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魔物畑で快適ライフ!~生贄にされた少年は掟破りの魔物栽培で快適生活を手に入れる!~  作者: 十一屋 翠


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第二話 不思議な魔物と祭壇で儀式

「ミーッ!」


 土の中から現れたのは大きな綿毛のような生き物だった。

 だが自然界にそんな生き物は存在していない……と思う。

居るとすればそれは……


「魔物……!?」


 人を見ると必ず襲ってくる異常な生命体。

 その強さは鍛えた騎士達にも匹敵し、一般の人達にとっては肉食動物以上の死の象徴。


「っ!」


 俺は慌てて声を抑えて魔物から離れようとする。

家庭教師の先生が言っていた。どれだけ見た目が愛らしくても、魔物は人間を襲ってくると。

寧ろ見た目が愛らしく美しいものほど危険で獰猛な場合が多いと。


「ミー……」


 すると綿毛の魔物は何かを探しているのか周囲をキョロキョロと見回す。


「ミ」


 そして俺を見ると動きを止めた。

 やばい、完全にロックオンされた!


「ミー!!」


 逃げる間もなく魔物が飛び掛かって来た。

 速い! あんな見た目でこんな速さを!?


「うわぁっ!?」


「ミ~!」


 死んだ、そう思った俺の顔にポフッと綿毛が押し付けられた。

 綿毛が左右に動きちょっとくすぐったい。


「ミ~!」


「って、あれ?」


 おかしいな、襲ってこない?


「というかなんか懐かれてる?」


 明らかに綿毛の魔物の態度は俺を襲おうとしているようには見えなかった。


「どういう事だ? 魔物は人間を必ず襲うんじゃなかったのか?」


「ミー」


 もしかしてコイツ、魔物じゃない?

 俺は綿毛の生き物を改めて観察する。

 綿毛は大体30センチくらいで、その上に小さな銀色の実が実っていて……


「って銀色の実!?」


「ミー?」


 銀色の実って確か、昨日俺が食べた果物。

 もしかしてこいつ……


「お前、俺が植えた種から生えたのか?」


「ミー!」


 綿毛の魔物が頷く。

 どうやらこの魔物は寝る前に俺が植えた種が育った魔物のようだった。


「って事は俺、魔物を食べちゃったの!?」


 い、いや落ち着け、この世界じゃ魔物の肉も貴重な食料だ。

 食べれない訳じゃない。

 問題は何故コイツは俺を襲ってこないかだ。


「果実が生えているって事は植物の魔物っぽいし、土に植えた俺を親か何かと勘違いしてるとか?」


 そう考えるとコイツは種の段階で俺を認識していたって事になるんだが……怖いからこれ以上考えるのは止めよう。


「とりあえず、襲われないだけよかったと思う事にしよう」


 ぐ~


 安心したらお腹が空いて来た。

 そう言えば昨日は果物一個しか食べてなかったもんなぁ。

 何か食べる物を探さないと。


「ミ」


 そう考えていたら綿毛の魔物は何を思ったのか頭の上の果実を俺に押し付けてきた。


「わわっ、何だ何だ!?」


ゴリゴリと果実が顔に押し付けられる。


「こら、止めろ……」


 と、その時、綿毛の魔物の頭の果実が落ちて俺の手の中に納まる。


「ミッ!」


 すると綿毛の魔物は満足したのか俺から離れる。


「……もしかして、これを食べろっていうのか?」


「ミッ!」


 そうだとばかりに頷く綿毛の魔物。

 魔物から生えた果実を食べろと?

 いや確かに昨日は食べたけど、あの時はコレが何か知らなかったわけで……


 ぐぅ~……


「ミッ!」


 再びお腹が鳴ると綿毛の魔物もさっさと食べろと俺の手に体当たりをして急かしてくる。


「あーもう、分かったよ!」


 どうせ昨日も食べたんだ。

 魔物肉も普通に食べられる世界なんだしいける筈!


「カシュッ!」


 小さな果実を齧ると、口の中に水分が混じった果肉の味が広がる。

 小さいからか、昨日食べた果実に比べたら少し酸味が強い気がする。

 けどやっぱり空腹で飢えた腹にはありがたい!


「モグモグ……ごっそさん」


 小さいだけあってあっさり果実を食べ終えてしまった。


「美味かったよ」


「ミッ」


 俺が礼を言うと綿毛の魔物は嬉しそうに跳ねる。

 とりあえずコイツが居れば最低限の食事にはありつけそうだ。

 とはいえ量が少ないからもっと食べられる物を集めないと……


「って何ここに定住する流れになってるんだ! 俺は儀式をやりに来たんだっての!」


 そうだ、儀式を終えてさっさと家に帰ろう! 安全で温かい家に!


「ミッ」


 俺が立ち上がって歩き出すと綿毛の魔物もついてくる。


「お前は……まぁお前も魔物だしな。多少は戦力になるかもだ。ついてきたけりゃ好きにしろ」


「ミッ!」


 そんな打算もあって俺は綿毛の魔物の同行を受け入れた。

 正直言えば魔物の闊歩する聖域を一人で歩き回るのが怖かったのもある。


「昨日魔物に追いかけ回されたから道がよく分かんないんだよな」


それでも歩き続けて数時間後、遂に俺達は儀式の祭壇らしきものを見つけた……んだが。


「なんか壊れてるんだがーっ!?」


 祭壇は完膚無きにまでぶっ壊れていた。


「まじかよ……」


 は、そうだ! もしかして勘違いで実は倒壊した家とかかもしれない!

 そう思って調べた俺だったが、それは明らかに家ではなく、それどころか祭壇らしき舞台が発見された事で嫌な予感は確実となってしまった。


「どういう事なんだよ」


 まさかお目当ての祭壇が壊れているなんて……

 さらに言えば祭壇は苔むしていて、どうみても昨日今日に壊れた感じじゃない。


「ミッ!」


 俺が途方に暮れていると綿毛の魔物が何かを見つけたらしく、ここを見ろとジェスチャーをしてくる。


「どうした? って、これは!?」


するとそこには驚くべき痕跡があった。

祭壇はただ壊れていただけじゃなく、何かの爪跡らしきもので破壊されていたのだ。


「なんだこのデカイ爪跡。俺の頭ほどもあるじゃないか……」


 もしこれが魔物の仕業だとしたら、これをやった魔物は相当デカイ事になるぞ。

 しかも問題は一つだけじゃなかった。

そこには真っ黒になった血らしきものがこびり付いていたんだ。


「誰か襲われた……のか?」


 魔物同士で戦ったとか? いや魔物同士が戦うなんて聞いたことない。

 あるとすればそれは……


「俺と同じ魔力を持たない人間か!?」


 多分だけど、俺と同じように儀式を行う為にやって来て、けれど儀式をする前に魔物に襲われてしまったって事か。


「ミッ!」


 恐ろしい想像に震えていた俺に、綿毛の魔物がまた何かを見つけたらしく声を上げる。


「今度は何だ?」


「ミッミッ」


「これは……剣か!!」


 ガレキの隙間から見えたのは剣の柄だった。


「ここに来た人間が護身用に持って来た剣か! これがあれば!」


 正直魔法の使えない俺じゃ心もとないが、それでも丸腰よりは遥かにマシだ!

 おれはガレキに手を伸ばし、剣を引き抜く。


「おお! ……おお?」


 念願の自衛手段をゲット、と思った俺だったが残念なことに剣は錆びまみれでボロボロになっていた。


「マジかよ……」


ずっとこんな場所に野ざらしだったらすっかり錆びついちまってたってことか。


「錆が取れたら中から本当の姿が現れたり……しないか」


 一縷の望みをかけて落ちていた瓦礫の欠片で剣の表面をこすってみたが、錆が削れるばかりで中から綺麗な刃が出てくることはなかった。


「それでも何もないよりは、マシか」


 魔物の攻撃を防ぐことくらいなら……出来るよな?


「ともあれ、どうするかなぁ」


 儀式を行う祭壇はぶっ壊れてるし、これじゃ儀式どころじゃないだろ。

 もしかして俺より前にここに来た人間も祭壇がぶっ壊れていたことに絶望していたところを襲われたのかもしれない。


「どうする、騎士団の所に戻るか?」


 祭壇が壊れている以上、儀式どころじゃない。だったら戻るべきよなぁ。

 途方に暮れながら俺は壊れた祭壇を見る。


「そもそも祭壇が無いと儀式ってできないのかなぁ」 


 例えば儀式は聖域の中心で行うべしとされていて、祭壇はその位置を示すだけの物って可能性もある。

それなら祭壇を無視してここで儀式を行えば問題は解決するかもしれない。


「戻るにしても時間がかかるし、試しに儀式をやってみるか。上手くいけば帰りは安全に帰れるわけだし」


 俺は屋敷で学んだ儀式の作法を思い出すと、なるべく祭壇の近くに立って始まりの言葉を唱える。


「―聖域におわす大いなる主よ、盟約の下に我等が願いを聞き届けたまえ―」


 お経のような歌のような儀式の言葉を唱え、俺は舞う。

 ダンスというよりは神社の祝詞の際の作法や日本舞踊のようなゆっくりした動き。


「―我が御霊は大いなる主の御霊に、ハラ ミタシ マモ リ タマエ―」


 時間をかけて教わった一連の儀式を終わらせる。

 すると……


「何も起きない」


 うん、何も起きなかったんだ。


「駄目じゃん!」


 やっぱ祭壇が壊れてるから儀式が成功しなかったのか……


「こうなるとやっぱり騎士団の所に戻るしかないか」


 結局俺は騎士団の下に戻ることにする。


「ミ?」


 俺が歩き出すと綿毛の魔物もどこかいくの? とばかりに顔を上げてついてくる。

 騎士団の所に戻ったらコイツどうしようかな。

 どう見ても魔物だから絶対攻撃されるよな。まぁ命の恩人、いや恩果実の子供だし、見逃して貰おう。危険じゃないっぽいし。


 そんな訳で俺達は騎士団が待っている筈の方角へ進もうと思ったんだけど……


「よく考えたら道が分かんなくなってたんだった」


 行きはまっすぐ進めば祭壇があるって言われたけど、どっちにまっすぐ進めばいいか分かんないもんなぁ。


「ミッ! ミッ!」


 すると綿毛の魔物がこっちこっちだこっち、俺についてこいとばかりに前に出る。


「もしかしてお前、道が分かるのか?」


「ミッ!」


 おお、この土地で生まれた魔物だから土地勘があるって事か! 頼りになるな!


「凄いなお前! よし、道案内は任せたぞ!」


「ミッ!」


 そうして綿毛の魔物に先導され、進んでゆくと……


「ミッ!!」


 地面に小さく空いた穴の前に連れてこられた。

 周囲を見回すと見覚えのある折れた大木。

 そして騎士団の姿は見えない。


「……え?」


「ミミッ!」


 綿毛の魔物はピョンと飛ぶとその穴にスポッと収まる。


「ええともしかしてここってお前を植えた場所か?」


「ミッ!」


 その通りとばかりに穴から飛び上がる綿毛の魔物。


「分かるって、帰巣本能の方かよぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 そりゃそうだよね! 見た事もない騎士団の居る場所なんてわかる訳ないよね!!

 俺の馬鹿!!


「あー、マジかよぉ……」


 一日中歩き疲れて、そして全てが徒労に終わった事で体から力が抜け落ちる。


「何だったんだ今日の苦労は……」


 マジで徒労に終わっただけじゃないか。

 唯一の収穫は錆びた剣くらいで。


 グゥー……


 だというのにこんな時でも腹は減る。


「はぁ、メシを捜しに行くか」


 力の抜けた体に鞭打って立ち上がる。


「グルルルッ」


「グルルって言いたいのはこっちの方なんだよ……って、ん?」


 ふと聞こえた変な音に振り向くと、そこには見覚えのある獣の姿があった。


「え?」


 確かコイツって……


「グルルゥッ」


 カパァと大きな口を開けた獣が飛び掛かってくる。


「え?」


 状況についていけない。真っ赤な口が近づいてきたその瞬間、


「ミーッ!!」


 ドンッという音と共に白い影が獣を吹き飛ばした。


「ミーッ!!」


「はっ!?」


 白い影は綿毛の魔物だった。


「ミミーッ!!」


綿毛の魔物はボヤッとしてんなと言わんばかりに俺に鳴いてくる。


「た、助かった」


 俺は慌てて錆びた剣を構えて獣、いや魔物を睨みつける。


「グ、グルルルッ」


「こいつ、昨日俺を襲った獣型の魔物か!」


 けど何で? 昨日は急に俺を諦めて帰ったのに。


「今日は襲いたい気分って事かよ。お前も腹が減ってるってか?」


 理由は分からないが今日は俺を見逃すつもりはないらしい。

 もしかしたら俺を狙って戻って来たのかもな。


「クソッ! けど今日の俺は武器だってあるんだ! 昨日のようにはいかないぞ!」


 剣を振りかぶって獣の魔物に向かって駆け出……


「ミーッ!!」


 そうとしたら綿毛の魔物が獣型の魔物を体当たりで吹き飛ばした。


「ギャン!」


 近くの岩に叩きつけられて悲鳴を上げる獣の魔物。


「お、おお?」


「ミーッ!!」


 綿毛の魔物は連続で獣の魔物に体当たりを繰り返す。


「え、ええと、なんか強い?」


 戦いは一方的だった。獣の魔物は綿毛の魔物の攻撃を避ける事も出来ず食らい続け、既にフラフラだ。


「ミー!」


 そしてとどめの一撃を喰らってとうとう獣の魔物は倒れた。


「ミーッ!」


 綿毛の魔物がドヤーと獣の魔物の死骸の上で満足げに勝利の鳴き声を上げると、俺に向かって褒めて褒めてと言わんばかりにすり寄ってくる。


「あ、うん。凄いね。びっくりした」


「ミー!」


 いやホントにビックリした。コイツこんなに強かったんだ。

 というか下手したら最初に出会った時に伸し掛かられたあの時に俺殺されてたのかもしれないのか。

 見た目はコレだけど、やっぱり魔物なんだなぁ……


「けど、これで飯にありつける! 肉だ! 肉が食えるぞ!!」


この世界じゃ魔物に下って食用として食える。

さっそくこいつを解体して肉を……


「って錆びた剣しかねぇ!」


 これで切った肉を喰えと?


「あと火も無いわ!」


 もっと大事なことに火がない事に気付いた。


「マッチもライターもない。終わった」


 全身から力が抜ける。

 マジかよ。ここまで苦労しておいて何の収入も無し!? いや俺は碌に戦ってないけど。

 でもゲームならレアアイテムゲットだろ!

 ゲームでも解体する? その為の道具がねぇよ!


「うあー、目の前にお宝があるのに何もできないこの無力感……マジで死ねる」


 更に言うとこれ放置しておいたら別の魔物が来るんじゃね?

 どこかに捨てに行かないと駄目って事かよ。

 せっかく倒したのに、他の魔物の餌にされるとかやりきれねー!


「ミッ!」


 そんな風に俺が悶えていると、なんか綿毛の魔物が穴の中で跳ね始めた。


「あ? もしかしてこの魔物をそこに埋めろって言ってるのか?」


「ミッ!」


 敵とは言え、倒したからには埋葬して欲しいんだろうか?


「ミッ、ミッ!」


「分かったわかった」


 で、言われるままに狼の魔物を穴に埋めようとしたんだが、


「ミッ! ミッ!」


 何故か綿毛の魔物に妨害された。


「何でだよ。お前が埋めろって言ったんじゃん」


「ミッ! ミッ!」


 そして穴の横に移動して跳び跳ねる綿毛の魔物。


「もしかしてそこに穴掘って埋めろと?」


「ミッ!」


 その通りとばかりに頷く綿毛の魔物。まじかよ。


「疲れてるのに今からこれが入る大きさの穴を開けろと?」


 鬼かお前は。

 しかし綿毛の魔物は早く早くと俺を急かす。


「クッソ我儘だな」


 くっ、仕方ない。なんだかんだ言ってこいつが居ないと詰んじまうし、なるべく機嫌を損ねないようにしないと。


「あ、そうだ」


 と、俺は錆びた剣の事を思い出す。


「素手で掘るよりはまだましだろ」


 錆びた剣でザックザックと穴を掘ってゆく。

 まぁ手で掘るよりは遥かにマシだな。

 そうして時間をかけてようやく穴が出来上がる。


「コイツを入れて土をかけたら、これはもう使えないし墓標代わりにするか……出来た!」


 錆びた剣を突き立てて立派な魔物の墓が出来ました。


「ミッ!」


 それに満足したのか綿毛の魔物も自分の穴に入ってゆく。

 その光景を見て俺は思った。


「……もしかしてアレ、墓じゃなくて肥料のつもりだったりする?」


 何となく不穏な空気を感じた俺は、全てを忘れて寝る事にした。

 そして翌朝。


「キャン!!」


「ギィン!!」


「なんか二匹生えたーーーっ!?」


 魔物が二匹、地面から生えてきました。


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