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光と闇に彩られし世界「アストラルム」

異世界アストラルムに転生した健太。最強のチート能力を期待した彼を待ち受けていたのは、、、、

次に目覚めた時、健太は硬い土の上に横たわっていた。視界に飛び込んできたのは、高くそびえる見慣れない木々。澄んだ空気と、鳥のさえずり。紛れもない、剣と魔法の異世界だ。ゆっくりと体を起こし、周囲を見回す。森の中だ。


この世界は「アストラルム」と呼ばれていた。はるか昔、創世の神々が混沌から世界を創造し、生命を吹き込んだという神話が語り継がれている。天高くそびえる巨木「世界樹」が魔力の源となり、その恩恵は人間、エルフ、ドワーフ、獣人など、様々な種族に分け与えられている。アストラルムの住人たちは、生まれながらにして何らかの「加護」、すなわち能力の片鱗や素養を授かっており、それらを鍛えることで「スキル」として開花させていく。魔法は四大元素(火、水、土、風)を基本とし、それらを複合させることで様々な現象を引き起こす、複雑かつ奥深い体系を持つ。


「よし、これが俺の新しい人生だ!」


高鳴る鼓動を抑えきれずに、健太は試しに何かスキルを使ってみようと集中した。だが、何も起こらない。何度試しても、魔力らしきものが湧いてくる気配すらない。焦り始めた健太の目の前に、半透明の光の板がフワリと現れた。そこには、彼のステータスが記されているようだ。


「な、なんだこれ…『最弱化』…だと? しかも、自分も最弱になるってどういうことだよ!?」


健太は目を見開いた。チートどころか、自分を最弱にする呪いのスキルだ。さらに「隠しスキル:???」? 冗談じゃない。まさに神から与えられたのは「最弱」という、あまりにも不条理な能力だったのだ。彼のステータスは全てE(最弱)。それはつまり、異世界のゴブリンやスライムにすら勝てない、文字通りの最弱な存在だということだ。


その日からの健太の人生は、前世の「そこそこ」どころではなかった。生きるためだけに、ひたすら藻掻き続ける日々が始まった。魔物からは常に狙われ、餓えと乾きで常に意識が朦朧とする。小さなトカゲ一匹を捕まえることすら命がけだった。雨風をしのぐ場所を探すだけでも一苦労。前世では当たり前だった「安全」や「食料」「清潔な水」が、ここでは死活問題として健太の喉元に突きつけられた。


健太は、自分自身では何もできないという現実を突きつけられた。森での数週間の飢餓と恐怖は、彼から前世の甘えを完全に消し去った。しかし、それでも彼はあきらめきれなかった。転生したからには、自分も誰かに認められたい、自らの力で生きていきたいという、前世では漠然としていた願望が、この極限の状況で強く沸き上がってきたのだ。


彼は、自身の『デバフ:最弱化』スキルが、使い方によっては敵を弱める**「支援スキル」**として使えるのではないかと考えた。魔物の少ない森の入り口付近で、来る日も来る日も素振りや基礎的な魔力操作の練習を続けた。わずかな魔力で『最弱化』を発動させ、草木の成長を遅らせたり、小石を軽くするような訓練だ。しかし、彼の魔力はあまりにも少なく、少しスキルを発動させるだけで全身の力が抜け、数時間は動けなくなってしまう。まるで、自分の命を削ってスキルを使っているかのようだった。


彼は、体力の回復が極端に遅く、少しの怪我でも治るまでに時間がかかり、常に飢えと疲労に苛まれることを痛感した。それは、彼の最弱たるゆえんだった。体の節々は常に軋み、少しの運動でも息が切れ、皮膚は乾燥してひび割れていた。彼は、小さな木の枝を振り回すだけでも息が上がり、魔力を込める練習をすれば、たちまち意識が遠のく。彼の修行は、まるで砂漠に水を撒くような、虚しい努力の繰り返しだった。そして、何度練習しても、彼の筋力や魔力のステータスが微動だにしないことに、健太は絶望を深めていった。まるで、彼の存在そのものが、この世界の「最弱」を体現しているかのように、どんな努力も彼のステータスには反映されなかった。


この世界では、人々は幼い頃から「加護の儀」を受け、自身がどの神の恩恵を受け、いかなる属性や才能を持つかを知る。加護は通常、その者の天性や努力に応じて強まっていくものとされ、社会的な地位や役割にも大きく影響する。神殿が主催するこの儀式は、その者の人生の方向性を定める、重要な通過儀礼だった。健太は転生者ゆえに儀式を受けていないが、与えられたスキルがこれだ。きっと自分は、神から特別な「試練」を与えられたに違いない。この困難を乗り越えれば、きっと本当のチートスキルが開花し、彼の努力が報われるはずだ。そう信じていた。彼は、この世界の理不尽さを、まだ神の慈悲という名の「試練」だと、都合の良い解釈をしていた。この希望だけが、彼の唯一の生きがいだった。

名前:田中 健太種族:人間年齢:32歳(転生時)


筋力:E(最弱)耐久:E(最弱)俊敏:E(最弱)魔力:E(最弱)幸運:E(最弱)


スキル:『デバフ:最弱化ぜんゆる

効果:対象のあらゆる能力(筋力、耐久、俊敏、魔力、幸運など)を、その種の最下限まで引き下げる。

備考:このスキルは、術者の魔力を常に吸い尽くし、自身の能力も同時に最下限まで引き下げる。持続は非常に短く、使用には膨大な魔力を要する。


『隠しスキル:???』 効果:現在不明 備考:特定の条件を満たすことで発現する可能性を秘めている。

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