第10話 復讐したいお姫様
「そんな馬鹿な!!」
聖域へと帰って来た俺は、ウッキウキでお帰りなさい。ご飯?お風呂?それとも復讐?のノリで復讐を勧めて来たククミスに実家で見た一部始終を説明した。
そして彼女の第一声がこれだったのだ。
「ありえません! 魔力無しに対してそんな暖かさに満ちた思いを抱くなんて! 生贄に対しそんな罪悪感を抱くなんて! しかも肉親だけでなく家臣まで!? ありえませーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっっっっ!!」
相当王宮での生活が苦痛だったのだろう。
ククミスは凄まじいまでの怨念を感じさせる表情でダンダンと地面を叩き始める。
「そうです! ありえません! きっと演技です! フォルス様は騙されているんです! 領民受けする演技に決まっています!」
「ククミス!」
流石にそれは聞き捨てならないと俺が声を荒げるとククミスがビクリと身を震わせる。
「俺の家族の事を酷く言うのはやめてくれ」
「…………すみません、言い過ぎました」
流石に言葉が過ぎたと思ったのか、ククミスは謝罪の言葉を口にする。
けれど肩はプルプルと震えて、納得は出来ないでいるようだった。
「……分かりました」
良かった、とりあえずは受け入れてくれたみたいだ。
「きっとフォルス様のご家族が特別だったんです! ですから王家に復讐しましょう! あとお母様の実家も!」
あ、うん。納得は本当にしてなかったみたいだ。
そうとう王宮での暮らしに不満があったんだろうなぁ。
「私達を犠牲にして罪悪感も抱かずのうのうとしている王家は滅びるべきなんです! 魔物が人を滅ぼそうとしているのならそれが自然の摂理なんです! それを歪めるなんて間違っています!」
なんかゲームの人間こそが悪なんだって主張するラスボスみたいな事言い出した。
「滅ぼしましょう人類!」
スケールデカいなぁ。
正直ちょっと面白くなってしまった。
案外俺も他人のとの会話に飢えていたのかもしれない。
ダンテ達は俺の言葉を理解してくれるけど会話は出来なかったからなぁ。
意思疎通できる相手がいるってのは嬉しいものなのかもしれない。
「復讐したいんですーーーっ!」
あとまぁ、これだけ過激な奴が傍にいるとこっちも冷静になれるしな。
「ミッ!!」
「ガウ!」
が、そんなククミスに対し、ダンテ達が声を上げた。
「ボウ!」
「ジュッ!」
「ひっ!?」
更にカグツチの火炎放射とフィトンの木の根が彼女の頬を霞める。
「ミミミミミッ!」
それはまるで俺を巻き込むなと怒っているようだった。
「あー、ダンテ達も過激な事を唆すなってさ」
「……そんな、私はただ自分がされてきた事をやり返したいだけなのに」
流石にダンテ達に叱られて大人しくなったククミスだったが、一度噴出した鬱憤はなかなか沈静化できないみたいだ。
家族に愛された俺には想像もできないような目に遭ったのかもしれない。
そう考えると目の前のククミスの姿は俺がなっていた姿なのかもしれないな。
「あー、気持ちはわかるけどさ、どのみち無理だよ。俺の仲間はコイツ等しかいないんだ。王家に喧嘩を売るにしたって戦力が足りなさすぎるよ」
「では増やしましょう! どうやって増やすんですか!?」
「え? あー増やす方法は……」
一瞬ククミスには言わない方が良いんじゃないかと思ったが、生活をよくする為には今後も魔物を増やす必要があるし、いずれは魔物誕生の瞬間を見られるだろうからどのみち時間の問題かな。
あとムラサメやカグツチの件もあるから、うっかり地面に突き刺したモノから魔物が生まれる事もありえる。
だからさっさと教えちゃった方が良いだろう。
「俺が魔物を増やす方法は……」
「……嘘でしょう?」
地面に魔物の死体や物を埋めると新しい魔物が生まれてくると教えると、ありえないと疑い9割で聞き返してくるククミス。
まぁ、うん、冷静に考えるとそうだよね。
「でも事実だから」
「……ではこのペンダントを埋めたら宝石に関する魔物が生まれるのでしょうか?」
そう言ってククミスは首から下げていたペンダントを外す。
「私、こんな豪華な品を身に付けた事は生まれて初めてだったんです。今まではどうせ生贄になるのだからと、無能の魔力無しを表に出す訳にはいかないと質素な衣装ばかりだったんです。このドレスだってそう。生贄として送られる際に人に見られて王家が恥をかかないようにと着せられたんです! 人生初のドレスをです!」
「それは……」
「本当はこのドレスも埋めて欲しいんですが、流石に着るものが無くなってしまいますので、これを埋めて頂けますか?」
「……分かった」
静かな狂気というのか、その眼に宿った憎しみの炎に気圧されて俺は豪勢な宝石のつけられたネックレスを地面に埋める。
「あとは明日になれば魔物が生まれてくる……と思う」
「……楽しみ、ですね」
◆
翌朝、それは生まれた。
「ジェルジェルーッ!」
土の中から這い出て来たのは、全身が宝石で出来た魔物だった。
「こりゃまた凄いのが出て来たなぁ」
ゲームなら倒したら凄いお金がゲットできそう。もしくはレアアイテム。
「本当に魔物が……ネックレスも無い」
ククミスは魔物が出て来た穴を見て、昨夜埋めた筈のネックレスが無い事を確認する。
「宝石の魔物か。名前はどうするかな」
うーん、宝石が関係する名前って普通にダイヤとかサファイヤとかしか出てこないなぁ。
いっそ宝石関係のお店の名前……いやそれは良くない気がする。
なら美の女神の名前とかにするか? ビーナスとか。それはそれで名前負け……橋そうにないな。全身宝石だし。
「んじゃイスタでどうだ?」
元ネタはバビロニア神話に出て来る女神イシュタルだ。
「ジェルジェル!!」
幸いにも名前を気に入ってくれたようで、イスタは喜びの声を上げる。
「それでこの子には何が出来るんですか!?」
名づけが終わるのを見計らったかのようにククミスがイスタの能力を訪ねてくる。
「あー、何が出来るんだろうな? イスタ、お前って何が出来るんだ?」
宝石の魔物って言われても能力のイメージなんて出来ないよな。
「ジェルジェル!」
するとイスタはトテトテと体を動かしてお尻をこっちに向ける。
そして何かを堪えるように声を震わせると……
「プリプリ」
ウンチを出した。
「ってウンチかよ!!」
何で特技を聞いたらウンチが出てくるんだよ!
「……」
ほら、ククミスも呆れてものが言えなくなってるじゃないか!
「フォルス様……」
「あ、いやイスタも悪気があった訳じゃないと思うんだ。多分」
一体どうフォローすればよいのかと俺は必死で何かいい宥め方が無いかと考える。
「凄いですよ。この子の排泄物」
「そ、そうだよな……って、え?」
ウンチが? 凄い?
何言ってるんだコイツは。
「見てくださいフォルス様、この子の排泄物は金塊です!!」
「ああ、うん。金塊だろうね。ウンコなんだから……」
事実、イスタのウンチはキラキラと黄金色に輝いていた、ってあれ? 黄金色?
しかも石みたいに硬そうな見た目をしている。 これってどう見ても……
「って、金だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
なんという事だろう、イスタのウンチは金で出来ていたのだった。
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