第12話 カモが金塊を両手にバラ撒いてくる
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「……こりゃあ質の悪い金だな。精々金貨3枚分ってところだ」
ゲイルに乗って町の傍までやって来た俺達は、さっそく金塊の買取査定を頼むべく店へと向かった。
で、査定の結果がこの金額である。
「おいおい、流石に少なすぎだろ。どう見たって20枚は作れるぞ」
最初は打ち合わせ通り値上げ交渉だ。
「精錬って知ってるか坊主。不純物を取って純粋な金だけにすると見た目以上に少なくなるんだよ」
ああうん、普通に考えれば鉱石は溶鉱炉で溶かして不純物を取らないといけないもんな。
でもイスタのウンチは純度100%の金の塊。精錬の必要はない。
あ、ちなみにゲイルとダンテは町の近くで待機して貰っている。
「にしたって少なすぎだろ」
「嫌なら売らなけりゃいいだろ」
こちらが不満を口にすると、店主は冷たく言い放つ。
「そうね、ここで売るのは止めましょう」
ここでククミスが会話に入ってくる。
今回の買取ではククミスがお嬢様、俺が使用人という体で話を進めている。
豪華なドレス姿のククミスはどう見ても場の主役だからなぁ。
「はっ、よその店はウチよりも安いぜ!」
ククミスが店を変えようと提案すると、店主はお決まりのセリフを放つ。
明らかにククミスを、いや俺達を世間知らずのボンボンと足元を見たセリフだ。
いや実際にそうなんだが。
というかお前みたいな根性無しはよそじゃやって行けねーぞみたいなセリフ、異世界でもあるんだなぁ。
「聞いてみれば分かる事だわ」
しかしククミスが聞く耳を持たず店を出ようとすると店主も慌てて待ったをかける。
「待て待て、流石にアンタ等みたいな世間知らずが騙されるのを放っておくのは後味が悪い。金貨四枚なら買ってやろう」
「十五枚ね」
ククミスは店主の言葉に大きく吹っ掛ける。
「流石にボリ過ぎだ。四枚と銀貨五枚」
そして始まる交渉合戦。
店主が俺達を金持ちのボンボンと判断して足元を見てきたのは交渉としては正しい。
だがそれ以上に俺達にはどうせコレ魔物のウンチだし、いくらでも生産できるからいくらでも良いよねという強みがあった。
「十四枚と銀貨五枚」
「金貨五枚」
ククミスと店主の交渉が加速してゆく。
「分かった。金貨十枚だ。これ以上はまからんぞ」
「じゃあそれで、やったわルース。金貨十枚になったわよ」
「おめでとうございますお嬢様」
ルースと言うのは俺の偽名だ。
流石に本名が知られると後々ヤバくなるかもしれないからな。
「まいどー!」
代金を受け取って店を出るとスンと表情を変えるククミス。
「これで最低でも金貨10枚で売れることが分かりましたね。それでも買い叩かれたみたいですけど」
「さっさと売りさばくんじゃなかったのか?」
思った以上に交渉に熱中していたククミスに方針と違うんじゃないのかと再確認する。
「最初だけはどのくらいで吹っ掛けてもいいか確認する意味も込めて交渉の真似事をしてみたんです。やり方は本の受け売りですけど」
「へぇ、お姫様でもそんな本を読むんだ」
「お母様やメイドの目を盗んでメイドの私物をこっそりと。見つかって没収されたので最後まで読めませんでしたが」
おっとこんな所でも彼女の闇を覗いてしまった。迂闊に昔話も出来ないな。
「さぁっ、次からはさっきの店の買取価格を縦に値を吊り上げますよ!」
◆
「金貨八枚だな」
「あら、向こうの〇〇というお店では同じ物を十枚で買って貰えましたわ。ここでは売らない方が良さそうですわね」
「は? あの店はボッタクリだぞ! きっと次回から買い叩くつもりだ! ウチで売った方が安全だぞ!」
そのボッタクリ店よりも安い金額を出しておきながらよく言うなーと思いつつ俺は交渉を見守る。
「でも実際このお店の方が安いですし。向こうは見た瞬間金貨十枚を提案してきましたわ」
「そりゃこの金塊とは質が違ったからだろう」
「いいえ、これも金貨十枚と査定してくれましたわ。そのうえで向こうのお店では一個だけ売ったんです」
嫌ならこれも無効の店で売るぞと圧をかけるククミス。
「っ! 今回だけは特別に十二枚で買ってやるぞ! ウチはあっちの店と違って誠実な商売をしてる証としてな!」
「あら、そうなんですね。ではこのお店で売ることにしますわ」
「まいどー!」
そうしてしれっと次の店に入って交渉額を上げていく俺達。
「隣のお店では金貨十二枚と言っていましたがこちらのお店ではいくらで買い取ってもらえるのかしら?」
「ならとなりで売ればいいじゃねぇか」
しかし今回の店の店主は吊り上げに応じてこなかった。
「明らかにこちらの足元を見る目で見てきましたので、信用が出来なかったんですわ」
「金貨十四枚だな。それ以上はウチも儲けにならんからよそと交渉してくれ」
「……ではそれで」
そして以外にもククミスもそれ以上のつり上げをせず金貨十四枚で交渉に応じた。
「三件目のお店は良かったですね。あのお店の店主は最初から最高金額を提示して値段を変える様子は見られませんでしたわ」
「そういうのって分かるのか?」
「ええ、宮廷の悪辣な貴族達を見てきましたから。人を騙そうとする方、利用しようと心にもない事を口にする方を沢山見てきましたから」
おっと、また闇が溢れて来たぞ。
「……成る程」
「さぁ、次の町では買い物をしつつ鉄を売りましょう。金塊よりは話題にならないでしょうし!」
そうして俺達は今回の遠出で金貨70枚と銀貨17枚を手に入れる事が出来た。
「ただ買い物で大分散財したなぁ」
町を出ての帰り、ゲイルの背中には沢山の荷物が括りつけられていた。
「しかたありません。私達の拠点にはいろいろな物が足りませんから」
「ゲイルの荷物になるから厳選したけどそれでも結構な量になったな」
「ワウ~」
ゲイルが重いとばかりに情けない声を上げる。
正直ゲイルが魔物じゃなかったらこれだけの荷物と俺達を乗せて移動する事は出来なかっただろう。
「悪いな。あとでご褒美を上げるからさ」
「ワウ!」
◆
「ただいまー」
拠点に帰ってくると皆が俺達を出迎えてくれる。
「ジャキ!」
「ノココ!」
「ジュジュー」
「ボウ!」
「ジェル!」
「お土産にお菓子を買って来たぞー」
『ミーッ!』
「ゲイルは頑張ってくれたから特別に二個な」
「ワウッ!」
そう言えば魔物にお菓子を食べさせて大丈夫かと思ったが、まぁ魔物は普通の生き物じゃないし大丈夫だろうと思い直して配る。
「うん美味い!」
「はい、とても!」
久しぶりのお菓子に舌鼓を打つと、ククミスも嬉しそうに同意する。
「庶民のお菓子だけどお姫様でも美味しいんだ」
「ええ、甘い物なんてめったに食べさせてもらえませんでしたから」
やっべ、また地雷踏んじまった。
この娘地雷多すぎなんだよ……
「あれ? 一個余ってるな」
ふと、全員に配った筈のお菓子に余りがある事に気付く。
「「「「「「「ッ!」」」」」」」
瞬間、魔物達の間に緊張が走る。
「駄目ですよ皆さん」
が、それをククミスが制する。
「このお菓子はフォルス様に埋めて頂きます」
「え? ……はっ! まさか!」
コイツ、お菓子の魔物が生まれる事を期待しているのか!?
「期待して、いますね」
「マジか」
「ともあれ、今日の収穫は現金と毛布、着替え二着分に作業用のナイフと桶、それにフライパンと植物の種に魔物素材で出来た盾。あとタオルとクッションに工具をいくつか」
「それにアクセサリですね。平民用の為質もデザインもいまいちですが、一応は宝石が付いているのでこれを埋めればまたイスタちゃんのような宝石を産み出す子が生まれるかもしれません。国内市場を滅茶苦茶に出来ると良いですね」
市場を破壊するのは程々にね。
俺はククミスに頼まれて幾つかの品を地面に埋める。
「着替えも一着埋めておきましょう。服でなくても生地を産み出してくれる魔物が生まれたらこちらも産業になりますから」
「色々考えてるなぁ」
「学になる本を読む事は許されていましたから。どうせ生贄になるのにそんなものを読んでも無駄と嗤われましたが」
この子の過去闇と地雷しかないの?
うーむ、なんだかんだ言って俺ってホント生贄としては恵まれていたんだな。
愛情をもって育てられて、総土下座で墓に謝られてたし。
あの生活と光景を見たこともあって、わだかまりこそあれどククミスほど復讐心に焼かれる事は無かった。
転生前の知識とモラルがある事も大きいだろうな。
だからこそ、王家という色々しがらみややっかみのあるククミスの気持ちを安易に否定してはいけないとも思った。
市場は買いは程々にしてほしいが、彼女の知識は間違いなく役に立ってるしな。
「本当はベッドや椅子も欲しかったのですが」
「流石に重すぎるからな。自分達で作れそうなものは自力でなんとかするしかない」
俺達だけじゃ無理だけど、魔物達に頼めば簡単な家具なら作れるだろう。
いや待てよ、ワンチャン買ってきた工具を埋めれば工作の得意な魔物が生まれるんじゃないか?。
「よーし、皆も快適な暮らしをする為に協力してくれ!」
『ミーッ!!』
さぁ。次は拠点の大改造だ!
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