第47話 鉱石の山
それから、俺はスキル『おっさん』を使って洞窟の中を進んでいった。時折、洞窟の岩壁を削ったり、魔物と戦闘をしたりして進んでいくと、徐々に鉱石がちらほらと見え始めてきた。
「すげぇな、おっさん。全然迷ったりしないんだな。本当に一発で鉱石がある場所を当てるんだから」
「おっさん採掘家には感謝しないとな」
そうはいっても、これだけ迷わずに目的の鉱石がる場所に案内してくれるって、普通の採掘家じゃないことは確かだよな。
おっさん採掘家なんて言ってはいるが、これだけの知識があるってどこかえらい所の教授とかなんじゃないだろうか?
普通なら得ることのできない知識がスキルで手に入るって、普通じゃないよな。
そんなことを考えながら、おっさん採掘家の力を使って進んでいくと、突然行き止まりになってしまった。
あれ? おっさん採掘家が道を間違えたのか?
俺は眉をひそめて行き止まりを見つめていると、おっさん採掘家の力によって自然と顔を上に向けられた。
すると、行き止まりだと思った岩壁の上の方に微かにスペースが空いているのが分かった。うつ伏せになれば大人が一人やっと通れるくらいの小さな穴だ。
「おっさん、どうする? 引き返すか?」
「いや、その必要はないみたいだ。あそこを通っていけばいいらしい」
ノエルは俺がじっと俺が指さした穴を見て、目を見開いた。
「え? あそこ? あんな狭い所通るのか?」
「ああ。どうやら、おっさん採掘家があそこに行けと言っているみたいでな。ノエルは少し待っていてくれ。俺が上ってロープを垂らすから」
俺はそう言いながら、岩壁に手足を掛けて登っていった。
初めは登れるはずがないと思っていた岩壁だが、おっさん採掘家とおっさん探検家の力を使っているせいか、すいすいと岩壁を上ることができた。
「おっさん、こんな岩壁登れんのか! おおっ、めっちゃ速い!」
ノエルの興奮した声を聞きながら、俺は何でもないように岩壁を登っていく。
……採掘家って、結構パワー系の職業だったのか?
俺はそんなことを考えながら岩壁を登っていき、ノエルを一旦下で待たせて、小さい穴の中に体をうつ伏せにして入っていった。
匍匐前進で小さな穴の中を進んでいった先、洞窟の中なのになぜか光が見えてきた。俺が不思議に思いながらその光の方に進んでいくと、徐々に穴の先に広がっている光景が見えてきた。
そこには、神秘的な鍾乳洞のような景色が広がっていた。そして、どこかから入った日の光を浴びて、きらきらと光を反射するたくさんの鉱石の塊がごろごろと落ちている。
「なんだこの鉱石の山は……」
俺はそんな圧倒的な景色を前に、しばらく固まってしまった。
どうやら、ちょっとした鉱石を見つけるつもりが鉱石の山を見つけてしまったらしい。
初めは地味だと思っていたおっさん採掘家のスキル、えぐ過ぎないか?
これ、冒険者ギルドに持っていったら、いくらになるんだ?
俺は広がる鉱石の山を見て、思わずそんなことを考えてしまうのだった。




