表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/63

第57話 森の主

「博さん! 博さんはいませんか!」


 豪遊をした翌日。朝飯を食べていると、ノエルの家のドアがそんな言葉と共に強く叩かれた。


「あれ? この声聞き覚えがあるな」


「エイラさんだろ。ほら、前にうちにも来たじゃんか」


 ノエルはそう言ってから何でもないようにパンをかじる。


 以前、グラムが日本酒を持ってきてくれたときに、鍋をご馳走したことがあった。そのことをエイラが後から聞いたらしく、ぜひ食べさせて欲しいと言われて料理をご馳走したことがあった。


「博さん! いらっしゃいませんか⁉」


「はいはい、今出ますよ」


 俺は朝ご飯を食べるのを中断して、強く叩かれていた扉を開けにいった。すると、そこにはやけに緊迫した表情をしているエイラの姿があった。


「エイラさん。朝からどうしたんですか?」


「森に主が出たという報告がありましてっ、今街の冒険者たちを集めている所なんですっ」


「森の主?」


 俺が初めて聞く言葉に首を傾げると、ノエルがガタッと椅子から立ち上がって目を見開いた。


 それから、ノエルは慌ててこちらに走ってくると、前のめりになって口を開く。


「森の主って、ゴアキリンってのことだよな?」


「ゴアキリン?」


「そっか。おっさんはここにきてそんなに経ってないし、知らないか」


 ノエルはそう言ってから、ゴアキリンという魔物について教えてくれた。


 昔から、この街の近くの森では森に悪影響を及ぼしたりすると、森の主のゴアキリンという魔物が現れるらしい。


 ゴアキリンは森の怒りが形となって現れる魔物らしく、シカや馬に似ているとのこと。そして、その怒りが収まるまで色んなものを巻き混んでひたすら暴れるらしい。


 昔、街を発展させようとし過ぎた際、ゴアキリンの怒りに触れて冒険者が数人がかりで何とか倒すことに成功したらしい。


 その後、いたずらに森を開拓しようとすることを失くすことで、しばらくの間はゴアキリンが現れなくなった。


 そして、ゴアキリンを倒した冒険者は、他の冒険者から尊敬の眼差しで見られるようになったとか。


 まさか、近くの森にそんな魔物が出る場所だったとは思わなかったな。


「ノエル、俺たちが風呂とか作ったりしてたけど大丈夫なのか?」


「あのくらいで森の怒りに触れたりはしないって。悪意があって森を汚したりとか、地形が大きく変わるくらい伐採しなければ問題ないって」


 ノエルが手を横にブンブンと振ったのを見て、俺は胸をなでおろす。


 すると、エイラさんが俺をじっと見ながら口を開いた。


「このままだとこの街も危険ですので、有力な冒険者の方に討伐をお願いしている所でして、博さんにもお願いできないかと思ってきました」


「え、俺ですか?」


「はい! ハイリザードや、ジャイアントビーの巣の駆除も簡単にこなした博さんなら、ゴアキリンにも後れを取らないのではないかと思いまして!」


 まっすぐ期待するような目を向けられて、俺は頬を掻く。


 そこまで期待してもらえるのは嬉しいけど、俺まだほとんど初心者冒険者なんだけどな。


 しかし、困っている若者に頼まれてしまった以上、おっさんとして無視をすることなどできるはずがない。


「……分かりました。とりあえず、冒険者ギルドに向かいましょう」


 俺はそう言って、ノエルと共に冒険者ギルドに向かうことになったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ