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第15話 森の異変

「魔物の数が増えている?」


 それから、俺たちは最近の近くの森で起きていることについて簡単に教えてもらった。


 どうやら、エイラたちは今街の近くの森で魔物が多くなったという報告を受けて、調査をしていたらしい。


 街の近くだけでなく、街から少し離れた森なども調査をしているらしく、エイラたちは新人だからと比較的安全な場所を調査することになっているとのこと。


 安全な場所と言われてきたら、ジャイアントキャンガルみたいたな魔物や多くの魔物に襲われて疲弊してしまったとのことだ。


「数の他にも、以前は見なかったような大きめの魔物が増えてきてるんです。本来、ジャイアントキャンガルみたいな魔物はこの辺には出ないので」


「やっぱりか。だから、うちが前に依頼を受けたときもやけに魔物が多かったもんな」


 ノエルは腕を組んでエイラの言葉に納得するように頷く。


 そういえば、前にノエルを助けたとき、依頼された魔物を倒した帰り道に多くの魔物に狙われたと言っていたな。


 あまり悠長にはしていられない異変が森で起きているのだろう。


 俺がそんなことを考えていると、エイラが他の憲兵に肩を貸してぺこっと俺たちに頭を下げた。


「とりあえず、今日は報告に戻ろうと思います。お二人は大丈夫だと思いますけど、気を付けてくださいね」


 それから、エイラは回れ右をして来た道を引き返そうと歩き出した。俺はそのまま引き返そうとし始めたエイラを慌てて止める。


「いやいや、そんな満身創痍の状態で帰れないでしょ。馬車が出ている村まで送っていきますよ」


「いえ、さすがにそこまでしてもらう訳にもいきませんよ。依頼の邪魔をするのも悪いですし!」


 しかし、そう言ったエイラの表情はすでに疲れ切っていた。他二人も同じようで、近くの村まで帰るのがやっとと言った感じだ。


 さすがに、この三人をここで放置したらどうなるってしまうのくらい、安易に想像できた。


「おっさん。それなら、ハイリザードが出る岩山まで近いし、この人たちの一緒に連れていってやったらどうだ? そうすれば、魔物に襲われても道中は守ってあげられるし。この人たちも休憩を挟めば、歩けないって訳でもないだろ」


「そうだな、それが一番いいかもしれない。えっと、少しより道をする形になるかもだけど、それでも良ければ一緒に来ませんか?」


 俺がそう言ってもエイラは遠慮しているのか、すぐには首を立てには降らなかった。すると、他二人の憲兵が目を合わせてから口を開く。


「エイラ、お願いしないか? またジャイアントキャンガルみたいな魔物に襲われたら、今度こそ死んじまうって」


「そうだよ。こう言ってくれてるわけだしさ」


 エイラは二人の言葉を聞いて少し考えたから、遠慮気味に俺たちを見る。


「えっと、本当にお願いしても大丈夫ですか?」


「構わないですよ。このまま君たちを置いていく方が気に病みますし、むしろそうして欲しいですね」


「ありがとうございます。そういうことでしたら、ぜひお願いさせてください」


 エイラがそう言って頭を下げると、他二人も俺に深々と頭を下げてきた。


 二人で依頼を受けたはずが、気づけば数が倍以上になってしまったな。


 まぁ、少しパーティの数が増えたが、問題はないだろう。


 だって、俺にはスキル『おっさん』があるからな。


「とりあえず、一旦ここを離れますか。休むのは魔物が少ない所まで移動してからにしましょう」


「え、近くに魔物がいるんですか?」


 俺は辺りをきょろきょろと見渡すエイラの言葉に頷いて、ジャイアントキャンガルに投げつけたナイフを引き抜いてしまう。


 おっさん探検家の力で魔物の気配を確認していたから分かるが、こっちに二体の狼のような魔物が突っ込んで来ている。


 それから、俺はスキル『おっさん』のおっさん剣士の力を使いながら剣を引き抜く。


 すると、俺が剣を引き抜いたタイミングで茂みから二体の狼のような魔物が飛び出してきた。


 俺がこの世界に飛ばされたとき、最初に相手をした魔物だな。


「ワイルドウルフだ!」


 憲兵の男がそう叫んだのを聞きながら、俺はノエルや憲兵たちの前に立って剣を二度振るった。


「「ガア!」」


 派手ではない最低限の動きなのに、目で捕らえることができないほどに速い太刀筋。


その攻撃を食らったワイルドウルフたちは、体を真っ二つにされて、地面にべちゃっと下手な着地をした。


「え? 今の一瞬で二体を倒したの? それも、ま、真っ二つになってるんだけど」


「嘘だろっ、何者なんだあの人。凄すぎんだろ」


「新米冒険者……新米……えっと、どこが新米なんです?」


 そんな憲兵たちの言葉が聞こえてきて振り向くと、三人は目を見開いていたり、驚き過ぎてぽかんとしてしまっていたりした。


 やっぱり、憲兵から見ても俺の強さは異常なモノらしい。


「さすがだな、おっさん!」


 すると、そんな三人とは違い、ノエルはいつもの屈託のない笑みを浮かべていた。


 俺はそんないつも通りのノエルの反応に安心して笑みを返してから、驚き過ぎている三人を連れて魔物が少ない所へ移動した。


それから少し休んだ後、俺たちはハイリザードのいる岩山へと向かうのだった。



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