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第43話 街の工房

 それから、俺はノエルに案内されて街の工房へと向かった。


「ノエルは鍛冶職人と面識あるのか?」


「うちは会ったことないな。あんまり街に降りてこない人らしいぜ」


「人嫌いって訳じゃなければいいんだが」


 俺はそう言って、持ってきた手土産をちらっと見た。ノエルの話では、


 そんなことを考えていると、徐々に小さな工房が見えてきた。工房はノエルの家とは反対方向にあり、ノルの家以上に街から離れた場所にある小さな工房だった。


 工房の外にはベンチがあり、そこで空を見上げているドワーフの男がいた。


「おっさん。多分、あの人がガロンさんって人じゃないか?」


「みたいだな。俺たちに気づいたみたいだ」


 俺はガロンが視線をこっちに向けてきたので頭を下げてから、ガロンのもとに近づいていった。


 ガロンは長いあごひげを軽く撫でてから、ぴょんっとベンチから飛び降りて俺を見上げた。


「なんだ。初めて見る顔だな」


「初めまして。最近この街で冒険者を始めました、田中博って言います」


 ガロンは顎髭を触りながら、興味深いものを見るように俺の顔を覗き込んできた。


「最近……ほう。それなら、あんたが噂の新人冒険者か」


「噂の?」


 何の噂だろうかと思って首を傾げると、ガロンは口元を緩める。


「ああ。ついこの前、武器屋の奴がうちに武器とかを買い取りに来てな。その時に凄腕の新人のおっさん冒険者がこの街に来たって言っていた。B級冒険者を制圧したり、ハイリザードを瞬殺したりと大活躍みたいじゃないか」


「大活躍ってほどでもないですけどね」


 俺はそう言ったのだが、ただ謙遜しているかのような言葉になってしまった。


 どうやら、冒険者ギルド以外でも俺の知らない所で噂が広がっているらしい。


 すると、ガロンが俺の腰から下げている剣を見て、何かに気づいたように声を漏らした。


「ん? その剣……ロインのじゃないか? なぜあんたが持っている?」


「ロイン?」


 俺が聞き覚えがない言葉に首を傾げると、ノエルが前のめりになってガロンさんを見た。


「父さん知ってるのか?」


「父さん? そういえば、あいつ子供がいるって言ってたな。へぇ、おまえさんがロインの娘か!」


 ノエルのお父さんって、ロインっていう名前だったのか。


 どうやら、ガロンはノエルのお父さんと知り合いだったらしく、そこで少し話に華が咲いたようだった。


 ガロンはノエルの父親が死んだことを知らなかったらしく、その話を聞いた時は悲しそうな顔をしていた。


 それから、俺とノエルが一緒に住んでいること、成り行きでノエルの父親の剣を使わせてもらっていることなどを話した。


 それらを話終えて少しガロンと距離が近づいた頃、ガロンが思い出したように口を開いた。


「それで、俺に何の用だったんだ?」


「えっと、鍛冶場を使わせて欲しいんです。自分の剣を作りたくて」


「剣を作る? なんだ、あんた鍛冶師だったのか?」


 すると、ガロンが目をぱちぱちとさせて俺を見た。まぁ、さっきまで俺のことを冒険者だと思っていたのに、急にこんなことをお願いされればそんな反応にもなるか。


 それから、俺はスキル『おっさん』についてガロンさんに説明するのだった。


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