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Chapter 2 第一章「有り続けるべきカタチ」

どうも、村渕和公です。

今作から“Chapter 2”に入ります。

Chapter 2から登場人物が更に増えますが、登場人物一覧がなくてもわかる様に描写していますのでご安心ください。(つもりです)

それでは、本編の方をどうぞ

椅子から立ち上がり窓から外を見た調査班総班長のリードは咥えた煙草に火を付けると、ゆっくりと吸い込み、ゆっくりと煙を吐いた。

「....」

「リード総班長」

「?、んぁノエルか」

部屋の扉をゆっくりと閉めたリードは煙草を咥えたまま秘書代理のノエルからデータパットを受け取った。

「・・・06も、活動は難しいか....」

「はい。とにかく負傷者が多くて....復帰には3〜5日程掛かる者が殆どです。それまでは、04だけでの活動になります」

「“ガイア”、か....幸いにも“ネクサス”が第二駐屯地の補給は済ませてる。....問題は、南、だな」

「はい」

リードは煙草を灰皿に置いてからノエルにデータパットを返すと椅子に座り込んだのち煙草を咥え治した。

「現場の事は知らん。04がどう動くかだ....」

「・・・」

「現場の判断で動け、としか俺からは言えん」

「・・・南もそうですが、....西も少し危ないです」

リードは声になりそうな鼻の鳴らし方をすると数秒考えたのち電話の受話器に手を伸ばした。

「確かに現場任せでも人数不足はどうにもならん。これ以上人間減るとかなり面倒だし、....仕方ねぇ。現場を動き易くしてやるか」

「?」

リードは頭にハテナを浮かべるノエルを気に留める事もなく、番号を入力した。



交易団が通る通路を護る“外征隊貿易守備班”の第一班班長の“シコルスキー”は巨大なシールド“ヴェルチュシルト”片手にフェデラシオンに向かう荷馬車の大軍を背を立っていた。

「・・・ッ!」

交易団の第一弾が通過すると同時に何かを感じ取ったかの様に双眼鏡を覗き込んだシコルスキーは舌打ちをしたのち後ろを振り返った。

「交易団の第二陣を第三ルートへ誘導しろ!」

「班長、まさか!」

「来たぞ」

守備班員達はすぐさま分かれた。1人は交易団第二陣を第三ルートへ誘導する為に走り、残った2人はシコルスキーの左右に並ぶと迎撃態勢を整えた。

「・・・来るぞ」


「シコルスキーの班が?」

「ええ」

援護班に囲まれながらゲートから出た第04調査班班長のシュトルツはハーフエルフのシュネーから貿易守備班のシコルスキーらが怪物の群れと交戦を開始したと言う報告を受けると表現を僅かに鋭くするとすぐさま後ろを振り返った。

「ガイア各員、任務を変更。駐屯地への輸送任務の前に貿易守備班の第一班の援護に向かう!。援護班はスエルテと此処に残り、我々が戻るまで此処で荷馬車を護れ!」

「承知!」

班長補佐のスエルテは荷馬車を停めたのち6人の班員を見送ると荷馬車から降り、援護班班長のもとへ駆け寄った。

「何か?」

「馬を貸して。私も行く」

「ですが、それでは」

「荷馬車をお願い」

「・・・アンタ、やっぱり班長補佐向かえねえよ」

そう言いながら援護班班長は馬から降りると渋々と荷馬車のほうに歩いた。

女性の班長補佐の中では唯一タクティカルメイド服を身に纏わず、近接攻撃型の班員が着る戦闘服を身に纏うスエルテは側から見たら確かに班長補佐には向かない好戦的な性格に見えた。

だがそれは"未来を見た旧人類の残物"の1つである "ターリスマンシュヴェーアド”と呼ばれる魔剣を操れる事と、人一倍仲間を失う事を恐れている性格のせいであり彼女自身は、戦いを望まない性格をしており、扱える魔法種の都合上、ポジションは班長補佐が適任だ。



「隊列を崩すなぁ!」

そう叫びながら防御魔法で強化されたヴェルチュシルトを使ってアルファ型のジャイアントタイプにシールドバッシュを喰らわせたシコルスキー。

怪物はアルファ型のヒューマンタイプを中心としたそれなりの大軍。巡回中の守備班が早めに到着したとは言え、戦況は劣勢だった。

「負傷者は後退しろ!」

「脚をやられた奴を下がらせる。援護頼む!」

「けん制でも構わん!負傷しても撃てるなら撃ち続けろ!」

負傷した者を下がらせながら隊列を死守する守備班員達。決して彼らも素人では無いが対ゴブリンタイプ装備の彼らではヒューマンタイプは兎も角、ジャイアントタイプには対応しきれなかった。

「意外とジャイアントタイプが多いな」

「ゴブリンタイプも居ない。いつもの奴ららしくない」

「どんな奴が来ようが、此処を通して良い理由にはならん。踏み止まれ」

「イエッサー!」

シコルスキーは班員達を震え立たせながらヒューマンタイプの顔面をヴェルチュシルトの下部で貫いた。

だがシコルスキーとて状況が分かってない訳ではない。いつでも“疲れた様な”・“怒った様な”人相を浮かべているシコルスキーだがその表情は険しく鋭い物だった。

「新たな怪物!。ジャイアント2、ヒューマン7!」

「まだジャイアントが来るのか⁉︎」

「(流石に厳しいか)」

より一層険しい表情を浮かべるシコルスキー。

コンパクトアサルトライフルの“ネモ・コマンドー”、カービンアサルトライフルの“ネモ・クルツ”がショットをばら撒く中、シコルスキーは一瞬考えると表情を鋭くした。

「新手のジャイアントを片付ける!。ヒューマンは任せる」

「了解。援護します」

シコルスキーはヴェルチュシルトを構え直すと新手の怪物の群れに突入した。

次の瞬間、

4体のヒューマンタイプが頭上から放たれたショットの頭を貫かれるとジャイアントタイプ 1体の頭部が跳ね飛ばされた。

「増援?来たのか?」


「ヒューマンタイプの銃器、スゲェ〜弾幕だ」

「!。ヒューマンタイプが構えてるの、対戦車ロケットだ!」

「グレネードランチャーも居るぞ!」

「いつの間にあんな装備を⁉︎」

「た、退避!」

「ダメだ!間に合わない!」

アルファ型のヒューマンタイプは1箇所に固まった守備班員を一掃する様に対戦車ロケットとグレネードランチャーを放った。

「衝撃に備えろぉー!」

「来るぅぞぉぉ!」

退避が間に合わず、その場に伏せる守備班員達。頭を強く抑え、両眼を強く瞑り、衝撃に備えた。

が、いつまで経っても来る筈の衝撃波が来ない事に疑問を抱いた班員の1人が恐る恐る顔を挙げると、自分らを取り囲む様に魔法の防護壁が貼られていた。

「お、おい」

「な、なんだ?これ....」

「怪我は無い?」

「!」

守備班員達は恐る恐る声のする方を向くとそこには"未来を見た旧人類の残物”の1つである魔杖"メイジワンド”を片手に宙を浮遊するシュネーの姿があった。

「?。....ハーフエルフ⁉︎」

「調査班か?。何故此処に?」

「交易守備班が大軍と交戦中との知らせを受けて救援に来たの。怪我は?」

「俺達は大丈夫だ」

「ただ、負傷者がそれなりに居る。其奴らを手当てしてる間、可能なら援護を頼めるか?」

「ええ。任せて」

「私も手伝います」

守備班員達の側まで馬でやって来たシラチューダは馬から降りて負傷者を担ぐと他の守備班員達と一緒に後ろに下がった。


「頂きだ!」

そう言いながらヒューマンタイプを左右真っ二つに斬り裂いたカサドルは風魔法を解くと、地面に着地した。

「04調査班か?。助かった」

「礼には及ばん」

シコルスキーは無言で頷いて返すと剣と剣がぶつかり合う方を向いた。そこには"未来を見た旧人類の残物"の1つである魔剣 "ターリスマンシュヴェーアド”を慣れた手捌きで操りながらヒューマンタイプを次々と斬り裂くスエルテが居た。

「やっぱり待機命令無視ったか」

「彼女、班長補佐だろ?。その割には好戦的だな」

「俺の班に戦いを好む者は居ないよ。それに、」

「?」

「現場には現場の、あるべき姿がある」

「成る程。同じ外征隊傘下でも、少し考え方が違うと言う事か」


「ッ」

ヒューマンタイプが振り翳した短剣を弾き返すとそのまま相手を上下真っ二つに斬り裂いた。

「まだ居る。やはり狙いは交易品」

「今回は数が多いからな」

スエルテは後ろにいるソーズマンの方を向いた。ソーズマンはいつも通りの表情でスエルテの側に歩み寄ると目を合わせた。

「来ると思ったよ」

「そう....ですか?」

「こんな醜いもの、とっとと終わらせるぞ」

「ぁっ!、はい」

ソーズマンは“ピストーラスパーダ”と“ゲリョスクリンゲ”。スエルテは“タリスマンシュヴェーアト”を構え直すと互いの背中を護りながら戦った。


「す、すまん....」

「気にしないでください。それよりも、重症化しなくてよかった」

「“天才”と呼ばれた女戦士に手当てして貰えるとは....」

「治癒魔法が無いから応急処置しか出来ないけどね....」

シラチューダとスセアモは戦闘には参加せず負傷した守備班員の処置に専念していた。幸いにも重傷者は居らずシラチューダの治癒魔法とスセアモの処置で事足りた。

だがそんな事を易々と見逃す程、怪物は甘くは無い。

「!、回り込んで来る。シラチューダ、貴方から見て左よ」

「!」

「ヒューマンタイプ多数に、ジャイアント 1か....」

シラチューダは治癒を終わらせるとすぐさまヴィルトゥを構えた。

「治癒が優先だ!」

「!」

馬を走らせた状態でピストーラスパーダからショットを放ち、ヒューマンタイプの頭を撃ち抜きながらそう叫んだシュトルツ。

アルファ型の方を向いた状態で馬を止め、左手に構えたヴェルチュシルトと右手に構えたピストーラスパーダをぶつけ合わせたシュトルツは両者を構え直すと鋭く、生真面目な表情を浮かべた。

「私を倒さずして、この後ろには通れぬと思いなさい!」



「04が?」

「はい」

灰皿に煙草を押し当てて火を消しながらノエルの報告を聞いたリードは吸い殻を捨てると「ふむ」と唸る様に呟いた。

「まっ、良いんじゃねぇか?」

「え?」

「現場がどう動こうと、俺は知らん。ただ、最低限のルールを護り、任務を遂行すればそれで良い」

そう言うとリードは椅子から立ち上がると机に両手を付きながらノエルと目を合わせた。

「奴らが現場をどう乗り切るか。どう困難を乗り越えるか。後ろから出来る支援はするが、表で、現場でどう動くかは奴らに任せる。“壁を乗り越えられない奴ら”・“指示待ち人間”・“自分で考えらなれ無い奴ら”・“責任転嫁する奴”、そう言う奴らは調査班には要らん」

「・・・」

「色々試して、色々やって失敗すれば良い。その為の俺でもある」

そう言うとリードはゆっくりと部屋の扉に向かって歩き始めた。ノエルはリードの後を追う様に身体を動かすと僅かに笑みを浮かべた。

「調査班や外征隊の上官は、貴方の様な“現場第一の放任主義者”が多い様な気がします」

それを聞いたリードはドアノブから手を離すとゆっくりとノエルの方を向いた。

「外征隊自体は知らん。だが調査班は様々な謎を解き明かす為にも、“そう有り続ける必要”がある。だからかもしれん、な」

そう言ったのちリードはゆっくりと扉を開けると静かに部屋を出た。



「....」

「ルークさん?。どうかしました?」

「え?」

小休憩を終え、真っ暗闇な大地を再び走り始めてからずっと考え込んでいるルークを心配したシャルロッテはルークに声をかけた。

「・・・さっきの戦闘、どうにも可笑しいな。って」

「?、可笑しい?。それはどう言う事ですか?」

シャルロッテの荷馬車に隠れて姿の見えないフレッチャからの問い掛けにルークは自分の考えを言葉にしようとした。

「・・・“ゴブリンタイプが妙に多かった”」

「?」

疑問の眼差しをルーカスに向けるデュース。その問い掛けを前にルークは表情を和らげながらルーカスの方を向いた。

「ルーカスも気が付いてたんだ」

「東と北では違うと思って居たんですが、ルークさんが引っ掛かるとしたらそこかな、と」

「うん。奴らは“襲撃”よりも“略奪”・“惨殺”を好む。だから少数の集団は襲わないんだ」

「言われてみれば確かにな。調査任務中はヒューマンタイプとブラボー型が主な敵対者になる。ゴブリンタイプが10〜20も束になって掛かって来る事は今まで無かった」

ゼルトナーが発した言葉を前にルークは再び考え込んだ。それを見たシャルロッテは柔らかな笑みを浮かべながらルークの方を見た。

「今は考えても仕方ない事より目の前の事を考えましょう」

「そう、....ん?」

「ルーカスさん?」

何かを掴んだ様な表情を浮かべたルーカスはルークと同時に何かを閃いた。が、先に行動を起こしたのはルークだった。

「キョウカ班長!。外征隊貿易守備班のシコルスキー班長に至急連絡を!」

突然の事を前にルーカスを除く全班員が戸惑った。ルークはすぐさま頭を整理するとそれを言葉にした。

「シコルスキー班長が守備するエリアには二陣に別れて大量の輸入品を載せた貿易隊が通る筈です!。今すぐシコルスキー班長に連絡して、守備を強化しないと!」

「ちょっと待って....なんで?」

動揺するキョウカをフォローする様にシャルロッテはルークに疑問をぶつけた。

「ヒューマンやジャイアントが少なかったのは、貿易路を襲う為だ!」

ルークの発言にフォローを入れる様に言葉を発するルーカス。だがそれに疑問を抱いたゼルトナーはルーカスの方を向いた。

「可笑しくねぇか?。貿易路を襲うのはゴブリンタイプが中心だ。ヒューマンやジャイアントが少なかった事となんの関係があるんだ?」

筋の通った疑問をぶつけるゼルトナー。ルーカスがそれに応えようとした瞬間、先にルークが説明を始めた。

「彼らなりに学習してるんだ。ヒューマンとジャイアントで弱らせて、ゴブリンで畳み掛けて奪う。ゴブリンは数が多い。だから貿易路を襲うのに回した戦力をゴブリンで補ったんだ」

「・・・まぁ、前者は理解出来たが、後者はどう言う意味だ?。俺達を襲う戦力を補う理由って、なんだ?」

「俺達が簡単に引き返せない様にする為です」

「捕捉ありがとう。そう言う事です」

「・・・その心配は無さそうね。既に04調査班が応援で駆け付けてるわ」

自分の動揺を落ち着かせながら伝達魔法に対応した手帳を手に取ったキョウカは04調査班から送られて来た伝達内容に目を通しながらそう言った。

「でも、一応ゴブリンの事は伝達するべきだと思います」

キョウカは「そうね」と言いながらペンを取り出すと伝達内容を手帳に書き始めた。

ルークとルーカスは目を細めながら最悪の事態にならない事を祈った。

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