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Love letter (Winter story)

作者: shonansurf2003
掲載日:2025/12/20

今日も つまらない1日を過ごしていた

自分から積極的に友達は作らないから 仕事終わりに

みんなで遊んだり飲みに行くことなんてほとんどない

ただ 会社と家を往復するだけの毎日...

やり過ごすだけの日常は 目立つことは好きじゃない自分にとっては そこそこ居心地が良いし好都合なんだけど

それと相反して いつもどこかあきらめに近い虚しさを

自分自身に感じていた...

ただ そんな私にもささやかな楽しみがあった

家で焼酎を飲みながら 5チャンネルやまとめサイトに書かれている 下世話なゴシップ話を読むことや SNSで知らない人とのたわいのないやりとりだ リアルに繋がることがない人たちと過ごすこの世界は 私を現実から逃避させ 私を癒してくれる 唯一の空間だった...

こうした変化のない生活を続けている中で 以前からSNSを通じて1人だけずっと私を気にかけてくれる人がいた 

湘南に住んでいて 趣味はサーフィン インスタに載せている写真はめっちゃイケメンで正直私好み 七里ヶ浜とかでサーフィンをしている写真を良くupしていた

仮想の片思いの相手としては最高だったけど

実際には私を相手にするはずなんてない

そんなふうに どこか冷めた目で自分自身を見ていた...

ところが 冷めた感情で私自身を見ていた私に

全く予想もしていなかったことが起こってしまった...

なんと 彼が海で会わないかと私を誘って来たのだ!

ドキドキしていた... お父さんなら

『背景 じゅんこちゃん 僕は ドキドキしていた..』

なんて 似ても似つかないものまねをしていそうな

まさにそんな瞬間が私にやってきたのだ!

リアルなのかバーチャルなのか

なんだかよく分からなくなってしまった

そんなフワフワした感情の中で 私は思い切って

彼と会うことを了解した 


そして どうせ会うならと さらなる一大決心をする


『彼に 告白する...』


でも 人見知りで付き合い下手な私には

自分の想いをどう伝えたら良いのかわかならない

SNSじゃ軽すぎるし 面と向かって好きです

なんて 絶対に言えない


悩んだ挙句 原始的であるが


『手紙』


という手段を思いつく


そうだ 帰り際に手紙を渡そう

それなら わたしにも出来るかも知れない

そう思い立った私は 家で自分の想いを手紙に綴る

何度も何度も書き直してやっと一つの手紙が完成した


これは私にとって初めての


『Love Letter 』なのだ...

.

.

.

ついに この日がやってきた...

いや 今の私には やってきてしまった

というのが正しい表現なのかも知れない

私はこの日の為に 急遽ダイエットを敢行し

3日間で5kg体重を減らしたのだ!

身体はふらふらで 真冬の風が身体にしみる...

舞い上がった感覚と ふらふらとの相乗効果で

ほぼ思考停止の状態ながら

私は江ノ電の藤沢駅に到着した 

携帯を見たって 頭の中に画面の中の文字情報は

一切入って来なかった 

ただただ あの手紙を渡すことだけが

今の私を支配していた...


カタンカタン...江ノ電は ゆっくりと

鵠沼の街を走り抜けてゆく

どこか 懐かしく温かな雰囲気が

優しく私を包み込んでくれるような気がした

もう少し 自分の気持ちを落ち着ける為

私は腰越の商店街を抜けた駅で降りて

冷たい真冬の風に身体を晒した

自分の気持ちと一緒に 落ち着いて行く私

生きている そんな実感をしみじみと感じていた...


腰越から江ノ電に乗るとすぐ

車の渋滞の先に広がる海が見えた

ここが 彼がよく通っている海なんだ

そう思うと またドキドキし始めた

自分でも恥ずかしいくらい

顔がこわばっているのがよくわかる

再び自分自身を落ち着かせるため

七里ヶ浜駅で降りる予定を急遽

鎌倉高校前駅で降りることにした 

駅に降り立つと 目の前にきらきらと

輝く海が広がっていて

緊張のドキドキから 期待へのワクワクへと

私を導いてくれた


柔らかな日差しの中

ゆっくりと江ノ電が走ってゆく

キラキラと輝く七里ヶ浜の海がとても美しい

この場所はとても素敵なんだって

私自身 実感できた気がする...

いま 根拠もなく

凄く幸せな気持ちになってる...


海を見ると 真冬の海風が冷たい中でも

サーファー達は海に入っている

私の頬にも その冷たい海風があたっているはずなのに

不思議と その冷たさは感じていない...

歩いてしばらくすると 待ち合わせの駐車場に着いた...

待ち合わせの時間までは まだ 30分もある...


ドキドキしながらあれやこれやと

妄想をふくらませていた...


『最初になんて言おう?』

『どんな話が盛り上がるかな?』

『サーフィンは全然わからないし 芸能人ネタなんて

 嫌われるかな?』

『手紙は どんな顔して渡せばいい?』


そうしているうちに 約束の時間を迎えた...


まだ 彼はこない...


DMを送ってみる...


いつもはすぐに既読になるDMも

今日は いつまでも 既読にはならない...


でも私は...ずっと待ち続けたんだ...

笑顔で 彼が 会いに来ることを...


それでも なんとなくはわかっていた...


うす暗くなり始めた冬の七里ヶ浜の海風が

身体の中を吹き抜けていった...


私はふらふらと鎌倉方面へと歩いていった...

手紙はどこかのコンビニで捨てようと思ったんだけど

まるで自分自身を捨ててしまうような気がして

ずっと 握りしめたままでいた...


どのくらい歩いただろう?ふとみると

どこかの駅前に 赤い郵便ポストがあるのに気がつく...

私は彼の名前と番地まではわからない住所を書いて

切手を貼り 届かない手紙をポストした...


駅からゆっくりと江ノ電が出発して行く

私は横目にそれをみながら

この場所を離れていった...


家に戻ると 急な仕事でいけなくなったという

彼からの謝罪メールが届いていた


『実は行かなかったんだ私 

 あなたが本当に来るか試してみたかったの』


そう返信して 電源を落とした...

...

..

.

しばらくして私は冷静に

今日の出来事について考えていた

現実逃避を望んだSNSで繋がる世界

でも結局は 人と人とが繋がる現実の世界

相手の意図があってもなくても

今回のようにいやなことは起きる

それって結局 私の日常と何も変わらないんだ

SNSの先には理想の世界がある 

そう 思い込んでただけなんだ...

そう思った私は

つまならい日常について思い返していた

職場で毎日必ず話しかけてくる秋元君

くだらなくて本当にいやだった

でも私には 毎日誰かに話しかけるなんて出来ない...

帰り道の八百屋のおじさん

相変わらずべっぴんさんだねー なんて

白々しく話しかけるのを軽蔑していた

でも いつも笑顔で挨拶してくれる

私にはできない...

私には出来ないことを

つまらないの一言で片付けていた私...

私は つまらないという色のフィルターを通して

現実を見続けていたんだ...


あれから私は 少しづつ

目の前の現実に向き合うようになっていった...

くだらない話をする秋元君

どうしてそんな話しをするのって聞いたら

職場の雰囲気を明るくしたいから

毎日わざわざ考えてくるって...

八百屋のおじさん

いつも挨拶してくれありがとうっていったら

毎日切羽詰まった顔で心配だったから

ずっと様子を見ていたんだって...


私のフィルターが 少しづつ解かれていった...


そんなある日 一枚の手紙が届いた...

届くはずがない 彼からの手紙だった...

宛先がなく返送されると思い

裏に私の住所を書いていたLove Letter

でも 私には届かなかった

つまり 彼に Love Letter は届いていたのだった...

....

一夏さんへ

この間は本当にごめんなさい。

嫌われても、返事がなくても構いません。

どうしても伝えたいことがあり、

手紙を書くことにしました。

あの時僕は、仕事で行けなかったって言ったけど、

本当は、行かなかったんだ。

僕は、君が言っていたような、

カッコよくて華やかな生活なんてしていない。

ボロボロのアパートで、カップ麺を食べながら、

アルバイトで繋ぐ毎日。いつも同じ服を着て、

金がないからただ海を見てるだけの生活。

イケメンなんかじゃないし、

女の子なんて、誰も寄ってきたりしない。

そんな、みすぼらしい自分の姿を、

君には見られたくなかったからです。

でも...君からの手紙がアパートに届きました。

ちょっと驚きながらも封を開けて、

何度も書き直したであろう文章を読みながら、

ふと、左側に、ほんの少しだけついた、

君の左手の痕を見た時、

自然に涙が溢れ出てきました。

偽る自分に対して、

こんなにも想い、

考えてくれていたのかと..

自分自身への罪悪感と、現実の寂しさが混じり、

狭いアパートの隅で、ただただ、泣き続けました。

お願いがあります。

嫌いなままで構いません。

もう一度だけ、僕と会ってくれませんか?

僕の、みすぼらしい本当の姿を、

君に見て欲しい。

そうしなければ、僕は一生、

ここから前に進めません。

一度きりで構いません、

どうか、お願いします。

.

..

...

...なんだ...

...そうだったんだ...

....彼も 私と同じだったんだ...

...

..

.

これから先は どうなるかはわからない

でも私は もう一度彼に会いに行くことにした

そして しっかりと 彼という人と向き合い

私の考えを 偽りなく話そうと思う

そしていつか また 手紙を書こう...

手紙の相手は彼かどうか今の私にはわからない

でも 今度はしっかりと現実に向かい

偽りなく自分の思いを伝えたい

そしてそれが出来たなら...

そこから 私にとっての 本当の


『Love Letter 』


が 書ける気がする...


私は 現実の世界で生きている...


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