔物を埋葬した際に墓標代わりに刺しておいた剣が無くなっていた。
新しい魔物達が土から出て来た時に倒れた様子もない。完全に消えている。
「ギュイ?」
と、鉄の魔物の冷たい皮膚が手に触れる。
「鉄の魔物」
もしかしてこいつ……
「お前、錆びた剣から生まれたのか?」
「ギュイ!」
すると鉄の魔物はその通りとばかりに頷く。
「マジかよ!? 種からだけじゃないのか!? いや埋めた肉からも生まれたけど……って事は剣から生まれてもおかしくないのか!?」
まさかの物理法則ガン無視な現象に眩暈がしてくる。
「つーか剣を地面に刺したのが埋めた判定に入るのか。滅茶苦茶だな」
地味に唯一の武器を失ってしまったのも痛い。
「ギュイ」
ゴリゴリ。
あーうん、戦力にならない錆びた剣よりはコイツの方がマシかもしれない。
「よし、それじゃあ気を取り直していくか!」
「ミー!」
「ワウ!」
「ギュイ!」
そんな感じで俺達は騎士団と合流すべく移動を開始した。
するとさっそく魔物と遭遇する。
「グルルァ」
現れたのは強そうな熊タイプの魔物。
体の大きさも四肢の太さも狼型の獣の魔物よりも強そうだ。
「っていきなりヤバそうなのが来た! 気を付けろお前達!」
「ミー!」
「ガウ!」
「ギュイ!」
「グルォォォォ!」
戦いは圧倒的だった。
確かに熊の魔物のパワーは凄まじく、周囲の木々や岩が爪の一撃で簡単に破壊されてしまうほどだ。
ただ、こちらはパワーこそ劣っていても三体の群れ。
「ギャオウ!」
獣の魔物が速さを活かして鋭い爪と牙で切り裂き、
「グルォォ!」
「ギュイ!」
ギィン!
鉄の魔物が熊の魔物の攻撃を真正面から防ぎ動きを止める。
「ミーッ!」
ドゴンッ!!
そして綿毛の魔物の突進力によって瞬く間に熊の魔物は討伐されたのだった。
「うーん、数の暴力」
囲んでフルボッコにされたら折角のパワーも活かせないよな。
「というか鉄の魔物の皮膚は凄いな。鎧みたいなもんじゃないか」
「ギュイ!」
熊の魔物の攻撃を受けた時は心配したが、ケロッとした様子に拍子抜けしてしまったくらいだ。
「ミッ!」
と、綿毛の魔物が熊の魔物を突いてピョンピョンジャンプをする。
「あーコイツを埋めろって言ってるんだよな? でも流石にこの巨体は無理だぞ。穴を掘るにもかなりデカい穴を掘らないといけないからな」
だがスコップ変わりの錆びた剣はもう無くなっちまったし、そもそもこの巨体が入る穴を掘るのは相当な重労働だ。やるとしたら一日作業になるぞ。
「ギュイ!」
そんな事を話していたら、鉄の魔物が熊の魔物のところへ行く。
「……ギュイン!!」
そしてシュバババッという音が走ったと思った次の瞬間、なんと熊の魔物の体がバラバラになったのだ。
「なにーっ!?」
コイツが切ったのか!?
「そうか、お前は元々錆びた剣から生まれた魔物。だから体の一部を剣として使えるんだな!」
「ギュイ!」
鉄の魔物がその通りと頷く。
おいおいマジかよ。それなら戦い以外もかなり便利になるぞ!
「解体して肉をカットできるなら魔物肉が食べられる!」
と思ったんですが……
「火が無いわ」
うん、切っても生は生だわ。
「モグモグ」
「ガツガツ」
「ハムハム」
結局熊の魔物肉は魔物達の飯になりましたとさ。
火の魔物が欲しーい!
「っていうかいちいち何かの魔物って呼ぶのも面倒だな。いいかげん名前くらい付けてやるか」
となるとどんな名前にするかな。
カッコイイ名前が良いよな。
「まず綿毛の魔物、お前は……ダンテだ」
「ミッ!?」
ちなみに神曲とかの方じゃなくてダンデライオン、つまりタンポポ。
「んで獣の魔物、お前は……ゲイルだ」
「ガウ!!」
コイツはシンプルに疾風って意味ね。
狼型だしスピード感のある名前にした。
「最後に鉄の魔物、お前は……ムラサメだ!」
「ギィン!」
ふふ、やはり剣から生まれた魔物には剣の名前が相応しいだろう。
伝説の名刀だぞ。
「って訳でこれからよろしくなダンテ、ゲイル、ムラサメ!」
「ミッ!!」
「ガウ!」
「ギィン!!」
少しだけ魔物達と心の距離が縮まった気がした俺達は改めて騎士団と合流すべく歩みを再開した。
「おっ! あの岩場は見覚えがある! あの木も! これは近いぞ。確か騎士団はこの先だ!」
数時間をかけて遂に見覚えのある場所まで戻って来たのだが……
「騎士団が……居ない?」
何故か、騎士団の姿はどこにも無かったのだった。




