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道は違えど、行き着く先は同じ穴

「——それにしても、よく俺がここにいることが分かったな」


 ふと思った疑問をぶつけてみる。


 チュートリアルエリアは平原ステージ……いくら見晴らしが良いとはいえ、エリア自体の広さはそれなりにある。

 なんの手がかりもなしに見つけ出すとなると、さぞ一苦労したことだろう。


 しかし、そんな俺の予想とは裏腹にサンゴは、


「連絡がつかない時点で大体は察しがついていたわ。それに近くに死にかけのまま戦いまくっているプレイヤーがいないかって、少し聞いて回ったらすぐにあなたのことを教えてくれたわよ」


 やれやれと肩を竦めながら言うと、メニューを開いてウィンドウを操作する。

 それからサンドイッチを取り出すと、俺に差し出してきた。


「あげる。その様子だと、まだゲーム内で食事は摂ってないのでしょう?」


「そうだけど……いいのか?」


「勿論よ。目の前で空腹で倒れられては困るもの」


 このゲームには空腹/満腹値なるものがあり、一定時間食事を摂らないでいると行動に悪影響が発生してしまう。

 そして、状態が悪化すると身動き一つ取れなくなり、最終的には死に至る。


 ぶっちゃけると、今の俺は行動が阻害され始める寸前だった。

 もしサンゴと戦うのがあと数分遅れていたら、まず間違いなくPKされていた。


「そういうことなら、ありがたく」


 サンゴからサンドイッチを受け取り、早速口に運ぶ。


「……んー、なんというか、微妙な味だな」


 決して不味くはないけど、だからといって進んで食いたいと思うほどでもない。

 食感も本物と比べてなんか違和感があるし、これだったら水月(みづき)——サンゴのディ……もとい栄養食を食った方がまだマシだ。


「味覚に制限がかけられているせいね。ゲームを進めていくうちに解放できるようになるみたいだから、しばらくはそれで我慢するしかなさそうね」


「全く不便なもんだな」


 こうなっているのは、ゲーム開始時の解放者の肉体には少し欠陥があるって設定的な理由と現実の食事を疎かにしないようにというメタ的な理由によるものだろう。

 だとしても、食うんだったら美味いものがいいと思うのが人の性というものだ。


「……ま、いいや。ごちそうさん。わざわざ持ってきてくれてありがとな」


「どういたしまして。それじゃあ、お礼に一つ相談に乗って貰えないかしら?」


「お、奇遇だな。俺も同じことを思ってたところだ」


 言って、俺とサンゴは示し合わせたようにステータス画面を開く。

 やっぱり考えていることは同じだったか。


「ヒバナ。あなた、レベルは今いくつ?」


「7。そっちは?」


「6よ」


「うわ、早えな」


「ここに来る前に念の為、別のエリアでもあなたを捜していたもの。レベルが近いのはそのおかげね」


 別のエリア……っていうと、本筋の攻略エリアか。

 やっぱチュートリアルエリアとは経験値効率に大分差が出るみたいだな。

 あと、通りで俺が知らねえアイテムを持ってたわけだ。


「早速、本題に入らせてもらうけど。ヒバナは、STR、AGI、DEX——どれを一番重視するべきだと思っている?」


「そうだな……現時点だと、STRとDEXのどっちかだな。逆にAGIはそこまで振る必要はないかな」


 戦闘スタイルの関係上、機動力を上げて被弾率を下げるよりも、高火力でぶん殴ってさっさと戦闘を終わらせたい。

 戦闘時間が長引けばその分、事故ってダメージを受ける可能性も上がるし、そもそも短期決戦で終わらせるほうが俺の性分には合っている。


 ついさっきまではAGI重視も選択肢の一つにあったが、無理に機動力を上げなくてもサンゴとそれなりにバトれたことから、今ではSTRとDEXの二択になっていた。


「逆にサンゴは、そこら辺どう考えてんだ?」


「私はあなたと逆よ。火力不足にならない程度にSTRとDEXを割り振って、残りは全てAGIに振るべきだと思っているわ」


「あー、やっぱそっちに舵を取るか」


「あなたもね」


 俺とサンゴの戦闘に対する方針は似て大きく異なる。

 俺は機動力を犠牲にしてでも火力を優先するし、サンゴは火力を削ってでも機動力を取る。


 これに関してはどちらが正しいということはない。

 ただ、それぞれのスタンスが違うってだけの話だ。

 それに——、


「ちなみにさ、一応聞いておくけど、耐久方面はどうするつもりだ?」


「あら、愚問ね。そんなの……全部避けるか受け流す。もしくは、やられる前にやればいいだけのことではなくて?」


「……ふっ、確かに。お前の言う通りだ」


 俺もサンゴも根本的なコンセプトは一緒。

 被弾ゼロを前提とした紙装甲高火力or高速機動——つまるところオワタ式が俺らのビルド方針だ。


 異なるのは、俺が常に瀕死状態でいるのに対して、サンゴは完全ノーダメージを自らに課しているということか。


「——まあ、それはともかくとして、意見どうもありがとう。おかげで心置きなく当初の予定通りのステータス配分にできるわ」


「当初のって、さっき言ったAGI重視のSD調整か?」


「そう。もしあなたがAGIにも大きく割り振るつもりだったら、もう少し配分を考えるつもりだったけど、いつも通りの育成プランでいくようだったから、私もそうさせてもらうわ」


 そう言うと、サンゴは何の躊躇いもなくポイントを割り振り始めた。


 ……よし、俺も割り振るとするか。

 サンゴがAGIを重視するというのなら、俺はSD振りにするとしよう。




————————————


PN:ヒバナ

Lv:7

8714ガル

JOB(M):剣士(長剣使い)

JOB(S):-

SL:-


パラメーター

HP:30

MP:10

STR:50

VIT:10

INT:10

RES:10

AGI:30

DEX:40

LUK:20

残りSP;0


アビリティ

・双燕斬

・集中

・迅鋒穿

・気合溜め

・火事場の底力



装備

プライマリー:ロングソード

セカンダリー:-

頭:-

胴:麻の服

腕:-

腰:麻のズボン

脚:革の靴

アクセサリー:-


————————————




「ざっとこんなもんか」


「……ああ、やっぱりもう瀕死系のアビリティを習得してたのね」


「お前とバトるちょっと前にな。これがなかったら今頃、お前にぶっ殺されてたかもな。……と、そうだ、サンゴ。このゲーム、思っていた以上に戦闘スタイルが習得アビリティに直結しそうだから、雑魚的相手でもそこら辺意識した方がいいぞ」


「分かった、心に留めておくわ」


 その後、時間も遅くなっていたこともあり、最初の街『アルフレシア』に移動し、ログアウトすることにした。

空腹/満腹値はpHスケールのようなイメージで考えてもらえたらと。

空腹、普通、満腹の三段階にフェーズがあって、時間経過で空腹側に値が変化していき、死亡後、リスポーンすると一番中央の値に戻ります。


幼馴染ちゃんのジョブは武道家(棍使い)です。

武闘家とよく混濁されがちなジョブですが別物です。

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