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第38話 一方、ワードside

「……遅いだろ、いつになったら頭を下げに来るんだ!」


 とある宿にて、ワードは苛立ちながらグラムたちがまたやってくるのを待っていた。


 数日前、ワードは博に冒険者ギルドで軽く制圧されたから、とある噂が立ち始めていた。


 その噂とは、ワードにはB級冒険者の実力がないのではないかというモノだった。


 G級冒険者に軽くあしらわれるB級冒険者がいるはずがない。博が強いだけではなく、ワードが弱すぎるのだ。


 そんな噂と、博に負けてプライドを折られたワードは、街の冒険者に自分の実力を証明するために、とある作戦を実行していた。


 イワネズミの巣の駆除に同伴して欲しいと言われたワードはそれを断り、博にその依頼を受けさせるように仕向けた。


 そして、それだけでなく、博たちがイワネズミの巣に着く前に、ジャイアントビーの好物をイワネズミの巣にたくさん投げ入れて、その近くにジャイアントビーが巣をつくるように仕向けたのだった。


 ジャイアントビーとイワネズミの巣の駆除。これらの依頼を同時に行うことは、新人冒険者の博にできるはずがないと考えていた。


 そうすることで、新人冒険者の博が失敗した依頼を、ワードが簡単に片づけ、やはりワードの方が強かったということを街の冒険者たちに認めさせるつもりだった。


 しかし、一度ワードの所に頼みに来てから、憲兵たちが再度ワードの所に頭を下げに来ることはなかった。


「憲兵の奴ら、ジャイアントビーにフルボッコにされて寝たきりにでもなってんのか? まったく、使えねー奴らだ」


 ワードは博がジャイアントビーとイワネズミの巣を駆除したことを知らない。


 なので、自分がいないとこの街はダメだななどと独り言を漏らして、気怠そうに憲兵のもとに自分の足で向かっていったのだった。




「はぁ⁉ ジャイアントビーも、イワネズミの巣も両方駆除した? あの新人冒険者が⁉」


 ワードが憲兵団のもとに向かうと、憲兵たちは誰も怪我することなく普通に働いていた。


 ワードはまだイワネズミの巣の駆除を行っていないかと思いながら、憲兵団のグラムを呼び出すと、グラムから思いもしない言葉を聞かされた。


「ええ。博さんが一瞬で巣の駆除をしてくれましたよ。それに、なぜか居合わせたジャイアントビーたちもあっさり片づけてくれました」


「嘘つけ! ジャイアントビーだぞ? G級冒険者が倒せるはずがないだろ!」


 ワードはグラムの言葉を信じられず、大声でそう叫んでグラムをギロッと睨んだ。グラムは困ったように眉を下げて頭を掻く。


「いや、嘘と言われてましても」


「どうかしたんですか?」


 すると、グラムとワードのやり取りを見ていたエイラが二人のもとにやってきた。ワードはグラムを指さして大きな舌打ちを一つする。


「グラムの奴が、馬鹿なことをぬかしやがる! 新人冒険者がジャイアントビーとイワネズミの巣を駆除したとか嘘を言って言ってな!」


「ん? 嘘じゃないですけど」


 エイラが首を傾げてそう言うと、ワードは間の抜けた声を漏らした。


「……は?」


「本当に博さんが倒してくれましたよ。本当に仕事が早い人でしたよ。駆除に向かったその日のうちに帰ってこれましたし」


「巣の駆除だぞ? その日のうちになんてありえないだろ」


「そうなんですよ。あれだけのことをしたのに、全然威張ったりしないし、人ができてるって感じですね」


 エイラがスラスラと話しているのを見て、グラムが軽くエイラの脇腹を突く。エイラは少し考えてハッとしてから、眉を下げて愛想笑いを浮かべた。


「え、それどころか、グラムさんだけ博さんの作った料理を食べさせてもらったらしいですよ。羨ましいですよね、ノエルさんがあれだけ絶賛していた博さんの料理をご馳走になったなんて」


 エイラはマズいと思って話を変えようとするが、ワードの顔は険しくなるばかりで歯ぎしりの音を大きくさせていた。


 グラムは悪くなっていく空気に気まずさを覚え、頬を掻く。


「ええっと、それで今日はどのようなご用件でしたっけ?」


「っ、知るかそんなこと!!」


 ワードは顔を真っ赤にしてそう叫ぶと、その場から去っていった。


 そして、ワードの中では博に対する対抗心が嫌な方向で膨らんでいくのだった。



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