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神の嘲笑と、健太の絶望の深淵

太郎は最終局面で世界の根源的な真実を知る。彼が下す究極の選択が、全ての運命を握る。

健太一行は、神々からの追手を退けながら、旅を続けた。彼らは、アストラルム各地に点在する**「神の遺物」や「古の遺跡」**を巡り、神々が隠匿してきたとされる知識や力を手に入れていく。それは、神の領域への道を示唆する古文書だったり、あるいは神の力を一時的に封じるための秘宝だったりする。彼らが進む道の先には、常に神の使者や、信仰に厚い者たちが立ちはだかった。

例えば、火山の噴火口近くにある「炎の試練場」と呼ばれる遺跡では、灼熱のゴーレムが守る炎の神の聖杯を探し出した。通常では近づくことすら叶わないその場所で、健太は熱波に倒れ込み、苦しげな吐息を漏らす。その姿を見たガストンは、自身の身体能力を極限まで高め、火炎をもろともせずゴーレムに突進。彼の剣は、炎の精霊を宿したかのように赤く輝き、ゴーレムを一撃で砕き割った。リリアは、健太の熱中症を癒やすため、自身の魔力を犠牲にして周囲の熱を吸収する魔法陣を展開し、その過程で、彼女の持つ水の魔法が、凍てつくほどの絶対零度の力へと覚醒した。

また、深く静かな湖の底に沈む「水の神殿」では、神殿の守護者であるリヴァイアサンと対峙した。健太は、深い水中で酸素が薄れ、意識が朦朧とする中で、水面に浮かぶリリアに助けを求めるように手を伸ばす。リリアは健太を守るため、湖の水を操り、リヴァイアサンを凍結させた。その時、彼女の魔力は湖の底から世界樹の根にまで達し、水の精霊たちが彼女の魔法に呼応するように集まってきた。リアムは、健太が溺れそうになる姿を見て、慈愛の加護を自らへの物理的な強化に転用し、水中で驚異的な速さで動き回り、健太を救い出した。彼の聖剣は水中でまばゆい光を放ち、リヴァイアサンの氷を砕き、その核を破壊した。

これらの「試練」を乗り越えるたび、健太の仲間たちは文字通り「神がかり的」な力を手に入れていった。それは、彼らが元々持っていた加護の限界を遥かに超え、時に神話に語られる英雄すら凌駕するほどだった。彼らは健太を「神に選ばれし者」と呼び、健太のために命を捧げることを喜び、その瞳の奥には、もはや理性すら見えないほどの狂信的な光が宿っていた。

しかし、この異質な力の覚醒は、神々にも感知され始めた。特に、世界の根源的なバランスを司る「至高の神」は、健太の存在が世界の法則を歪める「異物」であると認識し始めていた。彼らは直接姿を現さないまでも、主神や眷属神、そして信仰心の厚い民衆を動かし、健太たちの行く手を阻もうとする。

各地の神殿は、健太を**「邪悪な魔力を操る異端者」**として、正式に討伐令を出した。最高位の聖騎士団、神殿魔導師団に加え、エルフの精鋭部隊、ドワーフの決死隊、そして獣人部族の戦士たちまでもが、健太とその仲間たちを追撃し始めた。

「あの異端者たちは、神の秩序を乱す存在だ!世界樹の力を汚している!討伐せよ!」

「あの男は、邪悪な力で人々を惑わしている!聖なる裁きを下せ!彼の瞳は、人々を狂わせる悪魔の瞳だ!」

彼らは、最高位の聖騎士団や、神殿魔導師団を差し向け、健太を捕らえようとする。聖騎士団は、主神から直接的な加護を受けた者たちで構成され、その連携は鉄壁だった。彼らの繰り出す聖なる光の剣や、防御魔法は、健太の『最弱化』スキルでも完全に無効化できないほど強大だった。神殿魔導師団は、高位魔法を操り、広範囲を制圧する力を持っていた。

エルフの隠れ里からは、健太の存在が世界樹の均衡を崩すとして、精霊術師たちが派遣された。エルフの精霊術師は、森の精霊との絆を深め、自然の力を借りて戦う。彼らは通常の物理攻撃では傷つけられない存在であり、森の中では絶大な力を誇った。彼らの繰り出す茨の壁や、嵐の刃は、健太たちを確実に捉えようとした。

ドワーフの鉱山都市からは、神々への信仰心篤い戦士たちが、彼を捕獲しに来る。彼らは堅牢なドワーフ製の鎧をまとい、大斧や大槌を操り、その一撃は大地を揺るがすほどだった。彼らの連携と強固な防御は、健太の仲間たちを苦しめた。

健太は、これらもまた「神の試練」であり、彼らを打ち破ることが神への道だと、狂信者たちをさらに煽り立てる。彼らは、健太のために神の使者とすら戦うことを喜び、そのたびにその力を増していく。健太の計画は、彼の予想以上に順調に進んでいた。彼が憎む神々は、皮肉にも、自らの破滅へと繋がる力を、健太とその仲間たちに与え続けているのだ。健太の心には、彼らの献身に対する罪悪感は微塵もなかった。ただ、彼らの覚醒が、神への復讐の糧となることを確信するのみだった。

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