第24話 おっさんのクラフトスキル
それから、俺たちは台車と斧を持って街の外にある森に来ていた。
ノエル曰く、この世界では森の中の木などはある程度自由に使っていいらしい。
俺はおっさん探検家のスキルを使って、極力ヒノキと近い木を見つけることに成功した。
やっぱり、風呂と言えばヒノキ風呂だよな。
俺がヒノキに近い気を見上げて満足げに笑っていると、ノエルがちらっと俺を見る。
「おっさん、風呂作ることなんかできるのか?」
「ああ。図工の成績で二を取った俺でも、スキル『おっさん』を使えば何とかなるはずだ」
俺はそう言って、ノエルのお父さんが使っていたという斧を持って、スキル『おっさん』を使用する。ここで使う力はおっさん林業者といった所か。
『おっさんスキル発動:おっさん魔法使い』
そんな声が脳に直接聞こえてきたと思った次の瞬間には、斧など使ったこともないのに、斧の使い方が頭に入ってきて、体勝手に動いた。
そして、ぐっと構えた斧で俺は近くの木を伐り始めた。
コーン、コーン、コーンッ……
「なんか思ったよりも地味だな」
「いや、かなり上手いっておっさん。的確に一点だけに斧当ててるもん」
「そうなのか? いや、確かに職人の技なんだろうけど、これだとやけに時間がかかる気がするな」
ノエルの言う通り、斧を数度振っていくと、徐々に切込みができてきた。もしかしたら、こんな数回斧を振っただけで切り込みを入れられるのは凄いことなのかもしれないが、このままペースでやっていたら、日が暮れてしまいそうだ。
「……別のおっさんの力を使うか」
「別の?」
俺はそう言って、すぐに木を切ることができそうなおっさんを想像する。
いや、林業者以外に気をすぐに似切れる人っているのか?
斧を振る手を止めて少し考えているが、あまり良い案が出てこない。すると、ノエルがあっと小さく声を漏らした。
「前にハイリザードをぶった斬った魔法とかどうだ?」
「魔法か。確かに、あの魔法なら簡単に木を切ることができそうだな。もっと出力を抑えて、風の魔法をチェーンソーみたいに操れれば、すぐに木を切れそうだ」
俺はノエルの言葉をヒントにそんな方法を考え、おっさん魔法使いの力を使うことにした。
スキル『おっさん』を使うと、また以前のように体に魔力のようなものが流れてくる。俺はそれを手のひらに集めて、薄いチェーンソーの刃のように形を変えてぐるぐると回す。
シューンッ!
そんな風を切る音を聞きながら、俺はそっと風魔法でできたチェーンソーの刃のようなものを木に当てた。
チュイーーーンッ、ザンッ!
すると、さっき俺が何度も斧で切ろうとしても切れ目しか入らなかった木が切られて、音を立てて倒れた。
ズウゥン!
……初めからこっちにしておけばよかったな。
「すっげな! おっさん、木を一瞬で切れるのか!」
「まさか、こんな簡単に木が切れるとは思わなかったな。これなら、今日中に風呂を作ることができそうだ」
俺は今だに手のひらの近くで回っているチェーンソーの刃のような風魔法を見て頷く。
この魔法、このまま木の加工にも使えそうだな。
俺はそう考えて、そのまま気の加工へと移るのだった。




