閉じたセカイで獣は吠える 2
僕は5歳までの記憶がなくってね
小さい頃はとても恐ろしい神様がいて
綺麗で残酷な獣を見せてきた気がする
嫌なのに、嫌と言うことも許されず、神様は何度も何度も獣を連れてきた
「これがセカイだ」「これが人間だ」
当然ここでいう神様は多分どこかの人間で、獣はどこか知らない場所だったんだろう。
そんな、記憶とも呼べないイメージが、人生の原初。最初の擦り傷。
僕はカトリックの孤児院の前にプラダのドレスに包まれてハリーウィンストンのネックレスと一緒に捨てられていたらしい。
いや、これは本当に全然なんの意味も無い嘘で。
普通に、僕と同じ親無しのガキ共を路地裏で束ねて暴れ回ってたら捕まっただけだ。
肉屋を襲って飯を食いパチンコの換金所を襲って金を稼ぎホームセンターから強奪した武器で小学生くらいのガキ共引き連れ暴走族や半グレや果ては本職の方々と仲良く真剣な殺し合いをしたり楽しく過ごしていて──
そこでちょーっと加減を間違えて。
気づいたら火と血と死体の海の中で、ヤバイ目をした官憲の方々に半殺しにされた後、留置所、拘置所すっ飛ばして精神情報学研究所に入院。
特定危険因子に対する外来技術の特例使用に対する法律二条一項適用。
第一級外来技術使用の人格洗浄プログラムで「普通の重度行動障害」にまでめでたく「更生」して孤児院に入った。
脳が強姦される感覚、わかるかなぁ。例えばお昼寝の時間、頭に怪物がやってきて心にニトログリセリンを射精する。
身体や脳味噌ではなく、紛うことなき「自分自身」が焼かれ犯され潰される苦痛。
怪物は僕の全てを食らう。
優しさも、苛立ちも、愛情も憎しみも全部一緒くたに台無しにする。
人形でも絵本でも窓ガラスでも他人でも友達でも先生でも、そして何より自分を壊さないと死んでしまうんじゃないかと錯覚する程の破壊衝動。
「それでも、何かを傷つけてはいけません」
何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も気が遠くなるまで繰り返し教えてくれた、先生は元気かな。
僕は怪物が射精する前に心を殺す術を学んで、ようやく獣は人になれました。
孤児寮に移って、学校に行って苛められ、平穏な日々を過ごしていた。
そして、僕はとある夜に少女と出逢い、恋をした。
そんな思い出を、今、今、この瞬間にも怪物は犯して食らってドブ色にする。
///Howl:
「」「(『こらこらこら〜!心を起こして獣になるなら、そ〜んな幸せな御伽話は赦しませんっ!」「)』((
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