表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/63

第28話 依頼と交渉

「実は、この話をB級冒険者のワードの所にもっていったのですが、『俺よりも強いって噂のG級冒険者がいるから、そっちに頼め!』と断られてしまいまして」


 それから、グラムはなぜ俺にイワネズミの討伐の同伴をお願いしようとしたのか、大まかに説明をしてくれた。


 憲兵団が街周辺を調査して危険を発見した場合、実力のある冒険者が同伴することがあるらしい。


 この街で一番冒険者ランクが高いのはB級冒険者のグランらしく、イワネズミの巣があると分かるなり、ワードの所に向かったとのこと。


 そして、そこでワードに依頼の同伴を断られてしまったらしい。


「あー……なるほど」


 俺はグラムの話を聞いて、ワードは二日前のことを引きずっているのだと察した。


 どうやら、かなり根に持っているみたいだ。


 俺がそんなことを考えていると、グラムがギルド職員の女性の方に振り向く。


「B級冒険者よりも強い、G級冒険者がいるなんて信じられなかったのですが……冒険者ギルドの職員に聞くと、あなたは子供に手を出そうとしていたワードを一瞬で無力化したとか。それに、他の冒険者もあなたのことを期待の新人だと言っている」


 それから、グラムが周囲にいる冒険者を見ると、話したこともないはずの冒険者たちが皆うんうんと頷いていた。


 ……ワードとの一件から数日経ったから、変に騒がれるようなことはないだろうと思っていたが、騒ぎを放置したせいで変に騒ぎが広がったパターンか?


 すると、突然冒険者ギルドの扉から見覚えのある顔をしている女の子が現れた。



「おっさん、あの人」


「ああ。エイラだな」


 突然現れた女の子は、ハイリザードを討伐しに行ったときに偶然助けた憲兵のエイラだった。


 エイラは冒険者ギルドを見渡してから、グラムを見つけてグラムのもとに小走りで近づいてきた。


「グラムさん、すみません。前に私を助けてくれた冒険者の方にも声を掛けようと街を探してみたんですけど、中々見つからなくてーーって、博さん!」


 エイラは俺たちのことが目に入っていなかったのか、俺を見て目を見開いた。それから、俺のことをびしっと指さして続ける。


「グラムさん! この人です! 私たちを助けてくれて、ハイリザードを瞬殺した冒険者!」


「ほう、あの冒険者の人か。まさか、この街の冒険者だったとは。なるほど、ワードを一瞬で制圧したというのにも納得だ」


 グラムはエイラの言葉を聞いて、大きく頷いてから言葉を続ける。


「博さん。どうか我々にご協力してもらえませんか? もちろん、報酬はそれなりに弾ませていただきますよ」


 やけに期待の籠った真っ直ぐな目で見られてしまい、俺はどうしたものか頬を掻く。


 ……なんか過剰評価をされている気がするんだよなぁ。


 しかし、そう考えながらも、この話を断ろうという気持ちにはなっていなかった。困った若者からお願いをされてしまえば、断ることができないのがおっさんなのだろう。


 俺が仕方なしと思ってグラムからのお願いに頷こうとしたとき、ノエルが一歩前に出てグラムを制するように片手を前に出した。


「グラムさんや、おっさんは金を積まれても動かないぜ。成り上がりとかにも興味ないからな」


「え? そうなのですか?」


「ま、まぁ、成り上がりとかは興味ないかなと」


 グラムが意外そうな顔で俺を見てきたので、俺は反射的にそう答える。すると、グラムは難しそうな顔で考え込んでしまった。


 あれ? もしかして、俺が依頼を受けるのを渋っていると思っているのか?


 すると、ノエルが得意げな顔で口を開く。


「おっさんは金よりも酒とかツマミを優先するんだ。だから、積むなら酒の方がいいぞ」


「酒? 酒か……それなら、実家から送られてきた、米から作ったお酒をお譲りしましょうか?」


「米から作ったお酒って、日本酒か⁉」


 俺はグラムの言葉に反射的に食いついてしまった。


 異世界に来たから日本酒を飲むことはないのだろうなぁと思っていたけど、それに近い酒が手に入るかもしれない。そう思うと、食いつかずにはいられなかった。


 すると、俺の反応を見たグラムが口元を緩めた。


「ご協力していただけますか?」


「も、もちろん。最初から受けるつもりでしたとも」


 なんか酒に釣られて協力をしたみたいな感じになってしまったが、酒を貰えるのならそれでもお釣りがくるくらいだな。


 ちらっとノエルを見ると、ノエルが小さくサムズアップをして笑みを浮かべていた。


 俺はそんなノエルにサムズアップを返してから、異世界で飲める日本酒に似たお酒の味を想像して、心躍らせるのだった。


 こうして、俺たちは憲兵の人たち共に、イワネズミの巣の駆除へと向かうことになったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ