Chapter 1 第二章「脅威に対する考え方」
凄まじい銃声を発しながら次々とアルファ型のゴブリンタイプとヒューマンタイプを薙ぎ払う様に蜂の巣にして行く“リベリオン”。
毎分1200発で放たれるエネルギーショットを前にゴブリンタイプは悔しげな表情を浮かべながら別の侵攻ルートを探った。
「好きにはさせん」
そう言いながら照準を合わせ、引き金を引いたブラックバーン。アサルトライフルから放たれたエネルギーショットはゴブリンタイプの頭部に綺麗な風穴を開けたのちそのまま貫通し、別のゴブリンタイプの眼を潰した。
「19、20。これで21!」
放たれたエネルギーショットを心臓と右眼に喰らったゴブリンタイプはそのまま後ろに倒れた。
「相変わらずよく数えられるな」
「色々鈍らせない為だ。22、....23!」
「ヒューマンタイプも忘れるなよ!」
ワイミーの一言を気にする事なくゴブリンタイプに向けて引き金を引くブラックバーン。だが彼の耳にも通信の内容は入っていた。
『ジャイアントタイプだ!』
『俺が行く!』
『了解!此処はお任せを!』
「ローガン班長が行くか....」
「25!」
ブラックバーンがゴブリンタイプばかりを狙う中、ワイミーはヒューマンタイプの頭部に照準を合わせると躊躇なく引き金を引き、風穴を開けた。
ローガン、ワイミー、ブラックバーン、それぞれの脅威への考え方が自分が所持する武器の特性に現れていた。だが、刻一刻と変わるのが戦況。必ずしも特性に合った戦い方が出来る訳ではなかった。
『ヒューマンタイプ2体とゴブリンタイプ5体が防衛ブロックを突破!』
『3名負傷!。治癒要請!』
ブラックバーンは舌打ちをしたのちワイミーの事を呼んだのちゴブリンタイプを3体仕留めたのちワイミーの方を向いた。
「此処で奴らを食い止めろ!」
ワイミーが頷いて返すと、ブラックバーンは突破されたブロックに向かって走り始めた。するとワイミーは一度アサルトライフルに安全装置を掛けたのち背中に背負っていた狙撃用ライフル“フューリー”を引き抜くとチャージングレバーを引いたのち、ブラックバーンを狙うゴブリンタイプ2体の頭部を粉砕した。
「ッ」
すぐさまライフルを土嚢に立て掛けると再びアサルトライフル“ネモ・アサルト”を構えると自分のもとに近付くアルファ型を次々と仕留めた。
「(ブラックバーンにとってはゴブリンが1番の脅威かもしれんが、俺にとってはアルファ型の全部が1番の脅威なんだよ)」
※
荷馬車から照らされる地面の上を駆ける馬に跨りながら“第04調査班”の班長シュトルツは目付きを鋭くした。
「来たわ。2時方向」
「!」
女性班員のシラチューダは女ハーフエルフのシュネーがスポットした方角に双眼鏡のレンズを合わせた。
「ブラボー型2体、アルファ....ゴブリン8、ヒューマン5、ジャイアント1!」
「我々の国に向かっているか?」
「はい!」
シュトルツは直様表情を鋭くした。祖国に近い此処で怪物と言う名の脅威を見逃す理由は、無かった。
「迎え撃つ!。フォーメーションをチェンジ!」
号令に合わせる様に六頭の馬は荷馬車を中心に配置を変えた。すると班長補佐の女性班員のスエルテも戦闘準備に入った。
それと同時にシラチューダは手に構えた薙刀の様な斬撃武器“ヴィルトゥ”を変形させたのち付属パーツと合体させてスナイパーライフルに切り替えると両手でそれを構えた。
「・・・」
「スセアモ!」
「ええ、分かってるわ」
男性班員のカサドルにそう返しながらヴィルトゥの強化発展型“ラ・モール”をスナイパーライフルに切り替えるとシラチューダが狙うのとは別のブラボー型に照準を合わせた。
「(さて、私は行かせて貰うとするか)」
調査班と怪物の群との距離が900メートルを切るとカサドルは突如として馬の上から姿を消した。すると怪物側も調査班に気が付いたらしく、距離を詰め始めた。そして距離が700を切った瞬間、
「撃て!」
第04調査班の軍略担当であるソーズマンの合図でシラチューダとスセアモは引き金を引いた。
シラチューダの放ったショットはブラボー型の左前脚を撃ち抜き、転倒させた。
スセアモはブラボー型の瞳を掠らせ、両方の目を潰し、転倒させた。
「凄い腕前ですね」
「このぐらい、大した事無いわ」
ブラボー型が転倒した事で怯んだのか、アルファ型は混乱しながら脚を止めた。そんな怪物の前に巨大な盾“ヴェルチュシルト”とリボルバー内蔵式ロングブレイドの“ピストーラスパーダ”を構えたシュトルツ。その横に左手にピストーラスパーダ、それのライフル内蔵バージョンの“ゲリョスクリンゲ”を右手に構えるソーズマン。そんな2人の後ろに“未来を見た旧人類の残物”の1つである魔法の杖“メイジワンド”を両手に構えるシュネーが居た。
「私を倒さずして、此処から先には行けませんよ!」
ゴブリンタイプはその言葉を理解したのか、苛立ちを表情に出したのち8匹のうち2匹がシュトルツに飛び掛かった。が、
「・・・」
スセアモが無言のまま放った1発のショットが1匹目を貫くと2匹目の頭部に入り込み、息の根を止めた。
そんな状況に追い討ちを掛けるように2匹のゴブリンタイプの頭部が粉砕され、3体のヒューマンタイプの頭部が貫かれた。
「空から?」
「あの人しか居ない」
2人の視線の先に居たのは風魔法を使って宙を舞うカサドルの姿があった。カサドルはゲリョスクリンゲからショットを撃ち放ち、ゴブリンタイプを一掃すると急降下しながらジャイアントタイプの左眼を斬り裂くと前脚を撃ち抜かれたブラボー型に斬り掛かったのち後頭部にブレイドを深く突き刺すと引き金を引き、脳を撃ち抜いた。
「荒らしてくれたわね。ただ、これでだいぶ楽にはなった」
そう言いながらシュネーはメイジワンドを構えて呪文を唱え始めた。
「ええ、これで素早く片付けられます。時間が惜しい。一気に行きましょう」
「了解」
※
ゴブリンタイプとヒューマンタイプを“ネモ・アサルト”で仕留め、ジャイアントタイプを“フューリー”で仕留めるワイミー。
戦闘装甲車両や兵員輸送車から下車した防衛隊の隊員が負傷者の手当てや迎撃に回る中、戦闘装甲車両に搭載されたレール砲がジャイアントタイプの頭部を粉砕した。
「(あれが来たって事は、避難はほぼ完了したって事か)」
そう思いながらパターン化した防衛体制を前に「あれの到着がもう少し早けりゃ、負傷者も少なくて済んだだろうに」と呟いたワイミーは再びネモ・アサルトを手に取るとヒューマンタイプを2体仕留めた。
だが、土嚢の裏から撃っていたワイミーは地面を匍匐で進み、土嚢の影に隠れたゴブリンタイプに気が付かなかった。
「!」
気が付いた頃には、ワイミーが構えるネモ・アサルトの銃身を掴まれていた。
「小賢しい奴め!」
そう言いながらワイミーはアサルトライフルに安全装置を掛けながら左手で鞘からナイフを抜くとゴブリンタイプの後頭部に突き刺した。
「ッ!」
だがそれを狙ったかの様に、別のゴブリンタイプがワイミーに飛び掛かった。両手が塞がったワイミーは、対処が遅れた。
「(ブラックバーンがゴブリンタイプを1番の脅威と考えるのも分かるなぁ)」
そう思いながらナイフを引き抜いた瞬間、1発のショットがゴブリンタイプの頭部を貫き、粉砕した。
「!」
真っ暗闇から放たれるショット。ワイミーにはそれが何なのかすぐに分かった。
「まさか、戻って来たのか⁉︎」
※
「帰還を優先した甲斐があったわね」
そう言ったのちキョウカは超軽量機関銃の“デュコン”を構えた。
全員がそれぞれの武器を構える中、ルーカスは無言のままフューリーの引き金を引き、ゴブリンタイプの頭部にショットを喰らわせた。
「・・・」
「(有効射程900メートルのライフルで1600メートル先のゴブリンの頭を....しかも乗馬中の不安定な体勢で撃ち抜くなんて)」
そう思いながらデュースはエスピリトゥピトを強く握った。エスピリトゥピト以外に武器と呼べる物を持ってない且つ呼び出せる精霊の都合上、戦闘力が無に等しい彼女には、全てが脅威だった。