エルフの嘆きと、世界樹の死
歴史の断片から、彼らは古代の遺産の存在を知る。それは、異変を止めるための鍵となる可能性を秘めていた。彼らは遺産を求めて、危険な地へ向かう。
健太とエリシアは、食料を求めてエルフの森の入り口へとたどり着いた。しかし、そこには、かつての美しさはなかった。世界樹の枝葉は黒く変色し、その根元からは腐敗したような異臭が漂っていた。森の精霊たちは姿を消し、代わりに不気味な瘴気が立ち込めていた。
森の奥から、悲痛な歌声が聞こえてきた。それは、エルフたちの嘆きの歌だった。健太はエリシアと共に森の奥へと進む。そこで彼らが見たのは、痩せ細り、その優雅な容姿が崩れ始めたエルフたちの姿だった。彼らの長命の特性は失われ、病に倒れ、次々と命を落としていた。
健太の前に現れたのは、かつてフィーネがいたはずの、世界樹の最も根深い場所だった。しかし、そこにフィーネの姿はなく、世界樹の幹には巨大な亀裂が走り、そこから黒い液体が流れ出していた。
「健太様…!これが、神の仕業なのです…!世界樹まで…!」
エリシアはそう叫び、世界樹に手を伸ばそうとするが、健太はそれを制した。健太は知っていた。これは神の仕業ではない。彼が神を殺したことで、世界の根源たる世界樹との繋がりが断たれたのだ。エルフたちは、その事実を認めようとせず、神の残した呪いだと信じ込んでいる。その信仰心こそが、彼らが正気を保つ最後の手段だった。
健太は、エルフたちの絶望的な状況を目の当たりにし、さらなる罪悪感に苛まれた。彼は、エルフたちの輝きを奪い、彼らの寿命を縮めた張本人なのだ。