神なき世界、そして残された虚無
太郎たちの前に、世界の異変が立ち塞がる。かつての平和が失われ、不穏な影が忍び寄る。彼らはその原因を探るため、調査を開始する。
神がいなくなった世界で、健太は一人、残された。憎むべき対象が消え去った彼の心に、達成感や喜びはなかった。ただ、深い虚無感と、彼のために死んでいった者たちの顔が浮かび上がる。
数日後、健太は朦朧とした意識の中で、神殿の瓦礫の中に倒れていた。彼の命は、風前の灯火だった。彼の体は、もはや「最弱」のステータスすら維持できないほど衰弱していた。そんな彼を見つけたのは、奇跡的に生き残っていた、彼の狂信者たちのうちの一人、老齢の聖女、エリシアだった。彼女は健太に狂信的なまでの忠誠を誓い、あらゆる困難を乗り越えて健太に付き従ってきた、数少ない生存者だった。
エリシアは健太を抱きかかえ、その目には涙が溢れていた。
「ああ、健太様…!健太様…!神を討ち滅ぼし、我々を、世界を解放してくださいました…!これで、世界は、健太様の世界となるのです…!」
エリシアは、最後の魔力を振り絞り、健太に治癒魔法を施した。その治癒魔法は、かつてリアムが健太のために使った魔法と同様に、健太への狂信的な献身によって、本来の治癒能力を遥かに超えた力を発揮した。健太の体は、ゆっくりとではあるが、回復に向かっていった。
しかし、健太の心は満たされない。虚無感が彼を支配していた。彼のために死んでいった者たちは、本当に、自分の意思で命を捧げたのだろうか? それとも、健太の「魅了」によって、強制された献身だったのだろうか? 健太は、エリシアの瞳に見える狂信的な光を見て、ぞっとした。彼女もまた、健太の「魅了」の犠牲者だったのだ。彼は、神を殺したことで、自分自身もまた、神と同じような存在になってしまったのではないかと感じていた。




