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第30話 おっさん剣士で上がる評価

俺は魔物の接近に合わせてスキル『おっさん』を発動させる。やはり、ここは無難におっさん剣士の力を使うのがいいだろう。


 そう頭の中で考えると、何かが頭の中でハマる感覚があって、俺の体が勝手に動いて剣を鞘から引き抜いた。


「とりあえず、ノエルはイワネズミを。憲兵の方たちもノエルと同じようにイワネズミを頼みます」


「そうなると、博さんが一人で大型の魔物の相手をすることになるのでは?」


「ええ。多分、一人で何とかなる気がするので」


 グラムさんの言葉に言って、俺は切っ先をこちらに向かってくる魔物たちの方に向ける。


 すると、茂みの奥から勢いよく大型犬くらいの大きさをしたイワネズミが六体ほど飛び出してきた。


いち早く魔物たちに向かって飛び出していったノエルは、剣を軽く振るって次々にイワネズミを切りつけていった。


「「チュ―!!」」


 そして、ノエルに続く形で憲兵たちが飛び出していったのだが、そのイワネズミの後ろに現れた大型の魔物を見て腰を抜かしてしまっていた。


「う、ウィーゼルだ!」


「ギシャアア!!」


 イワネズミの奥から飛び出してきたのは、以前相手にしたクマのような魔物を一、二回りほど大きくしたイタチのような魔物だった。


 鋭くてナイフのような爪と、噛まれたら体に穴が開きそうなほど鋭い牙。猛獣のような唸り声を上げていなければ、俺の知っているイタチと少しは似ていたかもしれない。


 俺はおっさん剣士の力を使いながら、一気にウィーゼルとの距離を詰めていく。


そして、腰を抜かしてしまった憲兵とウィーゼルの間に体を入れて、憲兵を襲おうとしていたウィーゼルの片手を斬りつけた。一切無駄のない素早すぎる動き。


 ザシャッ!


「ギシャアア!」


 すると、魔物の手首から指先にかけての部分が、その場にヌッとずり落ちてきた。


 ……おっさん剣士って、簡単に相手の体を切断するよな。マジで何者なんだよ。


 そんなふうに考えていると、また体が勝手に動いてウィーゼルとの距離を詰めた。ちょうどウィーゼルが痛みで暴れているせいで、俺の立っている場所はウィーゼルの死角になっているらしい。そして、俺はその位置から軽く跳んでウィーゼルの首元目がけて剣を構えていた。


 その次の瞬間、ウィーゼルの首元に目がけて鋭い刺突が繰り出された。


「ギシャアア!! アッ」


 そして、ウィーゼルが悲鳴を上げた瞬間、軽く剣を捻ってウィーゼルの首付近にあった何かをブチンと切った。その何かを切られたウィーゼルは、剣を引き抜かれて大量の血を引き出して動かなくなった。


 いや、おっさん剣士戦い方グロ過ぎないか?


 俺はウィーゼルを瞬殺したおっさん剣士の力に、軽く引いてしまっていた。


「さすがおっさん! ウィーゼルも瞬殺かよ!」


 すると、ノエルが駆け寄ってきてキラキラとして目で俺を見上げてきた。辺りを見渡してみると、茂みから飛びしてきたイワネズミが皆倒されていた。


 俺はそれを確認してから、ノエルが羨望の眼差しを向けてくるノエルにふざけてどや顔をしてみる。すると、俺たちのやり取りを見ていたグランが目を見開いて俺を見ていた。


「……これが、ハイリザードを瞬殺した冒険者の実力か。強過ぎないか?」


「ほらっ、絶対に博さんの方がワードさんなんかよりも強いですよ!」


「いやいや、ワードと比較するまでものないだろ。桁違い過ぎる」


 エイラが嬉しそうにグランの肩を揺らすと、グランは小さく首を横に振っていた。


 どうやら、グランの中での俺の評価がまた上がってしまったみたいだった。



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