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『Apocalypse・Liberator』

 フルダイブ型VRMMORPG『Apocalypse・Liberator』が一般販売されたのは、正式サービスが開始されてから三ヶ月後、夏休み前日のことだった。


「やっと、この日がやって来た……!!」


 学校から帰宅後、VRギアに接続されたAR(拡張現実)モニターでソフトのダウンロードが完了していることを確認して俺は、小さく拳を握りしめる。


 先行予約の抽選にも漏れてからおよそ半年。

 今まではSNSやら動画サイト上で盛り上がっているのを蚊帳の外から指咥えて見ることしかできなかったが、そんな惨めな日々とようやくおさらばできる。


「先行勢にはかなり遅れを取ってしまったが、その分思いっきり暴れてやるぜ」


『Apocalypse Liberator』——通称”アポリベ”or”AL”。


【解放しろ。己の限界を、世界を——!!】をキャッチコピーに制作されたこのゲームは、プレイヤーが解放者と呼ばれる人間となり、特殊な能力”アビリティ”を使いながら広大なフィールドを冒険し、世界に迫っている難題から解放に導くというのが大筋のストーリーとなっている。

 一見するとよくある剣と魔法のRPGって感じだが、どうやら一度文明が崩壊してから数千年後の世界……所謂ポストアポカリプス系の世界観らしく、古代の遺物として銃だったり機械の兵器といったSF要素もちょいちょい混ざっているという。


 現在、アポリベのアクティブユーザーは五百万人弱。

 恐らく、一般発売開始と夏休みブーストがかかることで今日中には、五百万人の大台を軽々突破すると思われる。


 一気に新規プレイヤーが傾れ込むことでサーバーがパンクすることにならなきゃいいが、まあそんなことにはならないだろ。

 サービス開始後もこの日に向けて着々とサーバーを増設しまくってたって話だし。


「さてと、そんじゃ早速始めるとするか……と、その前に」


 ベッドに放り投げておいたARフォンを手に取り、チャットアプリを起動する。

 それから幼馴染みに『準備完了したから今から始める』と一言メッセージを飛ばしておく。


 返信はフルダイブ中でも通知が来るようにして設定してあるから、リアル側(こっち)で待たなくても問題はない。


「よし、オッケー。それじゃあ、今度こそ始めるか」


 そして、今度こそVRギアを装着し、意気揚々とベッドに横たわることにした。






 ゲームを起動してまずやることといえば、キャラメイクだ。

 この手のMMORPGじゃお約束の工程だが、実にこれが中々に厄介で楽しいところでもある。


「うっわ、凄えな。どんだけ項目があんだよ」


 爪の色とかタトゥーのデザインみたいなそんな細かなところまで弄れるのかよ。

 自由度がバカ広いとは聞いていたが、ちょっと想像以上だわ、これ。


「なるほど……確かにこれはキャラクリに一週間かけた猛者がいるのも納得できる」


 これだけ選択肢が多すぎると、逆にどれにすればいいのか悩ましくなるしな。

 とはいえ、どんな感じにするか方向性はもう大体固まっている(※正確にいえば、固定のアバター像がある)。

 なので、そいつ——長身痩躯褐色肌の灰髪青年——を実際にアウトプットして微調整を加えればいいだけだ。


 そんなわけでちゃちゃっとキャラメイクを済ませ、本題のジョブ設定に移行する。


「剣士に戦士に騎士に兵士……って、知ってはいたけど、改めてめっちゃ細分化されてるな」


 どれも同じようなもんだろうと思うが、ジョブによって補正がかかるステータスや習得可能アビリティ、あとは装備可能な武具が微妙に変わってくるらしい。

 しかもそのジョブ専用でしか装備できない武器や習得可能なアビリティなるものが存在するとのことだから、ちゃんと考えて選ばないと後々痛い目を見るかもしれないという。


 それとジョブとは別に適正武器というものがあるようだ。

 どうやら攻撃威力やアビリティの習得しやすさに補正がかかるみたいで、ジョブほどではないだろうが、ある程度は考えて選ぶ必要があるだろう。


「んー……ま、無難にこれか」


 暫し悩んだ末、剣士(長剣使い)にすることにした。


 剣士だと攻撃力に直結するSTR(筋力)と移動速度とかに影響するAGI(敏捷)に補正がかかるっぽいからな。

 適正武器を長剣にしたのは、単純に俺が別ゲーで慣れてるからってだけのことだ。

 背中に背負うタイプの長剣と腰に差すタイプの片手剣と迷いはしたが、手数の多さや取り回しの良さより一発の威力を重視した方が得意だから前者にした。


 ただ、ジョブにしても適正武器にしても別のやつがトレンドっぽいが、最初は環境上位のものじゃなくて好きなジョブだったり使い慣れた武器でいいだろ。

 そうじゃなくてもフルダイブ型のゲームの戦闘で大事なのは、スペックや理論値の高い武器を使うことよりも、どれだけ自分に合ったを使いこなせるかってことだし。

 これまでの経験上、どうしようもないレベルで性能に差が開いてしまってでもない限りは、環境に戦い方を合わせるよりも、自分の得意な戦い方を突き通した方が良いことが多い。


 それにゲームを進めていけばサブジョブも解放されるっていうから、真面目にビルドについて考えるのはその時になってからでも問題ないだろ。


「あとは……プレイヤーネームを決めて終わりか」


 ここは迷う必要はないな。

 自分でキャラ名を設定できるゲームでは基本同じ名前で統一してるし。


「ヒバナ、と」


 俺の本名——花崎(はなさき)(ほむら)()と焔の偏の()を組み合わせてヒバナ。

 比較的安直な部類ではあるけど、割と気に入っている。


「そんじゃ、軽く一暴れするとしますか……!!」


 最後に最終決定ボタンをタップすれば、視界が白く染まるのだった。

βテスト時のデータがあれば、キャラメイクを工程を省くことができます。

主人公が一からキャラクリしているのは、つまりはそういうことで、更に補足すると主人公はβテストの抽選にも落選しています。


また、現時点でのトレンドのジョブはガンナー(ライフル使い)と騎士(弓使い)。

中〜遠距離の安全圏から高火力を叩き出して戦えるのが強いとされているようです。

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