Chapter 1 第八章「それぞれの役割」
「やっぱり、残物だけじゃなくて何かしら武器を持つべきなのかな....経験の浅い私じゃ、足手纏いになりそう」
「?、新人だろうと、残物を扱えるのは凄い事だと思うぞ。だから足手纏いになる事は絶対に無いと思うが?」
ルーカスは隣でボソッと不安を口にしたデュースを励ます様にそう言った。するとデュースは表情を曇らせながら俯いた。
「だと、良いんですが....私、呼び出せる精霊の傾向上、戦闘能力は無に等しいですし....」
「そこはチームなんだから、互いでカバーし合えば良いのさ」
「そうだよ。ヒーラーやディフェンダーを呼び出せる時点で、戦術の幅は広がる。だから僕も、それに合った戦略が立て易くなるよ」
ルーカスの言葉に追い討ちを掛けるようにルークは“班の軍略担当”と言う立場からデュースを励ました。
「調査班においての最大の武器は“想像力”。ソーズマン教官が言ってた言葉だ」
「その通りだよ。モノは使い様だし、戦うだけが戦闘じゃないよ」
2人の言葉を聞いたデュースは顔を上げるとルーカス、ルークの方を向いた。
「私、頑張ります!」
「頑張るとは違くないかい?。元々デュースは頑張ってると思うよ?」
「その通りだ。“デュすけ”は未成年の割にはしっかりしてると思うゼェ?」
「ゼルトナーさん、貴方がだらしなさ過ぎるだけの様にも思いますか?」
シャルロッテのツッコミを前に調査班の間に笑いが充満した。
賑やかなのが苦手なルーカスやフレッチャも、この雰囲気は嫌いでは無かった。
「だから無理して他の武器持とうとか思わなくても良いと思うぜ」
「う〜ん....」
悩むデュースを他所に、ルーカスは笑みを浮かべながらポーチから双眼鏡を取り出すとレンズに魔力を纏わせながら覗き込み、辺りを見渡した。
「....ッ?」
何かを捉えたルーカスは一気に表情を曇らせた。その瞬間、隣に居たデュースはすぐさま嫌な予感を感じ取るとエスピリトゥピトを強く握った。
「・・・2時方向にアンノウン」
ルークは目を見開くとすぐさま索敵魔法を展開させた。それと同時にシャルロッテを除く全員が一斉に双眼鏡を覗き込んだ。
「・・・捉えたけど、遠いな....怪物って事は確かだけど、魔力が届かないからよくわからない」
「・・・ありゃ、ブラボー型だな....頭はこっちに向いてる」
アルファ型のジャイアントタイプやブラボー型と言った対大型戦のプロであるゼルトナーはアンノウンの正体をすぐさま見破った。
「班長、どうします?」
ルーカスの問い掛けを前に、キョウカは双眼鏡から目を離すと数秒考えたのちフレッチャの方を向いた。
「捉えてる?」
フレッチャはキョウカの問い掛けに無言で頷いた。
するとキョウカはフレッチャにブラボー型と思われるアンノウンの監視を任せるとそのまま前進する事を全員に伝えた。
「・・・まっ、確かに仕掛けるには遠過ぎるな」
そう言いながら何処か納得してない様な表情を浮かべたゼルトナーは双眼鏡をポーチに仕舞うと溜息を吐いた。
※
「・・・!」
「フレッチャさん?」
「ゆっくりだけど、こっちに近付いて来てる!」
「!」
すぐさまイーラスクーレに手を掛けるゼルトナー。
が、シャルロッテはゼルトナーを静止するとキョウカに判断を仰いだ。
「スピードを上げて!」
キョウカが下した決断は“逃げ切る”だった。歩きだった馬が一気に通常の走行スピードまで加速した。そんな中、キョウカは再びフレッチャの方を向いた。
「・・・ハッキリとブラボー型って分かる?」
「まだ、・・・待って下さい....」
ルーカスは表情を険しくすると再び双眼鏡を覗き込むと班の左側を警戒した。
次の瞬間、
ルーカスとルークは同時に同じものを捉えた。
「8時方向!。ジャイアントタイプ3、ゴブリンタイプ多数!」
「ゴブリン....18は居るね....速いよ!」
「挟み撃ちか!。班長さん、どうする⁉︎」
「(進路を変えて逃げ切る?。....いや、ゴブリンタイプに追い付かれたら面倒な事に....速度を上げる?。....なら此処で仕掛ける?。....いや、此処で消耗するには....)」
様々な考えがキョウカの頭の中で交差する中、舌打ちしたゼルトナーはイーラスクーレをパーツと合体させて斧に変形させた。
「班長!」
「ッ、ゼルトナー待って!」
「だけどよぉ!」
「特定完了!ブラボー型です!」
「そんな....」
戦闘は極力避けたいと考えるキョウカは戦闘無しに切り抜ける方法を必死に考えた。だがゼルトナーが突入体勢を取ったのを見て、キョウカは頭がグチャグチャになった。
「....」
「ルーカスさん?」
デュースからの呼び掛けを前に表情を険しくするルーカス。するとルーカスは舌打ちをしたのちフューリーを構え、薬室に初弾を送り込んだ。
「状況的にもゼルトナーさんを止めるのは無理だな」
「え?。!、ルーカスさん!」
「ルーカス、待って!」
デュースの呼び掛け、フレッチャの静止を無視しながらルーカスは馬をブラボー型に向かって走らせた。
「!」
「注意を逸らして目を潰します!トドメを任せます!」
「合点承知!」
「始まっちゃったか....デュースさん、光の精霊を!、ルーカスさんとゼルトナーを照らして!」
「は、はい!」
デュースはエスピリトゥピトをゆっくりと口元に構えると暖かな音色を唱え、1匹の精霊を召喚した。
「なら僕は、斜め後ろから来る奴らを叩くか。フレッチャ、討ち漏らしたのを射抜いてもらえる?」
「わ、わかりました!」
「....」
キョウカは動き始めた周りを見るや否や頭の中を真っ白にするとゆっくりと俯いた。
「・・・」
※
速度を挙げながら第08調査班に迫るブラボー型。
そんなブラボー型が太陽の巻物に照らされる大地に前脚を置こうとした瞬間、ブラボー型は鼻先に2発のショットを喰らった。
「....」
無言で馬を走らせながら両手でフューリーを構えるルーカス。この程度じゃ視線誘導は無理と判断すると目付きを鋭くし、ショットを4発放った。1発はブラボー型の上唇、2発は上前歯を砕き、1発は下前歯に亀裂を入れた。
ブラボー型は前歯を砕かれた事に怒ったのか、雄叫びを挙げながらルーカスを追い掛けた。
「そうだッ。良い子だからこっちに来い、クソ野郎!」
そう言いながら真っ暗闇な世界の中で馬の脚を加速させるルーカス。ブラボー型はまるでルーカスが見えているかの様に速度を落とす事なく追い掛ける。
「・・・、ッ!」
瞳を見開いたルーカスは馬を右に急速ターンさせるとすぐさまフューリーを構え直し、左眼に2発、右眼に3発撃ち込みブラボー型の両眼を潰した。
「ッ」
ブラボー型が右手で両眼を覆う中、ルーカスは後ろから気配を感じると照準器を覗き込み、銃口を向けた。
「ヒューマン1にゴブリン10以上!」
舌打ちしたのち馬を走らしたルーカスはフューリーから撃ち出したショットでゴブリンタイプ2体の頭を粉砕した。
次の瞬間、
ルーカスは何かを捉えたかの様に上を向くとそこには微かな光があった。
「なんだ?。なッ!」
その微かな光は人の形を作り出すとルーカスの頭上を照らし、大地に光を与えた。
「精霊か?」
「デュースが光の精霊を召喚してくれみたいだな」
「ゼルトナーさん!」
「デカブツは俺に任せなぁ!」
ルーカスは返事を返したのち馬から飛び降りると受け身を取りながらフューリーを構え直すとゴブリンタイプ3体の頭を粉砕した。
「数が多いな。マークスマンライフルじゃ埒が開かんな」
そう呟いたルーカスはフューリーを背中に背負うとコンパクトアサルトライフルの“ネモ・コマンドー”を構え、狙い定めた。が、照準器したのナビゲート画面がエラーメッセージを表示させた。
「?」
その頃、
馬の鞍に両脚を載せていたゼルトナーは飛び上がると同時に大型の斧となったイーラスクーレでブラボー型の左肘を叩き斬ったのちブラボー型をうつ伏せ状態にさせると着地と同時に再び飛び上がり、斧部分に魔力を集中させると落下の勢いと同時に思いっきりイーラスクーレを振り下ろした。
ゼルトナー「ゥはああァァァァァッッ!、喰らいなぁァッ!」
振り下ろされたイーラスクーレはブラボー型の後頭部と付け根の血管を叩き割った。そんな重傷を負って生きていられる訳もなくブラボー型は絶命した。
「?。....光に釣られて来たか?」
そう呟いたゼルトナーの視線の先にはジャイアントタイプ2体とヒューマンタイプ4体、ゴブリンタイプが20体かそれ以上居た。
「良いぜぇ〜。行くぜぇッ」
そう言いながらアルファ型の群れに突っ込むゼルトナー。
その一方でルーカスはエラーメッセージの意味を理解すると舌打ちしたのち自分に飛び掛かるゴブリンタイプを睨んだ。
「(馬鹿だ!。コマンドーの薬室に初弾装填すんの忘るとは!。実戦でこれってかなり間抜けなミスだぞ!)」
ルーカスはネモ・コマンドーから手を離すと自分のもとに飛び掛かって来るゴブリンタイプの顔面を左手で鷲掴みにすると右手で戦闘用多用途フォールディングナイフを引き抜き、ブレイドを展開するとゴブリンタイプの喉元を深く刺した。
「!」
ナイフを引き抜くと同時にゴブリンタイプを投げ捨てると右から迫るゴブリンタイプにナイフを投てきし、右眼を潰した。
そんなルーカスの背後を突く様に別のゴブリンタイプが襲い掛かった。が、そのゴブリンタイプはルーカスの愛馬に体当たりされ、大きく吹っ飛ばされた。
「助かったぜ相棒!」
そう言いながらルーカスは馬の荷物入れに納まったケースの中の鞘から剣を引き抜くとゴブリンタイプに斬り掛かり、頭部と身体を切り離した。
そして剣を逆手に構ると別のゴブリンタイプの顔面に投てきし、鼻と脳を貫いた。それと同時に地面を蹴る様に走り出したルーカスは先程投てきしたナイフを死体となったゴブリンタイプから引き抜くと走りながら血を拭き取り、ブレイドを収納し、ケースに戻すとゴブリンタイプの顔面に刺さったブレイドを逆手に掴み、斬り裂く様に引き抜くと、地面を滑りながら動きを止めると自分に飛び掛かるゴブリンタイプを振り向き様に剣を振り、上下真っ二つに斬り裂いた。
「!」
今度は片手剣片手に突っ込んで来るヒューマンタイプに目を向けると逆手持ちのまま剣を構え、ヒューマンタイプが剣を振った瞬間、身を屈めて回避すると爪先で地面を蹴りながらヒューマンタイプの右脚を斬り、振り向き様に右手首を斬り飛ばした。
そして地面を後ろ向きに滑りながら剣を180度回転させ、両手で構え直すと同時に地面に横転するヒューマンタイプと距離を積める様に地面を蹴った。
ルーカス「ヒッフゥァアアアアアアァァァッッ!」
変わった雄叫びを挙げながらルーカスはヒューマンタイプの頸を貫き、頭部を切り離すとヒューマンタイプは身体のあっちこちが無い状態で血を流しながら地面に倒れた。
「まだ居るかゴブリン!」
そう言いながらルーカスは先程愛馬に轢かれたゴブリンタイプが負傷しながらも起き上がろうとしたのを確認するとすぐさま剣を逆手に構えて投てきし、ゴブリンタイプの左耳ごと脳を貫いた。
ルーカス「ッ!もう終わりにしようぜ」
そう呟きながらネモ・コマンドーを構え、チャージングレバーを引いて初弾を装填すると残ったゴブリンタイプを素早く制圧した。
※
一方その頃、
ルークは無言で"未来を見た旧人類の残物”の1つである魔術書“グリモリオ”を片手で構えながら右手に魔力を溜めると8時方向から迫るアルファ型の大軍の進路上に無数の火の玉を出現させるとタイミングを見てその火の玉を破裂させた。
火の玉の中に圧縮されていた炎がゴブリンタイプの身体を焼き尽くし、ジャイアントタイプの脚に大火傷を負わせて横転させるとゴブリンタイプを焼き尽くそうとする炎がジャイアントタイプの顔面を受け止めると顔面を焦がした。
「ゴブリン4匹、抜けて来るよ」
フレッチャは"未来を見た旧人類の残物”の1つである“メディウムアルク”と呼ばれる弓矢を構えると4本の矢を続けて放ち、ゴブリンタイプの頭部を射抜いた。
「お見事」
「数を少なくしてくれたお陰でなんとかやれました」
ルークは笑顔で頷くと少し長めに息を吐いた。するとデュースが何かを感じ取った様な表情を浮かべるとすぐにルークらの方を向いた。
「ルーカスさんとゼルトナーさん、かなりの大軍と戦ってます」
「えっ?」
「精霊の発する光に引き寄せられたのかもしれないね」
ルークはそう言うと俯き続けるキョウカに目を向けた。するとシャルロッテが「そう言えば」と呟くとルークの方を向いた。
「ルークさん」
「?」
「“あの場所”が近い。そこで合流しましょう」
ルークは意味を察すると「わかった」と言いながらルーカスらが居る方向に向かって馬を走らせた。
「....」
「班長、近くに良い場所休憩場所があります。班を集合させると同時に一度小休憩を取りませんか」
「え、ええぇ。そうね」
※
“ボルケーノインパクト”でゴブリンタイプを一掃したゼルトナーは長めに息を吐くと自分のもとに戻って来た愛馬の首元を優しく撫でた。
「?」
気配を感じたゼルトナーは後ろを振り返ると中途半端な長さの剣を右手に構えながら左手で綱を引きながらゆっくりと歩み寄るルーカスが居た。
「お疲れさん」
「お疲れ様です。何とかなりましたね」
そう言ったのち専用の布で剣に付着した血を拭き取ったルーカスは鞘に剣を収め、ケースの蓋を閉じると馬の首を優しく撫でたのち鐙に脚を引っ掛けると乗馬した。
「班に、戻りましょう」
ゼルトナーは乗馬したのち「そうだな」と返した。
すると彼らの後ろから2人の名前を呼びながら馬に乗ったルークが近付いて来た。
「ッ?。僕が来る必要はなかったかな?」
「何とかな。そっちは?」
「問題無いよ。“あの場所”が近いから、そこで落ち合う」
「?、ああ。そう言えばそうだったな」
「あの、場所?」
「小休憩取るのに最適な場所があるんだよ」
「へぇ〜」
「近いよ。着いて来て」
「あいよ」
2人はルークに続く形で馬を走らせた。ルーカスはゆっくりと後ろを振り返ると闇に消えて行く怪物の死体を鋭い目付きで見続けた。
「・・・」
「班長さんが、」
「え?」
「なんでAフォーメーションの時に、お前を後ろに下げて、あの堅物を俺の後ろに付けたか....なんとなく分かった」
「そうかい?。僕は使用する武器のバランスかと思ってたけど」
「俺もそう思ってた。けど、多分違う」
「?」
「あの堅物は、魔法に頼らず様々な場面や怪物に対応出来る。だからその分、俺が大型に集中しやすい」
「へぇ〜、成る程」
ルークがそう反応すると同時にルーカスはゆっくりと前を向いた。
「それが俺の、“役割”....か」
「多分な」
「キョウカさんは如何にして戦闘を避けるかを考えるけど、避けれぬ場合は容赦なくやる人だよ。僕はこの後の防御戦でそう感じた」
「(俺の役割は、意外と多そうだな)」
※
「これは....凄い」
ルークを追って小さな丘に辿り着いたルーカスは一言そう呟いた。
「おっ、来たわね〜」
ルーカスは馬から降りると荷馬車の側に留めるとキョウカの方へ歩み寄った。
「無事だったのね。よかった」
「あんな奴らに負ける程、弱くは無いつもりだ」
そう言いながらゼルトナーはルーカスの横に立つとキョウカを見下ろした。
「ありがとう」
「⁉︎」
全く予想してなかった言葉を前にルーカスは驚きを隠せず、すぐに疑問という形で言葉を返した。
「ありがとうって、え?」
「文字通りよ。あそこで貴方が突っ込まなかったら、ゼルトナーは孤立してたわ」
「確かにな。ルーカスが背中を護ってくれたから、他の大型に集中出来たのは事実だ」
「・・・」
「15分後に出発よ」
「あっ、はい」
キョウカはルーカスと目を合わせ、何かを言おうとしたがシャルロッテに呼ばれた事でキョウカは2人のもとを離れた。
「・・・」
「班長は、」
「?」
「良い班長になれますよ」
キョウカと2人で倒木や地面に生えたキノコを採取しながらシャルロッテはそう言った。キョウカはその言葉に少し驚いたがシャルロッテは構わず続けた。
「新人班長が現場で頭が回らなくなるなんて、よくある話ですよ。それに、さっき班長はルーカスさんを叱らず逆に褒めた。....自分の命令や指示に反した班長は大抵相手を叱ります。しかし、班長は自分の責任と向き合い、適切な言葉を掛けた。立派な事です」
「・・・」
「班長はまだまだ若くて経験が浅いんです。そこを克服出来れば、立派な班長になれますよ」
「・・・貴方だってまだ若いですよ」
「あらっ、フフッ。そうやって言い返せるなら、もう大丈夫そうですね」
そう言うとシャルロッテはキョウカと集めた沢山のキノコに解毒魔法を掛けると鞄の書が浮き上がらせた魔法陣の中にしまった。
「・・・」
「浮かない顔ですね。ルーカスさん」
「?、フレッチャか。んぁ....まぁ....な」
「キョウカ班長の対応の事ですか?」
「・・・シュトルツさんなら、怒ったよ」
「比べる人間違ってません?」
「かもな....」
そう言いながらゆっくりと石の上に腰掛けるとルーカスは丘をゆっくり流れる風に顔を当てながらゆっくりと目を瞑り、ゆっくりと上を向いた。
「キョウカ班長は、きっと分かってたんですよ」
「何が?」
「自分がとんな指示を出さなきゃいけなかったのか」
そう言いながらフレッチャは隣の石に腰掛けるとルーカスの方を向いた。ルーカスは挙げていた顔をゆっくりと下すとゆっくりと目を開け、フレッチャと目を合わせた。
「でも、戦闘を避けたいと考えた班長はその指示を出せず、如何に戦闘を避けるかを考えてしまっていた。だから、逆にああ言うしか無かったんだと思います」
「そうか?」
「ええ。・・・ああ、あと」
「?」
「仲間を護る為とは言え、無闇に囮を引き受けないで下さい。....こっちは心配しちゃうんですから」
「・・・」
「本当、自己犠牲欲が強いのは変わりませんね〜」
「心配するのはあれだが、それが俺の役割の 1つだ。明日は解らんが今日は死なん。だからやる」
「口ではそう言っても、本当にそうかは解らないんですよ?」
「分かってるつもりでは居るんだがなぁ〜」
そう言いながらフレッチャから視線外したルーカスは手に持っていた双眼鏡を覗き込むと「おっ」と声を漏らした。
「?」
「マジで居た」
「?」
ルーカスは双眼鏡を仕舞い込むと自分の馬のもとへ走り、荷物入れから“複合弓に似た小型のコンパウンドボウ”と狩猟用の矢尻の矢が収まった矢筒を取り出した。
「そろそろ出発....あれ?」
「班長さん。フレッちと軍略さんと堅物は何処だ?」
シャルロッテは頭にハテナを浮かべながら辺りを見渡すと荷馬車の側で「嘘....」と言い放ったデュースの方を向いた。
「嘘!まさか!」
最悪な予感がキョウカの頭を過った。
が、それが的中する事は無かった。
デュースの視線の先には矢筒と複合弓をぶら下げながら大柄な鹿を背追い込むルーカスと動物用担架で2頭の猪を運ぶルークとフレッチャが居た。
「・・・」
「本当にやるなんて....これは腕にヨリを掛けなくては」
「おっ、其奴は晩飯が楽しみだな」
どうも。村渕和公です
突然ですが、Chapter 1は此処で終了です。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
今作は、色々と設定が“無駄に”凝ってるなぁ〜、と自分でも思う様な作品です。
実は今作はpixivにも投稿してる作品ですが、pixiv版とは違いエピソードごとにタイトルにあった内容に書き換えたり、表現をマイルドにするなど色々違いを出しています。個人的にはpixiv版の登場人物一覧と用語集読んだらこっちの方が面白いんじゃないかなぁ〜、と思ってます。
数ある作品から、この作品を選んで頂きありがとうございました。
それでは“Chapter 2”でお会いしましょう。