ドワーフの嘆きと、大地の死
遺産が眠る試練の洞窟に挑む太郎たち。複雑な仕掛けと強力な守護者が彼らを阻む。彼らは知恵と勇気を振り絞り、困難を乗り越える。
次に健太とエリシアが向かったのは、ドワーフの地下都市だった。彼らは、かつて神々への信仰心篤い戦士たちが、彼を捕らえに来たことを覚えていた。しかし、そこに広がっていたのは、さらに悲惨な光景だった。
地下都市の入り口は、巨大な岩石によって塞がれ、都市の奥からは断続的に崩落の音が聞こえてきた。大地が神の消滅によって不安定になったのだ。ドワーフの鉱山は崩れ、採掘は不可能となっていた。彼らの誇りである鍛冶技術も、魔法金属が採れなくなったことで衰退し、彼らの生み出す武器や防具は、もはや普通の鉄製品と変わらないものとなっていた。
健太たちは、辛うじて開いていた小さな通路から地下へと潜り込んだ。そこで彼らが見たのは、かつての頑健な姿は見る影もなく、痩せ細り、その屈強な体に深い絶望を宿したドワーフたちの姿だった。彼らは、崩落した鉱山の中で、それでもわずかに残された鉱石を掘り出そうと必死にもがいていた。
ドワーフの長老が、健太たちに気づいた。彼は健太の顔を見ると、憎しみと悲しみが入り混じった目で睨みつけた。
「貴様…!神を殺した異端者め!貴様が、我々から大地と鍛冶の恵みを奪ったのだ!」
長老は健太に襲い掛かろうとするが、その体はもはや力尽き、その場に崩れ落ちた。健太は、ドワーフたちの怒りと絶望を真正面から受け止めた。彼は、この世界を破壊した張本人なのだ。彼らの信仰心と誇りを奪い、彼らの生きる意味さえも奪った。
エリシアは、そんなドワーフたちを前にして、健太のために怒りに震えた。
「違います!健太様は、神の呪縛から我々を解放してくださったのです!この悲劇は、神が残した最後の悪意なのです!」
だが、健太はエリシアの言葉を否定しなかった。彼は、ただ、彼らを絶望に陥れた自身の罪を、静かに受け止めていた。